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 俺は神と名乗る男と対峙していた。


「魔王を倒すことは分かりましたが、なぜ僕なんでしょう?」


「それはひとえにお主が地球上で一番適正をもつ人物だったからじゃよ。お主ならより理想的な形で任務を遂行してくれると睨んでのことじゃ」


「適正、ですか?」


「そうじゃ、お主には素晴らしいレベルの魔力量が宿っておる。それを使いこなせさえすれば、敵はいないといっても過言ではないほどのな」


「そう言われましても……」


 俺はごく普通の一般人だし、日常の中で特段変わったことなどもない。魔力などという単語も初耳だ。


「まぁ自覚はなくとも無理はないな。地球は魔法を扱える機構になっておらんからの。対する魔王のおる異世界は魔法発動の元となる元素が至るところに霧散しておる。よって、それら元素をうまくかき集めることで、体内の魔力を結びつけて魔法と呼ばれる超常現象を起こすことが可能になっておるんじゃが、まぁ細かいことは気にせんでいい。とにかくお主の真価は異世界で遺憾なく発揮されるであろう」


 そう言われてもまるでピンとこないんだよな……。魔法があって魔王がいるなんて本当におとぎ話のようなファンタジー世界のようだけど、そんな中に溶け込める気がしない……


「それに加えてお主の性格面も任務において最適という判定が出ておる。多大な力があってもそれを持て余す奴などざらにおるからの、お主であれば常識的に制御できると期待しておる」


「勝手に期待されましても……ホントに武術の心得すらないただの一般人なんですが」


「心配いらん、お主であればなんとかするじゃろ、そういう結果もでておる」


「なんだその抽象的な判定マシーンは」


「どうじゃ、これらを踏まえて引き受けては貰えんか? なにせ最強の力を持っておるのじゃ、暮らしにそう苦労はせんじゃろうし、魔王討伐以外のことについてはそうとやかく云わんつもりじゃ。魔王討伐後は好きなように生きて良い」


「魔王討伐したら元の世界に帰れるというわけではないんですか?」


「勿論可能じゃよ。なんなら魔王討伐する前でも地球に戻ることは可能じゃ。ただ一つ注意しておかねばならんことは地球に戻れば異世界での記憶、並びに天界での記憶の一切は消失する。つまりお主は何事もなかったかのように再び地球での暮らしを再開するというわけじゃ」


「え、そうなんですか。だとしたら異世界に行く際も地球の記憶は消されるということですか?」


「いや、それは問題ない。片道であるなら記憶の引き継ぎは許可される。しかし往復する場合、別の世界の知識を元の世界に持ち帰ることは神の掟で禁止されておるのじゃ。世界ごとの特色が混同化されるのを防ぐためなど理由はあるのだが……まぁともかくお主の過去は異世界においては有効じゃから心配いらん」


「異世界で死んだ場合は?」


「その際はすぐさま地球に帰還するようになっておる。勿論異世界での記憶は排除された上でな」


 なるほどな……本当に一時的な観光というか夢みたいな感じになるわけか。

 でもそれだとこの任務を引く受けることに対するデメリットってないことになるよな? 異世界で活躍しようが死亡しようがどの道地球での俺の人生は継続される。なんの支障もでないわけだ。


「そういうわけじゃからもし途中でリタイアすると決めた場合は自害でもして貰えればそれで構わん。まぁじゃが、できることなら、やはり任務の方を遂行してくれるとありがたいというのがあるのじゃがな……こればっかりはお主に頷いてもらうしか他にないからの……」


 神様は困り顔だった。俺の反応がやや渋いように感じたのだろうか、そうでもないと思うけど。


「そうですね、分かりました。せっかくの機会ですので、その任務、引き受させて貰ってもいいですか?」


「おお、ホントか。ぜひ頼む、お主の力が必要なんじゃ」


 神様は嬉しそうにした後、ホッとしたようにため息を付いていた。


「ふぅ、良かった……断られたらかなり苦労したじゃろうからな」


「そうなんですか? 僕以外に適任者もいるんじゃないですか?」


 なにせこんな俺がそうだというぐらいだ、どこにでも力の持ち主など眠っていそうな感覚がある。


「勿論その世界における多大な適正をもった者は何人かおる……じゃがな、申請が通るかはまた別問題でな……」


 神様は遠い目をして語りだした。


「何事も事を起こそうとすれば上の承認というものが必要になってくるでの、例えば今回の件だってそうじゃ。実はお主より前にすでにその世界に何人か人材を派遣しておっての。そいつらが悉く失敗という形に終わりおったから要求水準が吊り上がっておるというわけで……」


「え、地球人をってことですか?」


「そうじゃ、すでに三人ほど投入済みじゃ。しかし全員が任務未達成で終わっておる。一人は魔族の捕虜にされ、一人は旅の行程でふつうに死んだ。最後の奴に至っては魔王討伐を放棄して快楽にふけっておる。本当に干渉さえできれば鉄槌を下してやりたいくらいじゃ」


 そうだったんだ……それで性格の適正とかいう話にもなってたのかな。


「まぁじゃがお主は話しておる感じもこれまでの奴に比べしっかりしておるし、期待もしておる。本当にこれで成功させたい、頼んだぞ」


「分かりました。何ができるかはまだ分かりませんが、いい結果を目指してやれるだけやってみたいと思います」


 ということで俺はなんやかんやあり異世界に転生することとなった。

 まぁ最初は気が進まなかったが、ちょっとした人生の寄り道って感じだし、乗ってみるのも悪くないだろう。こんな貴重な経験そうはないだろうしな。神様も困ってそうだし助けるって意味も込めていっちょ頑張ってみますか。まぁ無理はしない程度でね。



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