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第2話 過去戻り

読んでくださりありがとうございます。(≧▽≦)


とりま一か月はこんな感じで投稿ですね。いやー、新作って投稿するだけでドキドキしますね、不整脈かな?←違う

「今にも死にそうな状態だな」


「だからこそ、早くしろ。俺の意識もかすれかけてんだ」


「そう言いつつも、聞くまでは倒れないという信念の目が伝わってくるぞ?」


 俺は全身を自分の血と神龍の血で真っ赤に染めながらも、気力でなんとか持ちこたえていた。


 戦いを終えたせいか先程感じていなかった痛みは身体中を駆け巡っており、暑かった体は今は寒さを感じるほど冷えている。

 まあ、もともとここの標高が高いせいというのもあるだろうが、それ以上に血を流しすぎたせいでもあるだろう。


 依然として荒い呼吸を繰り返しながら、俺は神龍へと再び告げる。


「さあ、俺の願いを叶えろ」


「なら、どんな願いだ? 不老不死の力か? 転生することか? はたまた生まれ変わりたいのか?」


「そうだな......その選択肢だと一番最後が近いかもな」


「なんだ? 貴様のことだから、現在の力を有したまま生まれ変わりたいのだろう? 人間の女を侍らせたいのか?」


「ふざけんな。俺のことをブタ未満で見るようなやつらに俺がかける情けはない」


 口の中に溜まった血を唾を吐き捨てるよう出すと神龍の言葉に答えていく。


 正直、言ったままの意味で女は嫌いだ。

 学院時代の時にいたあいつらの目は感情すら宿っていなかった。

 嫌いではなく、無関心なのだ。まるで空気と接しているかのように当たり前に俺を無視していく。

 そして、無視しなかったやつは大概ゴミのようにいじめた。


 その時の俺はなんの才能もなかった。当然、力もなかった。

 学院内で最弱。もとより実力主義の学院ではあったが、それでもなお酷かった。

 俺を助けてくれる人は誰一人としていなかった。クラスメイトも教師も。

 ......いや、助けようとしてくれる味方はいた。それでも、そいつには俺の扱いは荷が重すぎたらしい。


 だが唯一、一人だけ俺のことを励ましてくれる人がいた。助けてくれる人がいた。


『大丈夫、キミはきっと強くなれる』


『私が教えてあげようか?』


『そのお肉触らせて』


 はは、最後のは違うか。でも、その言葉だけでも俺は強くいられ、今も泣きそうな程に嬉しくなる。

 いや、今も少しだけ涙が目に溜まってしまっているな......歳かもな。


「貴様は生まれ変わって何がしたい? その女どもに復讐――――」


「違う。俺は過去をやり直したいんだ。復讐も無くはない。だがそれよりも見返したいと思い、それ以上に俺は助けたい人がいる」


「ほう? その人を生き返らせるじゃなくて、わざわざ過去に戻って助けに行きたいのか?」


「まあ、なんというか......これは俺のわがままでどうせ助けるなら、その人が歩むはずだった道のりをそばで見ていたいんだ。それにこの時代で生き返らせても、『あなたは誰?』ってなるし、死んでいった彼女の友達だっていると思うからな」


