生死問わず
エピソード1も後半へ。
少し時間がかかりましたが、切りの良い所まで書いたら文字数がいつもの倍でした。
「なるほど・・・そのような推論が立てられたのですね」
それまでミシェル達によって導かれた内容に、バックスは大きく頷く。
「そこまではいいのですが、そこから先が難航しています。公国も含めて、どういう対応をするべきか、今ある情報だけでは決め手に欠けている状況です。当時の事を思い出すのはつらいかもしれませんが、何でもいいので、気になった事があれば教えてくれませんか?」
ミシェルが自身で考える段階はここまで。
ここから先は、他者の知識も併せて考えなければ進めない。機密保持も大事だが、目的を見誤ってはならない。
今、ミシェル達が最も求めているのは王国を巻き込んだ害意の根本を祓う事。優先順位を見誤って、負けられない戦いに負けたら本末転倒である。
「そういえば・・・私のいた孤児院から契約魔法で連れていかれたのは、彼女を含めて3人でした。その時に迎えに来たのは、例の商会から来たと名乗る2人の男性でした。
佇まいが商人らしくなくて、最初は護衛の者だと思っていた位です。ミシェル様の推論で考えれば、それは聖国の手の者だったのでしょう。その時に気になったのは、彼等と孤児院長との会話の中で出た言葉です。『これで神は生まれ変わる』・・・と」
「神は生まれ変わる?」
「はい。その後、神降ろしの儀が行われ彼女が犠牲になったと知った時、私は赤子が聖人に生まれ変わったことを指すのだと思っていました。ですが、ミシェル様の話を聞いて今は違和感を感じています。生まれたばかりの赤子を儀式を用いて聖人とするのは『生まれ変わり』なのか?と」
バックスの疑問はもっともだ。
赤子を聖人と変えるのは変化もしくは改変ではあるが、生まれ変わり、『輪廻』ではない。生まれる前の妊婦に儀式を施して聖人を産ませる。と、いうなら分からなくもない。
しかし、既に生まれた子を聖人に変えるのならば、『神によって生まれ変わる』と言うのが正しい。『神は』ではおかしい。
単なる言葉のあや、と言ってしまえばそれまでだ。
ただ、聖国の人間が神に対する発言を間違えるとは思えない。
神降ろしの儀に絡む者であれば、相応に高い地位に着いていたと考えていいだろう。
神に対しての発言は、たった1つの言い間違いですら学びを怠った罪。
『怠惰』として断罪される可能性がある。ならば、尚更言い間違いなどあり得ない。
宗主を筆頭に、聖国の人間が神に対する信心は、常人の及ばぬ枷を己に課して生きることで得た、かけがえのない対価だ。
それはまるで、自らの生活に契約魔法で制限をかける様な・・・。
「すみません。他に思い出せそうなことはありません。先程言った通り、私は生きるのに精一杯でしたので」
バックスは申し訳なさそうに頭を下げた。
「いや、十分だ。呼んだのは俺達の要望でもあったし、今の話を聞いて俺の記憶の何かに引っかかった。すまん、ミシェル。俺は今から記憶の糸を探る」
ダレスは目を伏せ、思考の海へ潜った。
「閣下が思案している間に話を止めているのは、時間がももったいないですね。では僕は他に話が聞けそうな人でも呼びますか・・・」
ミシェルは立ち上がって部屋の結界を解く。
「ミシェル。まさか、また僕と飛竜を運び屋にするつもりか?」
アベルが眉を上げてミシェルを睨む。
「いいえ。すぐ連れてきますよ。まだ起きていらっしゃるでしょうし」
「え?ちょっと、連れてくるって・・・ミシェル君」
「アルベルト事件当時。バックスが14歳の頃に大人であり、大陸を駆け巡る行動力もあり、各国に怪しまれずに出入りができる職に就いていた者。そして・・・僕に嘘を言っていた人です」
ミシェルはとても悪い顔をしていた。
「また人が増えとるな。バックスと、お主は誰じゃ?」
ミシェルに連れられ、貴賓室に入るなり渋い顔でアベルに声をかけたのはアレクセイであった。
「悪いが、答えは貴方の話を聞いてからだ」
アベルの返事は素っ気ない。
「アレク。まずは座りましょう。高位の方を見下ろすものではないわ」
随伴のミランダが席を勧めた。
「そうか・・・師・・・ならば・・・」
「おじい様がアルベルト事件について知っている全て、洗いざらいお話しください。ねっ」
ミシェルはより一層、悪い顔になっている。
「なぜワシに?」
「バックスから事件の話を聞いて分かったのですが、以前におじい様から聞いた話には齟齬がありました」
