最終話 告白
読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)
これはこれで終わりますが、リメイク版を作っているのでそっちが本命ですかね。
まあ、これはこれで終わりです
霧の森で魔物が発生した数日のこと。俺達は国の自警団から事情聴取から解放されていつも通りの日常を過ごしていた。
といっても、それは俺以外の人達の話で俺はあまりそうは思わない。
なぜなら、もうこの学院から出るつもりだからだ。
俺が過去から戻ってきたのは全てはリーゼルを助けるためのこと。それ以上でもそれ以下でもない。
とはいえ、俺が勝手に学院をやめるのは母さんに申し訳なく思う節もあるのだが、とにもかくにもこれ以上の荒れごとを起こさないのは俺自身がリーゼルに近づかないことが一番手っ取り早いのだ。
しかし、それを考えているのは俺だけであって、助けられた当の本人はその許可を出してくれるかどうか。
俺はこの先の不安を抱きつつ疲れたようなため息を吐くとふと近づいて来る気配へと視線を向けた。
その視線の先には当然のごとくリーゼルの姿がある。まあ、もとより事件の直後には全てを話すように言われているから仕方ないのだが。
「ちゃんと来ていたようだね」
「まあ、話す約束をしたからな」
「やっぱ、ユリスの雰囲気はどこか違うね」
リーゼルはそう言いつつも不安な様子を見せることなく、むしろ軽く笑みを浮かべる。
その反応が俺には意外に映った。本来なら、これまでずっと自分を騙してきた人を許すはずもないし、ましてや不相応の力を持っている俺に恐怖してもおかしくないはず。
だが、同時にその反応がありがたいことには変わりなかった。これで少しは落ち着いて話せそうだ。
「リーゼル、実は俺―――――――」
「もう一度やってきたんでしょ? ここに」
「!」
その言葉に俺は思わず驚く。それは自分がこれまでやってきたことを全て理解している口ぶりであったからだ。
少なくとも、普通ならそのような考え方は出てこない。だが、リーゼルの動きには不自然なことが多すぎた。
少しのズレがバタフライ効果的に動いていくのだとしたら、今頃自体はもっと大きいはず。そもそもそうならないように出来るだけ同じ行動をなぞったというのに。
すると、そんな俺の疑問に対してリーゼルは独白を始めた。
「どうしてそんな考えになったのかユリスは気になっているみたいだね。それは私も似たような存在だからだよ。私もユリスの運命を変えるために戻ってきたの?」
「俺.......の?」
「うん、私が死んだせいでユリスは深い傷を負ってしまった。そして、私を助けるためにあらゆるものを犠牲にしてしまった。そんなユリスの一生を私は女神様に導かれた天界でずっと見ていたの」
「女神? 天界?」
俺は思わず単語を繰り返す。にわかには信じがたい言葉だ。しかし、それ以上に自分が神龍という架空上の生物に会ってしまっているので、その話がより現実味を帯びてくる。
ということは、あれか、自分は結局リーゼルに悟られずに動けてはいなかったということなのか。
「うん、私も信じがたいことだったけど、そこで見せてもらったユリスの生涯はとても見てて苦しかった」
まあ、恩人を助けに戻るとか普通なら重いよな。
そう思う俺であったが、リーゼルの回答は違った。
「もうすでに助けられたにもかかわらず、もう一度助けるために動かしてしまった。それが一番苦しかった」
「もう既に助けられた.......?」
「うん、前の私はね、ずっと何も考えずに生きていた。生きていいのかすら迷っていた。周りの人にも環境にも恵まれていたけど、それ以上に私にはあまりにも空っぽだった。何か目標があるわけでもなく、無情に繰り返す日常。つまらなかったわけじゃない。でも、それ以上に何かを求めていたのかもしれない」
リーゼルの顔は何かを抱えているようにどこか影が見えて映った。
その顔に対して俺は黙っていることしかできなかった。
しかし、一転してリーゼルの顔は明るくなる。
