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「うぅ……あれ」


 俺は気づけば丘の上にいた。

 青い空。

 緑の原っぱ。

 吹き抜けるそよ風が静かに髪を揺らしてくる。


 なんでこんなところにいるんだっけ、と一瞬考えるが、すぐに答えは見つかった。


「そうだ、転生したんだっけ俺……」


 転生というか転移というか派遣というか……まぁともかく神様の言うことを真に受けるなら、ここはおそらく異世界のはずだ。


「全然変わってないけどな」


 俺は自分の体を見れる範囲で見下ろしてみる。

 服装こそ旅人風の服を身につけているが、体自体は地球の俺と同じようだった。

 ん? なんか服に刺繍で文字が書かれている。えーと、


「『異世界じゃ、頑張れ』……なんだこれ」


 服の胸から腹の部分に掛けて馬鹿みたいにデカデカと書かれてる。

 意味わかんないわ。しかも着ている俺から見やすいようにしてるか知らないけど文字列が逆向きになってるし……何してくれてるんだよ、普通に恥ずいわ。でもこれって異世界の文字なのかな、俺が知らない言語……のハズなのに読める。神様の図らないってことなのかな、まぁいいか。


「それにしても異世界、ねぇ……いまいち実感が沸かないけど」


 太陽も一つのようだし見渡してもこれといって異世界の要素は見つからない。

 ああ、でも丘だから見渡せるけど遠くに街のような場所が見えるぞ。ひとまずあそこに行けってことなのかな。


「そうだな、まずは異世界を知ることからだ」


 俺の最終目的は魔王討伐でいいとして、それ以前にやらなくてはならないことが何個があるだろう。それらをやるにしてもまずはこの世界に慣れないと始まらない。どういった世界で、人々は何をして生きているのか。魔王に滅ぼされかけてるみたいな話だったが、どのくらい悪化しているかなど知っておくべき情報は山ほどある。それにこの世界で生活していくとなれば、当然生活基盤を確保する必要もあるわけで、そうそうゆっくりもしてられないのかもしれない。


「よし、じゃあまずはあの街を目指してみますか」


 そうして俺は最初のミッション、街へ行こうを達成するため歩みを開始した。このミッションは俺が勝手に作っただけだ、分かりやすいだろ?


 原っぱを少し歩くと森があり、中に入って程なくしたところで道を見つけた。

 とはいえ舗装などは特段されてるわけでもなく、土がめくれているだけの簡素なものではあるが。でもあるだけラッキーだろう、方向的にもこれを辿っていけばあの街に近づけそうだし。


 そして道を少し歩いていると、ふと、遠くの方から音がした。

 何かと思い見てみれば、一台の馬車が遠くからやってきていた。

 ど真ん中を歩いていたので、端に避け立ち止まる。

 馬車は馬が二頭で引いていたが、御者のような人がパシンとムチを叩くと馬はゆっくりと立ち止まった。


「おーい、お前さん何用だー!?」


 そして馬車の扉が少し開きそこから一人の男が声を張り上げた。

 明らかに俺に向けて言ってきてるな。逆にそうじゃなかったら怖い。


「あー! 歩いてまーす!」


 訳の分からない返事をしてしまった。


「なんだー!? 乗ってくかー!?」


 え、どういうこと、つまり馬車に乗せてくれるってことか? それは願ったり叶ったりだ。


「お願いしまーす!!」


 こんな訳の分からない奴を怪しくないのだろうか。まぁ言うても若い男一人だしそう警戒心もないのかな。


「街まで歩いてたのか?」


 馬車に近づくと、その男が話しかけてきた。四十代から五十代くらいの見た目で、もみあげとヒゲがキレイに繋がっている。ガッチリとした体型だがどことなく温和そうというか、安心感が抱けるような人物だ。


「はい、そのとおりです。歩きでいけるかなと思いまして」


「まぁ道のついでだ、乗っていくといい。一人くらい増えたところで変わらんからな」


「ありがとうございます。助かります」


 そして馬車に乗せてくれた。

 いやー、助かるな。まぁ歩きでも全然辿り着けるような距離ではあったが、こっちの方が圧倒的に早いだろうし、何より疲れない。ていうか言語も異世界語っぽいけどなんでか分かるんだよな。俺の言葉も通じてるみたいだし、コミュニケーション面では問題なさそうだ。


「お邪魔しまーす……」


「おお、可愛いガキじゃねぇか」


 恐る恐る馬車に入ると、そこには最初の男以外にも二人の人物がいた。

 一人は男と同い年くらいの痩せ型の男で、もう一人は十代半ばくらいの少女だ。


「まぁ座れや、といっても街はすぐそこだがな」


 痩せ型の男はぽんぽんと自分の隣の座席を叩く。

 そこに座れということか。


「おいおいヤンゼ、乗るとは言ったがお前に構うとは言ってなかったぞ」


「なんだよ、いいじゃねぇか相席ってやつだよ」


 俺の後ろから入ってきた最初の男と痩せ型の男がやり取りしている。


「変にかまう必要はねぇからな。こいつは常に誰かと話してなきゃ死んでしまう病気なんだ」


「なんだぁ、人を変人みたいによ」


「ははは……」


 笑うしかなかった。

 あぁ、なんか凄くアットホームな感じだな……本来ならこういうノリはあんまり得意な方じゃないんだけど、なんかこの人達はそこまで嫌な感じしないような。


「坊主、名前は? どこから来たんだ?」


「ああ、えーっと……」


 まぁ仕方ないので話にのることにした。

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