「齟齬じゃと?」
「ハイ。おじい様は婿入りと同時に冒険者を引退されたと仰っていました。ところが、バックスの話では婿入り後も最低2年は冒険者として活動していたと」
「・・・・・」
「さらに、僕がアルベルト事件に関わる事柄に触れそうになると、おじい様は当時のことは覚えていないと誤魔化していました。僕はその2年という活動期間の差に答えがあると思っています」
「師匠。私も気になっています。師匠は私を鍛えながら、時折各国へ出掛けていましたね。てっきりミランダ様のご依頼かと思っていましたが、今は違うと断言できます」
バックスの目に強い光が宿る。
「師よ、貴方はアルベルト事件を調べていたのではないですか?」
ミシェル。マチルダ。アベル。3人の表情に驚きはない。
ミシェルがアレクセイ達をここに呼んだ時点で、事件に何かしら関係しているのは分かっていたことだ。どこまで関係しているかは知らないが。
アレクセイは1度ミランダと視線を合わせた後、下を向いて深く息を吸う。
それから天を仰ぎ、一瞬だけ目を閉じてゆっくり息を吐き、ミシェルへ顔を向けた。
「ミシェル。事件についてどこまで知っている?」
その問いに、ミシェルはこれまでの経緯を伝えた。
「ふむ。ならば、事件の首謀者であるアルベルト・フライアラが、その後どうなったか知っておるか?」
「確か・・・儀式の後で逃亡し、公国との国境付近で従者といるところを発見され、激しく抵抗したためその場で殺されたと聞いています。違うのですか?」
ミシェルが授業で聞いた内容。図書館で調べた文献や過去の資料でもアルベルト・フライアラはそこで死んだことになっている。
「存在している資料では、アルベルトは事件後すぐに討伐されたことになっておるが、実際は2年近い期間を経てのことじゃ。事件後。各国では逃亡し行方をくらませたアルベルトに賞金をかけた」
『生死問わず』
「報酬は金貨5万枚。その望外な報酬に各国の兵士、騎士、冒険者、それどころか一般人までアルベルトの行方を捜し始めたのじゃ。ところが・・・」
「アルベルトは見つからなかったの。それから2年もの月日が経ち、バックスを後継として育て、私と結婚するのが決まった時に、王国からアレクに指名依頼が届いたわ」
「推薦者はパトリック・ブライブラン。貴女の父上ですな」
「父上が?」
「2年もの間、誰もがアルベルトを見つけられない。民衆には、既に死んで魔物に食われたという噂が流れ初め、事件が風化し始めた頃の話じゃ。
大罪人を犯したアルベルトを逃したとなれば各国の威信に傷がつく。なりふり構っていられない状況で行われたのが捜索の強化。
それまでは下位の者を中心に行われていた捜索に高位の者を投入するのが大陸国家首脳会議で決まった。王国からは飛竜騎士部隊が、帝国からは近衛騎馬隊といった風に、各国の精鋭が投入される事になったのじゃ。
さらに、国境線の警戒魔法を解放して、捜索班が自由に出入りできる環境も整えた。
市井代表としてサミットに参加していた冒険者ギルドでも、最高位のAクラス冒険者に指名依頼を出した。
それからすぐの事じゃ。パトリック殿から話が来たのは。
てっきり、泣き叫ぶ程の特訓の意趣返しかと思ったのじゃが、その逆。
ワシはBクラスじゃったが、パトリック殿はワシの力量を高く評価してくれていたようでな・・・商会設立に資金を確保しておきたい思惑も合致して依頼を受けることにしたのじゃ。
それから各国を巡ってアルベルトの足取りを探った訳じゃが・・・」
アレクセイは地図に人差し指を置き、ぐるっと大陸を一周するようになぞる。
「それでもヤツの足取りはいっこうに掴めなかったのじゃ。精鋭も含め、大陸全土の人間の目がヤツを追っていたというのにな」
「おじい様、聖国が匿っていた。ということは?」
「当然、その可能性は考慮しておったよ。じゃが、当時のフライアラ聖国は事件を起こした責任を各国から追及され、ある意味各国の支配下に置かれている状況じゃった。国民より各国の兵が溢れる、アルベルトにしてみれば最も近寄りがたい場所じゃったろう」
アレクセイは腕を組み、顎髭をいじりながら、テーブル上の地図に置かれた駒の位置を視線でなぞり、公国のあたりで止まる。
「じゃが、それから僅か半月後に公国国境付近にてアルベルト討伐。との報告があがったのじゃが・・・」
「何か不審な点でも?」
アレクセイは大きく頷く。
