第26話 二回目の魔物狩り
読んでくださりありがとうございます。(≧▽≦)
また来ましたね。魔物狩り。
「.......」
「.......」
「.......」
俺は今二回目の魔物狩りへと赴いている。その演習での目的はウォースネークという大木みたいな胴体をした五メートルほどの大蛇の討伐だ。そしてその時の討伐証明は牙。
まあ、大蛇はそれほど討伐することは難しくない。
そして今の俺の問題はそこではない。
俺はリーゼルとケンカのようなものをしてから酷く気まずい空気を作っている。
今までの数日間、まともにリーゼルと話してもなければ、会ってすらいない。
そして俺はリーゼルに嫌われたかもしれないというショックとルミナからのしつこい追及でやや精神的に参っている。
とはいえ、それはそれとして目的は必ず完遂させるが。
まあ、実際一番辛いのはリーゼルと俺の仲介役を担って板挟みになっているレイナの方だが。
実際レイナは良く動いてくれたと思う。
特に俺が頼んだということはないが、やはり俺とリーゼルのこじれた関係性は目に余るものがあったのだろう。
そう言う意味では俺は随分と助かっているので、全てが終わり次第何か奢ってやろうか。
だが結果から言えば、俺とリーゼルの関係性は修復できていない。
俺があの時の涙を引きずっている一方で、リーゼルは何事もなかったように前を向いている。
正直、その表情は今も驚いていたりする。どうしてそんなにすぐに切り替えられるのか。
そしてあの時を思い出すたびに思う。リーゼルは何を隠して、それでいて何を伝えたがっているのか。
こればっかりは情報が微塵もないので、予想を立てることも難しい。
それにリーゼルが今の歴史であんな風に泣いたということは、一度目のリーゼルも同じような気持ちを抱えていたのだろうか。
だとすれば、何が原因なのだろうか。俺の行動がリーゼルの何かに影響したのだろうか?
疑問ばかりが思い浮かんで言葉に出てこない。はあ、いくら戦闘面で強くなってもこういったことには弱いまんまだな、俺は。
「いい加減にしろ! てめぇら!」
「「「!!!」」」
俺達が絶賛気まずい空気を製造していると突然金髪サルがサルらしく吠えた。
両拳は握り、肩話軽く上下して顔は赤い。どうやら怒りで興奮しているようだ。
ん? 何か怒らせるようなことしたか?
「お前らの胸糞悪りぃ空気! いい加減にしろってんだ! さっきから我慢してればよぉ!」
.......それに関してはごめん。さすがに謝るわ。確かに、この空気は俺達当事者だけが感じる空気じゃないよな。金髪サルの言う通りだ。
「てめぇらがそんな空気のせいで討伐試験がクリアできなかったら、それは全ててめぇらのせいだからな! 足引っ張ったらただじゃ済まさねぇぞ」
ほう、さすが一年トップテン入りしたハイランカーは違いますな。
だが俺の恩人リーゼルはトップファイブ入りしてるからな。お前より強いってことだからな。
俺はそんなことを内心で言い返しつつ、顔では苦笑いを浮かべていく。
やはり俺に殴り掛かって来るということはしないか。
リーゼルという抑止力もあるから当然といえば当然か。
それはそうと.......入り始めてから十五分ぐらい経つが陰キャの方に動きはないな。
むしろ気持ち悪いぐらいに俺やリーゼルに関わって来ない。
俺に突っかかることはリーゼルに悪印象だからだと思っているからか?
