おにぎり、ぎゅっぎゅっ。
蓋を開ければふんわり湯気が立つ。
中にはまっしろ、熱々のごはん。
少し冷まして、塩のついた手に取る。
具材を入れて、ぎゅっぎゅっ。
海苔を巻いて、できあがり。
いちばん早起きのママは、台所に立って朝ごはんを作ります。
今日は、みんなが大好きなおにぎりです。
中身はいろいろ、鮭、こんぶ、梅干しも。
海苔を巻いて、パパの大きなおにぎりが完成です。
とたとたとた。小さな足音です。
「きゃあー!」と喜んで、小さな手で指を差しました。
「おはよう」のあいさつもそこそこに、おにぎりに夢中な結ちゃんです。
「おにに! おにに!」
1才の結ちゃんは、まだ上手に「おにぎり」と言えません。
でも、誰よりもおにぎりが大好きです。
「小さなおにぎりも作るから、待っててね」
ママは結ちゃんに言いました。
結ちゃんはパパの大きなおにぎりをずっと指差しています。
きらきらとした瞳は、おにぎりに夢中です。
「おにに、たべたい!」
背伸びをして、小さな手がパパのおにぎりに。
ぎゅっとつかんで、驚くママから急いで逃げました。
「それは、パパのだよ!」
ママが言うけど、お構いなしです。
結ちゃんは自分のイスにお行儀よく座って、ぱくり。
大きなおにぎりにかぶりつきました。
「おにに、おいしいねー」
小さなお口いっぱいに頬張って、嬉しそうにママを見ました。
遅れて起きてきたパパは、結ちゃんを見てびっくりです。
大きなおにぎりを持って、お顔は米粒まみれ。
思わず、笑ってしまいました。
「それは、パパのおにぎりかな?」
頷く結ちゃんに、パパはまた笑いました。
「パパのおにぎり、作り直すね」
ママが新しく大きなおにぎりを握ろうとします。
「いいよ、いいよ」
パパはそう言って、結ちゃん用のおにぎりをもらいました。
結ちゃんの手には、大きなおにぎり。
パパの手には、小さなおにぎり。
仲よく頬張って、「おいしいね」。
結ちゃんは大きなおにぎりを食べ終わると、イスを立ちました。
お顔も、手も、米粒まみれ。
ふきんを持ったパパから逃げて、とたとた走ります。
台所に立つママの足に、ぎゅーっと抱きつきました。
「おにに、おいしいね」
結ちゃんが見上げて言いました。
「こらこら」
結ちゃんをつかまえようとするパパに、ママはにっこり笑って。
「いいよ、いいよ」
見上げる結ちゃんにも、にっこり笑って。
「ママのも食べる?」
「うん!」
結ちゃんの瞳が、またきらきらとしました。
まんまる笑顔に、幸せいっぱい。
ママの足にも、米粒がいっぱい。