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「あぁ、疲れた」


 その日も俺はトボトボと帰宅した。

 通っている高校から帰ってきたのだ。

 なぜいかないといけないのか、それは俺ですら分からない。

 恐らく親が悲しくからだろうとは思っている。

 十七歳にもなってニート生活というのは、常識に照らし合わせても希望がないというのは少し考えれば分かることでもある。でもさ、義務のために生きてるんなら何の為に生きてるのか、ホントに分からないじゃないか。


「ただいまんもすー」


 俺は自宅のアパートに帰ると、適当な挨拶だけして早速俺の部屋に直行。

 カバンだけ投げ捨てベッドに沈み込む。

 あー、この瞬間が一番だよな。極楽ってやつ……。


 俺は両親はいない。

 厳密にいえばいるんだろうが、俺が小さい時に俺を親戚の家に預けどこかに消えてしまった。だから俺は親戚のおじちゃんの家で育てられてきたし、おじちゃんが親代わりだ。ここまで育ててきてくれてホントに感謝してる。まぁ俺のこの性格だったら、どんな育てられ方されても結局はこんなアニメ・マンガ大好き人間に落ち着いたとは思うから別になんにも気にしちゃいないが。


「あーあ、久しぶりに親孝行するかな」


 いつもなら流れのままにゲームか読書に入るところだが、たまには勉強でもしてやるかと意気込む。一応もう高校二年の冬で、大学受験も迫ってることだしな。どこいくとかはまだ決まってないけど、そんなにガッカリされるような学校を志望するわけにもいかないし。出た、この思考だよ。ほんと、何のために勉強するのかね……まぁいいけど。いつか俺の意志で人生を歩む瞬間が訪れたりしないものか。


「ん?」


 そうして珍しく机に付いて参考書とノートを広げている時だった。

 突如として机が発光し始めた。

 え、何? ちょっと待って何だこれ、机が光って……いや、光ってるのは俺の腕? いや……全身?


 そこまで考えたところで俺の意識は朦朧としていった。









「うむ、すまんのう」


 そんな言葉とともに俺は目を覚ました。

 しわがれた年寄りの声。

 なんだと思い周囲を見てみてれば、茶の間のような空間だった。

 いかにも年寄りが気に入りそうな落ち着いた雰囲気の畳の部屋。だが明らかに違和感なのは、少し大きめの窓の外に見える景色が明らかに白一色だということ。雪景色などというわけでもなく、永遠に白い空間が広がっているのだと何故か認識できる。

 いわゆる異様な場所に俺はいた。


「こうしてお主を呼び出すつもりは毛頭なかったんじゃがの。申し訳ない」


 そう言って頭を下げるのは目の前にいるご老人。

 白い貫頭衣に、天使の輪っかのついた男だ。凄く優しそうな顔をしているので悪い人ではなさそうだということは分かった。

 異様な空間にこの老人。一体どんな組み合わせ? てかここはマジでなんなんだ。


「あ、いえ……そのここは一体どこなんでしょう? それにあなたは」


「うむ、当然の疑問じゃろうて。勿論きちんと説明させてもらうぞ」


 老人は俺の方にまっすぐ向き直ってきた。

 俺たちは座って向かい合ってる状態だ。


「まずここはどこかというと天界という神の住まう場所じゃ。そして儂は神じゃ。まぁ神といってもピンキリじゃからそう正確な自己紹介というわけでもないのかもしれんが……まぁ中くらいの神と思うて貰えばいい」


「はぁ」


 天界に神……なんだかすごいスケールの話が始まったな。


「今回は地球におるお主にとあるミッションを頼みたくてな、こうして魂を呼び出させて貰ったのじゃ。最初に言っておくがお主には拒否権もあるし、もし嫌ということであればそのままここでの記憶だけ消して地球の元の時間に返してやる。そこは安心して聞いてくれ」


「はい」


「して、いきなり本題に入るのじゃが、そのミッションというのはじゃな。とある世界の邪悪な存在を、打ちのめして欲しいという旨のものになるのじゃが」


「邪悪な存在……?」


「ふむ、その世界は地球とは違って剣と魔法やらが支配するまぁ戦闘力がものをいうような文明レベルのやや低い世界なのじゃがな、そこにおいて魔王と呼ばれる凶悪な個体が誕生しおった。当然その世界にも人間がいて、この魔王という存在に現在進行系で苦しめられておる。このままでは時期に人間は滅んでしまうであろう。そうなる前に、お主に人々を苦しみから救って貰いたいのじゃ」


 神となのる男は、真剣な表情で説明してくれる。


「どうかの、お主にしかできん仕事なんじゃが、引き受けては貰えんかの」


「なる、ほど? うーん、いろいろ聞きたいことはあるんですが……人間が滅んではダメなんですか?」


「ん? どういうことじゃ」


「魔王がいてその世界が不味い状況なのだということは分かりましたが、魔王もその世界で生まれ落ちた生命体なんですよね? だとしたらその存在がどのような悲劇を生み出そうとも、それはその世界における正しい歴史の一つであって、外部の存在がとやかくいう問題でもないんじゃないかなーと思いまして」


「ふむ……まぁ言いたいことは分かるぞい。確かに現地に住む者たちの生き様は尊重するべきなのかもしれん。しかし世界にはテコ入れという作業がある。世界の秩序が大きく傾こうとしている時に、その世界の均衡を保つというのは紛れもない神の役目なのじゃ。何事にもバランスというものがある。詳しく話出すと長くなるんじゃが、幸運と不運の比率を重要視しておっての。幸運だけではバランスの良い世界とは言えない。多少の不運があってこそ、幸運をより感じることができ、生物が充実した時を送ることができる。その調整はどこの世界でも行われておることで、お主のおる地球でも儂ではない別の神がその辺うまく調整しておる。まぁ納得いかん部分もあるかもしれんが、世界とは神が創り出し管理しておるわけで得てしてそういうものなのじゃよ」


「なるほど。おおかた納得できました、ありがとうございます」

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