「でも、この学院に来て変わったんだ。それはユリスがいてくれたから。前のユリスはずっと一生懸命魔法に取り組んでいた。そうしなければいけない立場にあったのかもしれないけれど、魔法を学んでいる時のユリスの瞳がとてもキラキラしていたことを今でも覚えている。だから、気になったの」
「それじゃあ、過去に俺とリーゼルが出会った理由は......」
「そう、私が一方的に何か欲する答えが見つかるかもしれないと思ったから。結果からその時は言えば見つかることはなかった。でも、日々の時間がとても早く過ぎるぐらい楽しかったのは覚えている―――――――今でも」
「.......そっか」
俺が言えることがあるとすればリーゼルの言葉を受け止めて頷いて上げることだけだった。
その時の気持ちはリーゼルにしかわからない。それを否定する様子もなければ、同意する要素もないが、どちらかと言われれば圧倒的に後者だろう。
そして、リーゼルが嬉しそうな顔をしてくれるならそれでいい。俺は満足なのだ。
「けど、それで構い過ぎてしまった。私は居心地の良さに甘えて――――――そして悲劇は起こった」
「.......」
「あまりに突発的なことだったとしても、私はユリスがいたから冷静でいられ、せめてユリスたけでも助けることを考えていた。しかし、それは肝心なユリスの気持ちを考えていなかった。自分が傷つけばユリスが傷つくことを考えていなかった。そして、ユリスが生涯進んでしまう悪路へ促してしまった」
リーゼルはその時のことを思い出して後悔しているように顔が暗い。
しかし、リーゼルがそう思うのとは反対に俺は別に後悔はしてない。
確かに、あの時は敵を憎み、環境に怒り、世界を呪った。そして、進み続けた結果が今だ。今はこうしてリーゼルが生きている。
リーゼルが生きていることに比べれば自分の歩んできた道など比べる対象でもない。リーゼルが元気ならそれでいい。
だから、伝えるべきことばしっかりと伝えなければいけない。
「俺は後悔してないよ。今がリーゼルとこう話せている。それだけで幸せだから」
「ユリス......ありがとう」
「別に感謝される覚えはない。勝手な自己満足だ。その結果リーゼルは助かっているだけに過ぎない」
「それでもありがとう。きっと私が戻っただけだったらこうは上手くいかなかっらだろうから。なんせあの時の記憶が少しトラウマになって時々魔物を殺せないし」
なるほど、あの時ホーンラビットを殺せなかったのはそう言う理由だったからか。
「俺も驚いたよ。まさかリーゼルが俺を助けに来るだなんて」
「お礼はキッチリ返さないとね。それにこれも私の自己満足だったから」
「そっか」
俺とリーゼルは顔を合わせると笑い合う。どこまでも心地の良い風が吹く。まるでこの時を祝福しているみたいだ。
今だけ時間がゆっくりに感じる。これがもしかしたら一番の魔法なのかもしれない。
すると、リーゼルはふとオレに尋ねてくる。
「ユリスはこれからどうするの?」
「........」
その質問はまるでこちらの考えを読み取っているかのようであった。はあ、全く敵いもしないな。
しかし、もうこれ以上リーゼルには嘘をつきたくない。ここはハッキリ伝えなければ。
「俺はもうこの学院には―――――――」
「ユリス」
「いな―――――――ん!?」
俺が言葉を告げている最中に突然呼ばれる。その声に反応しながら言葉を続けていると突然リーゼルの顔が現れ――――――重なった。
それは拙いキスだったかもしれない。しかし、過去にも今にも初めてのキスであった。
「ごめんね、ズルいことした。でもこれで―――――――ユリスはそばにいてくれるよね?」
「~~~~~~~!」
「責任取ってくれるよね?」とでも言っているかのようなあざとさ。それが女神リーゼルと合わさるとこんなにも心拍数が爆上がりするものだとは。
顔から火が噴きそうなほど熱を帯びている。周囲の時が止まったかのように自分の体も動かなくなる。
そして、時間が動き出した時には俺は思わず呟いていた。
「はは、やっぱりリーゼルだけには敵わない」