「まず1つ目は、アルベルトが何故その場所にいたのか?公国に向っている途中であれば、どうして公国に向っていたのか?という行動の謎。
2つ目は、2年と言う長い逃亡生活をどうやって維持していたのか?という経済的な謎。
3つ目は『神降ろしの儀』という大罪を犯した動機の謎。
ヤツが死んで、そのどれもが謎のまま。
何より、そこまで逃亡を続ける程に生に執着していたヤツが、あっけなく討伐された事にどうしても違和感がぬぐえなかったのじゃ」
ミシェルはアレクセイの話を聞きながら、これまでの推論を組み立て直していく。
その時、思考の海に潜っていたダレスがアレクセイに声をかける。
「クライフ殿。アルベルトを討った者の名は分かるか?」
「『ランドルフ・グリフィス』公国の騎士だったと記憶しております」
「そうか・・・繋がったな」
「そういう関係でしたか」
「貴方達。自分達だけで納得してないでこっちにも説明しなさいな。悪いクセよ」
「ダレスはいつも通りとして、この子供も同じ類か。それは確かに気が合うだろうよ」
ミシェルとダレスが納得の声で喋る中、マチルダもアベルも困惑・・・というより呆れている。
「ガラネア襲撃の件で、法外な賠償金を請求した帝国に共和国議会で徹底抗戦を唱えた者。それがローランド・グリフィス。という名だ」
「ガラネア襲撃の件は帝国の自作自演、というのが僕の推論の始まりでした。
理由は割愛しますが、これまでの他の推論と組み合わせて、今は共和国の計略に帝国が意図的に乗った『自作ではないが自演である』へ変更。
その意図は後でお話しますが間違い無いと思います。
そして、予定通りに共和国の議員徹底抗戦を唱え、事態の悪化に拍車をかけた」
「そうだな。ミシェルの推論を聞いて、アイツから話を聞いた時に感じた違和感が無くなった。父親が公国の騎士だったのなら確定だ」
「アイツ?・・・ああ、ダレスの従兄弟のアイツ・・・ね。まだ生きてたんだぁ」
ゆらり。マチルダの体から闘気が立ち昇る。
その様子にクライフ家の面々に緊張が走る。
「マチルダ。まだ結婚式の時の事を根に持っているのか?」
「当たり前でしょ。あの時帯剣してたら確実に斬ってたのに」
同席していたアベルの話によると、ブライブラン家の令嬢(笑)と結婚することになったダレスが唯一、親族の中で呼んだのがダレスミラ共和国の行政機関で頭角を現し始めていた彼であった。
彼を呼んだのは、国を出たダレスには王国に親族がおらず、新郎側の席が軍の人間だけでは不憫だと感じたマチルダの提案によるものであった。
同性で同世代。ドがつく程に真面目で、偏屈な性格の彼ではあったが、幼少からダレスに対しての当たりは悪くなく、家を出て、正確には家を追い出されて王国へやってきたダレスにとって、親族にはいい思い出が無かったが、彼との思い出だけは悪くなかったと聞いていたからだ。
ブライブラン家としては、共和国の行政に関わる彼を呼ぶことで何かしら情報が得られないか。という下心が全く無いわけでも無かったが・・・・実際は、マチルダと結婚してくれる稀有な人柱を憐れんだ一族が、せめて親族に祝福してもらうという当たり前の権利を行使して欲しい・・という想いもあった。
当時の事を思い出し、渋面を見せてアベルはそう語った。
式当日。共和国から来た彼はひどく狼狽していた。
ダレスが王国軍に入り、中隊長まで出世したのはその筋から聞いて知っていた。
結婚式の招待状が届き、あのダレスも結婚するんだなと、幼い頃の境遇を知っているだけに感慨深い思いが胸に溢れた。
招待状にはダレスの名前だけしか無かったのが気になったが、身内だけのささやかな式なんだろうな。ぐらいに思っていた。
当日。相手の名前にブライブランとあるのを知るまでは・・・。
同格。もしくは、家族に恵まれなかった分ちょっと格下位に思っていた従兄弟が、王国の名門に婿入り。しかも相手は見た目だけは絶世の美女。
彼の胸中はいかなるものだっただろう。
滞りなく式を終え、マチルダを紹介しようと連れ立って彼の下を訪れたダレス達に、
『結婚おめでとう。良かったなダレス。で、マチルダさん。アンタはコイツのどこに惚れたんだ?夜の方か?』
嫉妬。劣等感。焦燥感。敗北感。色んな負の感情が頭の中でかき混ぜられた末の暴言。
その場でマチルダの拳が彼の顔面にめりこんだ。