「人間の色恋に興味はないが、貴様の辿る道は少しだけ興味が湧いてきたぞ」


 神龍は両腕を雲の床に突き立て、体を持ち上げていく。

 その体はどこもそこも傷だらけで、力を込めた腕からもさらに血が大量に湧き溢れてくる。


 俺はその行動にやっとかと思い、大剣を雲の床に突き立てた。

 その瞬間、俺の体は倒れ込み始めた。だがなんとか片足を前に出して踏みとどまる。

 おっと、まだ願いごとが叶ったわけじゃないんだ。ここで油断して意識を逸らしたら、簡単に逝ってしまう。


「さあ、貴様の願いごとを言え。神に属する一柱、神龍が貴様の願いを叶えてやろう」


「なら、俺の今ある知識と記憶と力を残したまま、俺を学院入学前の俺へと過去戻りさせてくれ」


「わかった。その願い、しかと受けとった」


 その瞬間、神龍の目は紅く輝いた。そして同時に俺の体は淡い柔らかな青白い光に包まれていく。

 暖かい光だ。今にもこの世のどこかへと連れていかれそうな程に眠たくなる暖かさ。


「安心しろ、その中ではもう死ぬことは無い。それではせいぜい頑張ることだ。我は遠くから見守っているぞ」


「お前も今のまま過去に戻るのか!?」


 俺は閉じかけていた目を開いて思わず見る。

 その反応に神龍はニヤッと笑った。


「然り。言ったであろう? 我は『貴様の辿る道に少し興味が湧いた』と」


「はあ......せいぜい邪魔はしないでくれよ?」


「安心せい。我自らがそのようなことをすることはありえん。だが、時間が空いたなら会いに来ればいい。貴様なら快く歓迎してやろう」


「そうかい。なら、時間がある時にな」


「では―――――ゆけ!」


 俺の体を包んでいた青白いが急速に濃くなり、輝きを増していくのを確認した。

 そしてその光は、この青空し見えない天の果へと真っ直ぐ縦に伸びていき、瞬間――――俺の視界は大きく歪んでいった。


 **************************************************


「ん、んん......」


 俺は寝ぼけまなこで少しずつ目を開けていく。

 すると視界に広がったのは見覚えのある懐かしい天井であった。

 少し視線を移すとカーテンの隙間から差し込んでいる光がまばらに俺の掛け布団を照らしている。


 どうやら本当に戻って来たらしい。


 目が覚めてきた。同時に、扉の方から香ばしい匂いが漂ってくる。

 上体を起こしていく。体が重い。重い以前に腹回りに余計な肉がついている。起きるのも大変なわけだ。


 視界を周りに移して近くの鏡を見る。黒髪黒目が良く映える十五の時の俺だ。

 それから本棚に、机に、ミニテーブルに......とそこは正しく過去の俺の部屋であった。

 読みかけでそのページを開いたままにしているのも懐かしい。


 ベッドから降りると机の上にある本へと近づいていく。そして、それを視界に捉える。

 魔術の基礎知識の本......そういえば、今は入学試験の前であったな。どれくらい......五日前!?


 そのあまりに急な日数に思わず困惑する。


 はあ......あの龍め。随分とギリギリに戻しやがったな? まだ確かめたいことや調べたいことがあったというのに。

 特にこのみすぼらしい体は。


 俺の体は一言で言えばチビデブだ。

 一度目の学院生活でも卒業するまでずっとそのあだ名だったな。名前より覚えられてたっけ?

 にしても、確かにデブ......いや、これはまだぽっちゃりぐらいだろう。


 いや、やつらにしてみればこんな言葉なんて些細なことか。

 それに神龍と戦った時の俺が昔の俺に会っていたら、間違いなくデブと言って罵っていただろう。

 ダイエットは少しずつやっていこう。


 目的のサブ目的として、体を鍛えスリムボディになることを決意した。

 だが正直、過去の俺は彼女と仲良くなったのがデブであるからというのがあるのですぐには実行しな......いや、でももう一度彼女に会えるのにだらしない格好と言うのもな......


 やはりここはビシッと行くべきかそれとも、彼女に会えるまで過去の道すがらを辿るか......いや、彼女を助けるという目的があるならそれに沿った方がいいか。

 彼女との信頼関係をできるだけ早く構築できるなら、この体だって利用してやる。

 ということで、さっきの決意は一旦保留だな。


 そんなことを考えていると俺の部屋へと向かってくる足音が聞こえた。

 その足音は何がそんなに楽しいのかスキップをしながらやってくる。

 そして扉を勢いよく開けると告げた。


「あら、珍しく朝早いわね。おはよう、ユー君」


 懐かしの顔が見えてくる。


「おはよう、母さん」


 そしてただいま過去の俺。

連続投稿は次でラストです。キリが良いからね。21時に更新です。

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