表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おにぎり、ぎゅっぎゅっ。

作者: 猫じゃらし

 

 蓋を開ければふんわり湯気が立つ。


 中にはまっしろ、熱々のごはん。


 少し冷まして、塩のついた手に取る。


 具材を入れて、ぎゅっぎゅっ。


 海苔を巻いて、できあがり。



 いちばん早起きのママは、台所に立って朝ごはんを作ります。


 今日は、みんなが大好きなおにぎりです。


 中身はいろいろ、鮭、こんぶ、梅干しも。


 海苔を巻いて、パパの大きなおにぎりが完成です。



 とたとたとた。小さな足音です。


「きゃあー!」と喜んで、小さな手で指を差しました。


「おはよう」のあいさつもそこそこに、おにぎりに夢中な(ゆい)ちゃんです。


「おにに! おにに!」


 1才の結ちゃんは、まだ上手に「おにぎり」と言えません。


 でも、誰よりもおにぎりが大好きです。



「小さなおにぎりも作るから、待っててね」


 ママは結ちゃんに言いました。


 結ちゃんはパパの大きなおにぎりをずっと指差しています。


 きらきらとした瞳は、おにぎりに夢中です。


「おにに、たべたい!」


 背伸びをして、小さな手がパパのおにぎりに。


 ぎゅっとつかんで、驚くママから急いで逃げました。


「それは、パパのだよ!」


 ママが言うけど、お構いなしです。


 結ちゃんは自分のイスにお行儀よく座って、ぱくり。


 大きなおにぎりにかぶりつきました。


「おにに、おいしいねー」


 小さなお口いっぱいに頬張って、嬉しそうにママを見ました。



 遅れて起きてきたパパは、結ちゃんを見てびっくりです。


 大きなおにぎりを持って、お顔は米粒まみれ。


 思わず、笑ってしまいました。


「それは、パパのおにぎりかな?」


 頷く結ちゃんに、パパはまた笑いました。


「パパのおにぎり、作り直すね」


 ママが新しく大きなおにぎりを握ろうとします。


「いいよ、いいよ」


 パパはそう言って、結ちゃん用のおにぎりをもらいました。


 結ちゃんの手には、大きなおにぎり。


 パパの手には、小さなおにぎり。


 仲よく頬張って、「おいしいね」。



 結ちゃんは大きなおにぎりを食べ終わると、イスを立ちました。


 お顔も、手も、米粒まみれ。


 ふきんを持ったパパから逃げて、とたとた走ります。


 台所に立つママの足に、ぎゅーっと抱きつきました。


「おにに、おいしいね」


 結ちゃんが見上げて言いました。


「こらこら」


 結ちゃんをつかまえようとするパパに、ママはにっこり笑って。


「いいよ、いいよ」


 見上げる結ちゃんにも、にっこり笑って。


「ママのも食べる?」


「うん!」


 結ちゃんの瞳が、またきらきらとしました。



 まんまる笑顔に、幸せいっぱい。


 ママの足にも、米粒がいっぱい。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 拝読しました。 優しい語り口に情景が浮かび、思わず頬が緩みます。 結ちゃんかわいいです! 「おにに、おいしいね」と満面の笑みで言う姿が目に浮かびます。 きっとおにぎりには両親の優しさと結…
[一言] 小説pickupから来ました。 もう可愛らしすぎて! 読ませて頂いてありがとうございます。
2020/12/19 22:14 退会済み
管理
[良い点] 幼い結ちゃんがおにぎりに向かって一直線に走る姿、大きなおにぎりにかぶりつく様子、米まみれになったその顔……全部愛らしいです。 幸せな家庭だなと、見ていて胸が温まる心地でした。 [一言] 読…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