個人的な出席であったのと、暴言を彼自身認めたので国際問題にまで発展することはなかったが、マチルダと彼との間には禍根が残ることとなった。
後に冷静さを取り戻した彼は、ダレスに正式に謝罪して解決したことになっている。
まさか、今でも根に持っているとは・・・。
ダレスにしてみれば、真面目な彼が精一杯ウケを狙おうと下ネタを言ったものの下品過ぎて殴られた。傍目で見ていたアベルも、テンパった彼が妹を前に失言して殴られた。
ただそれだけの事と捉えていた。
後で分かることだが、マチルダと共に会合に同席していたヒルデは、式の最後の最後に喜びの絶頂だった気分をどん底に落とした彼を許してはいない。
この件に関して、後にダレスとアベルはマチルダとヒルデに高い授業料を払うことになるとは微塵も思っていなかった。
閑話休題
「で、共和国の議員とその父親が公国の騎士だった事がどうつながるの?」
不機嫌なマチルダに気を使いつつ、ダレスはアレクセイに尋ねた。
「その前に、クライフ殿。アルベルトの遺体の検分は誰が?」
「分かりませぬ。ただ、パトリック殿から聞いた話では、各国の代表立ち合いの下行われたと・・」
ミシェルとダレスが再び思考の海に潜る。
「バックス。孤児院に迎えに来た人間が聖国の者だったのではないか?と言っていましたよね?」
「はい」
「顔は覚えていますか?」
「何となくですが・・・」
「分かりやすい特徴とかありませんでしたか?」
バックスは何とか思い出そうと必死で記憶を探る。
そこへダレスが助け舟を出す。
「商人らしくないと言っていたな。護衛だと思うような佇まいだったと」
「ええ、おそらくは聖国の軍属だったのではないでしょうか?」
「年齢はどの位だった?」
「見た目は今のダレス閣下に近い年齢だったかと思います」
「という事は少し年上と考えた方がいいかもね。ダレスは老け顔って言われてるし」
ニシシ。と歯を見せて笑うマチルダをアベルが軽く小突く。
「アドラー殿。現役時代に聖国にも行った事があるだろう?これまでに、聖国の要職についている人物で見たことが無い奴はいるか?」
「見たことが無い・・・ですか?」
「ああ。見たことが無い奴だ」
「メイリー・フライアラ聖国宗主と『ゲイル・ハーディー総司祭』でしょうか。滅多に表に出ない方々ですから」
「アドラー殿。もう一度聞く。迎えに来た人間のどちらかの右目の下に切り傷は無かったか?」
「右目の下に傷・・・。あれは傷だったのか・・?」
「と言うと?」
「片方の男が、右目の下に2本線を引いていたのです。赤い線だったので、遠目に見れば傷に見えなくもないかなと」
「決まりだ」
ダレスは地図の聖国の位置。女王の駒の隣に僧正の駒を置いた。
「アルベルト・フライアラの指示で生贄を集めていたのは『ゲイル・ハーディー』コイツで間違いない」
「なるほど。アルベルトがトップだとしても、全てをアルベルトがしている訳が無い。というか無理です。当然、配下がいますよね。当たり前すぎて頭から抜けてました」
「アルベルトを討伐した公国のグリフィス姓の騎士が、共和国の議員と関係があるのはさっき話したよな?」
ブライブラン家兄妹はコクリと頷く。
「アドラー殿のいた孤児院に迎えに来た2人がゲイル・ハーディーとランドルフ・グリフィスだろう。アイツからローランド・グリフィスの名を聞いた時に調べさせたんだ。実家は公国にあるが、3男だったこともあって世襲制の公国では出世が見込めないと共和国に移ったそうだ」
「そんな簡単に他国出身の人間が国の重職である議員になれるの?」
「父ランドルフはアルベルト討伐の功から、公国から子爵位が与えられた貴族。ローランドは2名の従者と成人までの養育費を与えられて10歳の時に共和国に移住したそうだ。
共和国では在留5年を超えると永住権が得られ、成人には選挙権と被選挙権が与えられる。
よって、議員に立候補する者の背後関係は徹底的に調べられる。かと言えばそうでもない」
ダレスは地図の共和国の所に兵士の駒を置く。
「共和国は議会制である以上、1人だけの意見では国を動かせないからだ。
かと言って、他国の意思によって動く議員は獅子身中の虫となる可能性がある。
だから、共和国では背後関係は深く調べない代わりに行動を監視されている。当人もそれを受け入れる事で成り立っているのが共和国議会というやつだ」
「しかし、今回の件ではグリフィス議員の発言が大きく影響していますよね?」
「ああ。そこで重要なのが、共和国議会における派閥だ。
