勇者と賢者と臆病者
ある日、王さまは3人の若者に言いました。
「若者よ。赤い角を持った魔王を討ち取ってくるのじゃ」
さらさらとした金色の髪を持つ若者は「わかりました。この私が見事魔王を討ち取って見せましょう」そう言いました。
「うむ、では行ってくるのじゃ」
王様がそう言うと、金色の髪を持つ若者は、自信満々に旅に出ました。
腰まで届くほどの黒色の髪を持つ若者は「わかりました。ではこの国で1番の装備をください」そう言いました。
「よかろう、国1番の装備をやろう」
王様がそう言うと、黒色の髪を持つ若者は、考え事をしながら旅に出ました。
ぼさぼさした茶色の髪を持つ若者は「わかりました。ならば武器と防具を買うお金をください」そう言いました。
「そう言って持って逃げるのではないだろうな?」
王様がそう言うと、茶色の髪を持つ若者は「鍬と皮の服が買えるほどでいいのです」そう言いました。
「わかった。では鍬と皮の服をお前にやろう」
王様がそう言うと、茶色の髪を持つ若者は、用意された物を持って、旅に出ました。
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王様が3人の若者に命令してから1ヶ月たった頃。
金色の髪を持つ若者は、自信ありげにまっすぐと魔王が居る城を目指し、魔王城の門番に殺されました。
その知らせを受けた王様は「おお、勇者よ。装備もつけずになぜ戦いに挑んだのだ」そう言って、金色の髪を持つ勇者の死を悲しみました。
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王様が3人の若者に命令してから6ヶ月たった頃。
黒色の髪を持つ若者は、考えがまとまった様子で魔王が居る城に付くと、魔王城の裏手から、様々な装備を使って登り始め、途中で疲れてしまい、落ちて死んでしまいました。
その知らせを受けた王様は「おお、賢者よ。自らを鍛えずになぜ魔王の城を登ったのだ」そう言って、黒色の髪を持つ賢者の死を嘆きました。
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王様が3人の若者に命令してから3年たった頃。
茶色の髪を持つ若者は、鍛え抜かれた肉体に、輝く装備をつけて魔王城にたどり着くと「魔王よ! まずは話し合いをしよう!」そう言いました。
その知らせを受けた王様は「おお、あの臆病者め。なぜそのような事を言ったのだ」そう言って、茶色の髪を持つ臆病者を殺す事にしました。
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魔王と手を組んだ臆病者が、圧政を強いられた民を救うため、とある国の簒奪を成功させてから5年たった頃。
茶色の角を持つ子供は「おとうさま、おかあさま」そう言って、茶色の髪を持つ父と、赤い角を持つ母に笑いかけましたとさ。
おわり