安心しろ。お前はもともと悪印象だ(※ユリスの意見)。
という本気九十九パーセントの冗談は置いといて、全くこっちの様子を伺いに来ないのもわからない。
本来のあの陰キャなら嫉妬という嵐に身を任せて俺とリーゼルの様子を伺いに見るはず。
だが見ないということは、俺とリーゼルとの空気が悪いから見なくても大丈夫という表れなのか。
それもあるが、また疑問点として浮かび上がるのは魔物狩りが開始してから全くといっても過言じゃないほど、しゃべっていない。
それが何を意味するのかはまだ分からないが、観察の余地はある。
その時、俺は気づかなかった。先行する金髪サルの後ろを歩く陰キャの目が黒々しくなっていたことに。
それからしばらくして、俺達は森の近くにある湖へと辿り着いた。
その湖透明度が高く下まで透き通っていて、さらに太陽の光を反射いて所々白い輝きを見せている。
その美しき光景に俺とリーゼルは目を奪われ、少しだけ気まずかった空気が霧散していく。
すると突然レイナが靴を脱いでズボンの裾を膝ぐらいまで捲し上げていく。
そしてその行動をリーゼルにも提案した。
「リーゼルちゃんもどう?」
「.......わかった」
「お、おい! てめぇら!」
リーゼルは靴と黒いハイソックスを脱ぐとリーゼルに手を引かれるままに湖へと走り、その中へと入水していく。
どうやらその湖の岸付近は浅いらしく、すね辺りまで浸っている足をバシャバシャと動かしていく。
その光景を金髪サルは止めようとしたが、すぐに頭を抱えて言うのを止めた。そしてチラチラと見てる。
おい、何勝手にリーゼルのキャッキャウフフを見てやがる。お前の汚い視線を送りつけんじゃねぇ。
まあ、それはそうと実に眼福な光景であることは確かだ。
美少女と美少じ.......ゲフンゲフン、美少年が湖で遊ぶ光景は実に映えるという感じだな。足の眺めも素晴らしいし、絵画にでも描かれそうな世界観だ。
俺がそんなことを思っていると突然レイナが叫んだ。
「来た! 急いで上がるよリーゼルちゃん! 全員戦闘の準備をして!」
レイナはリーゼルの手を引いて急いで岸へと上がっていく。そしてすぐに湖の方へと振り向いた。
その瞬間、二人の後を追ってくるように黒く細長い何かの影が水面に現れる。
そしてその何かは一気に水面から飛び出してきた。
「ギャシャアアアアア!」
「こ、こいつはウォースネーク!?」
滑らかで光を反射する鱗を全身に纏い、チョロチョロと先が二股に分かれた舌を出したり引っ込めたりする大蛇は俺達を頭上から見下ろすように存在感を放っている。
ちなみに、俺はレイナのやりたかった行動を知っていたからあえて止めなかった。
レイナがやったのは伝統的なウォースネークを狩る時のあぶり出し法だ。
ウォースネークは基本的に水中に潜む。それぐらいなら学院のほとんどの生徒は知っているだろう。
だがウォースネークは憶病で水面に攻撃した所で怒って現れるということはしない。
とはいえ、奴はバカだ。だからあぶり出し法は水面でバシャバシャと音を出して魔物がおぼれていると勘違いさせる。それだけでいい。
奴は近づいたら多少陸に上がっても、そのまま襲いかかろうとする。
なので顔を出したところで、再び水中に潜れないように動けなくさせてしまえばいい。
奴は体を半分水中から乗り出している。となれば、水中ごと氷漬けにしてしまえば動けまい。
さあ、リーゼル動き出す前に湖を凍らせて――――――
「......」
俺がそう思ってリーゼルを見ると彼女は僅かに身を縮めて怯えたように体を震わせていた。
俺はその光景を見た時、思わず言葉を失った。
それはこれもまた過去とは違う反応を見せているからだ。
するとウォースネークはリーゼルが怯えていることに気付くとリーゼル単体に噛みつこうと攻撃を仕掛けた。
その瞬間、俺は一度目の俺がリーゼルに庇われて救われた時の記憶がフラッシュバックした。
そして思わず叫んだ。
「リーゼル! しっかりしろ! 僕はここにいる!」
「!」
その言葉が届いたのか少しだけ涙を浮かべたリーゼルの視線が俺の視線と合う。
そしてリーゼルの仲で何かの確認が出来たのかすぐに涙を拭って、迫りくる大蛇へと右手を突きつける。
そして睨みつけるような目で魔法を行使した。
「氷の精霊よ。その凍てつく波動にてこの大地を染め上げよ!―――――凍てつく大地」
リーゼルはその右手から白い煙の本流を大蛇へと浴びせていく。
さらにその煙は大蛇の姿を隠すと背後にある大地まで覆いかぶさった。
その白き煙からは冷気を感じて手の温度が急速に奪われていくのがわかる。
そしてその白い煙が晴れた頃には氷漬けになった大蛇と湖の姿があった。
ははは、リーゼルめ。わざと詠唱したな? 確かに無詠唱は一般的とはいえ、詠唱した方が魔法の威力は上がるからな。
まあ、それにしても......
「これはやりすぎかな.......」
俺は先ほどまでの美しかった湖と周囲が白銀の世界へと変わったことに思わず苦笑いした。
リーゼル、やっぱつえぇー。