アルベルト事件で犠牲となった者達は各国から集められていた。各国の都市には教会の支部があったから容易だっただろう。
狙われたのは識字率の低い貧困層の子供達と、教会から支援を受けていた孤児院にいた少年少女だった訳だが、割合で言えば犠牲者の大半は孤児だ。
何しろ、孤児院長である神官が率先して集めていたのだからな。世話になっている者の斡旋ならば疑いもしなかっただろう。そこでだ。
先程、アドラー殿が話していただろ?事件後は孤児院は教会の支援を失ったと」
「ええ。私のいた孤児院は、幸いにも王国の主導で行政支援を受けるのが早かったので、致命的な事には陥りませんでした。しかし、他国では十分な支援が受けられず悲惨な結末を迎えた孤児院も少なくなかったと聞きます」
「そうじゃな。特に帝国東部国境付近と西部国境付近。公国南部。この辺りがひどかった。王国は勅令によって各自治体が即座に支援を始めたのが大きかったな。帝国は事件から間も無く、皇帝陛下が崩御されたのが対応の遅れに繋がってしまった」
王政を敷いている王国ではあるが、王都以外の市町村では自治権が認められている。大陸において、帝国に次ぐ国土を有する王国では全てを直轄地とはできなかった故の措置である。
帝国でも同様に地方に自治権を認めている。
両国に共通するのは、緊急事には勅令が最優先されるという、トップダウン方式の長所が活用されている点であった。
ただし、この方式はトップが有能であればメリットに、無能であればデメリットになるという相反する性質を持つ。
「支援の薄い孤児院では新たに孤児を受け入れるのは難しかっただろう。例えそれが、運良く救出された元々いた帰還者だったとしてもだ」
「そうですな・・・。支援のあった王国でも、私のいた所も含めて、暫くは新たに受け入れる孤児の数は半減していました」
「儀式で100名以上の犠牲者が出たというのは死体が灰と化した故の概算だ。おそらくは、契約魔法に使われた契約書の枚数と生存者から逆算したのだろう。資料では少なくない数の被害者が保護されたとある。
そして、救出された者にかけられていた契約魔法は、術者によって解除される予定だったが・・・。
クライフ殿。救出された者達はその後どうなった?」
「残念ながら、被害者は貧困層の者と孤児。家族に迎えられた子も多少はおりましたが、これ幸いにと、口減らしの為に受け入れを拒否した家庭や孤児院が多くございました。
特に、支援の遅れていた地域では顕著で、その後の足取りが掴めない子が多くいたと聞いております」
アレクセイが強く唇を噛む。その肩にミランダが手を置いた。
「俺は、救われなかった者全てが儀式の犠牲になったとは思っていない。そして、救出されたものの、帰る場所を失って行方をくらませた者。俺はどちらも同じ結末になったと考えている。
契約魔法は契約者と被契約者が必要だ。被契約者は子供達。では契約者は?」
「・・・・。まさか!」
ミシェルは真っ先に気が付いた。
「契約者がアルベルトであれば、奴が死んだ時点で自動解除されただろうが・・・」
「契約は解除されないまま被害者は別の目的に使われた・・・」
ミシェルがもう1つ、兵士の駒を共和国に置く。
「当時集められたのは16歳前後の少年少女。今は50代前半ですか。資金さえあれば議員立候補は容易です。全員でなくてもいい。共和国議会は前院と後院併せて120名。その半数を得れば共和国を動かせます」
「なっ!!」
ミシェルとダレスが語った内容に室内の全員が驚きの声を上げる。
グリフィス議員が議会で発した馬鹿げた意見がまかり通ったのには理由があった訳だ。
「聖国は、アルベルトは始めから共和国を傀儡とする計画を練っていた。資金源は、契約書を偽造した今は亡き商会でしょう。その商会にしてみれば、彼等に資金を渡した時点で御役御免ですからね」
「そういう事だ。クライフ殿、貴方は先程言っていたな。あれほど生に執着していたアルベルトがあっけなく討伐去れた事に違和感があると」
話の流れから、その場の誰もが脳裏に浮かんだ仮定。
同時に、その場の誰もが信じがたい仮定。
「アルベルト・フライアラは生きている」
ダレスは忌々しく吐き捨てた。
別作品も進めたい。でも時間がない。
FF14やりたい。ウマ娘もやりたい。アニメ観たい。
積んでる小説読みたい。積んでる漫画読みたい。
そして、もう少し痩せたい。
女子かっ!




