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第23話 変化で得た情報

読んでくださりありがとうございます

 俺は魔物狩りの演習が終わってからずっと考えていたことがある。

 それはリーゼルの行動だ。


 そもそも魔物狩りのルールはホーンラビットの討伐と討伐証明を持ってくることだ。

 つまりは殺したホーンラビットを指定された数しっかりと持って来いという意味だ。

 そしてその言葉の裏には生け捕りは不可という暗黙の了解がある。あるならばそもそも言うからな。


 加えて、気になったのがリーゼルの表情である。

 リーゼルは魔物を殺した時、まさに路傍の石を見ているかのように感情のない瞳を向けていた。

 その目は人を殺してもどうとも思わない暗殺者の瞳に近かった。


 確かに魔物を殺す時には非常になれという古い教えもあるが、もしかしてリーゼルの家ではそう言う古いタイプの教えを受け継いでいるのだろうか。

 正直言って今どきじゃない。死ねばもろともの時代は終わったのだからな。


 腰掛けていたベンチの背もたれに寄り掛かると買ってきたパンを咥える。

 そして両肘を背もたれにかけながら、パンを咥えた状態で空を仰ぐ。


 あー、最近わかんないことは多すぎだし、歴史が変化し過ぎだしどうすりゃいいんだ?

 最初は多少の行動のズレは仕方ないと思っていたけど、こうも変わり過ぎるとこのまま準備を進めてしまっていいのか不安になる。


 良くある話で、未来は木の枝のように無数に分岐していて、その分岐はどこで分岐しているかわからない。

 たとえば普段右足から靴を履くのをふと左から履いたとしたら、それだけで右と左の二つの分岐が出来る。


 まあ、さすがにそれは細かすぎると思うが、俺がリーゼルが襲われるはずだった街の出来事なんかは大きく先の歴史(未来)に響いていくだろうな。


 必ず起こり得る歴史(未来)もあると言うが.......それがリーゼルの出来事だと思うのはさすがに考え過ぎだろう。

 それは明らかに神頼みが過ぎる気がする。奇跡は大事な場面以外で早々起きて欲しくないものだ。


「はあ~」


 俺は咥えたパンを噛みちぎり、飲み込むと大きく息を吐いた。

 ここ最近考え過ぎのようなきがする。それがたとえリーゼルのことであっても。

 時には脳を休めないと重要な場面で冷静さをかく可能性だってある。

 なので今は少し空っぽにしようか。


 俺がそう思って心地よく吹く風に気持ち良くなりながら目を(つむ)っていく―――――


「ユリスー! こんな所にいたんだねー!」


 レイナか。今少し眠れそうだったんだが、仕方ない。


「どうしたの?」


「今日は外が心地よくてね。少し散歩していたらユリスを見つけたから駆け寄ってきちゃった」


 きちゃったって.......その言葉が似合うのは美少女とお前ぐらいだぞ? 全く、どうしてレイナは男なのか。

 それに駆け寄ってきた時と今こうして話しかけてくる時の圧倒的な小動物感。まるで子犬か何かだ。

 ちなみに、"男殺し"の二つ名を持つレイナは現在三十連勝中であるらしい。そこらの女子よりモテてるだろうな。


「それにしても、ユリスは一人だとその.......ワイルドだね」


「ん?」


 俺はレイナの言葉に思わず唸り声を上げる。そしてすぐに自分の服装を見るが特に変わりない。

 レイナは一体俺のどこを見てその言葉が出てきたのだろうか? 何か別のものが見えていたりするのか?


 俺がそんな疑問を抱えているとレイナは俺の隣へと座ってきた。

 しかも距離は割と近く、俺は背もたれにかけている肘の前に座るという近さなのだ。

 そしてレイナはそのまま背もたれへと背中をつけると俺の方へと少し照れた様子で告げる。


「思わず座ってみたけど、この構図って傍から見れば"俺の女"だって主張しているみたいだよね」


「......!!」


 こ、こいつ、そう言うことか!? やべぇ、そう思った瞬間、そうとしか思えなくなってしまった。なんだ!? 急に体が火照って来たぞ!?


 俺は込み上がる羞恥とともに両腕をすぐに引っ込める。

 だが一度想像できてしまったことだけはそう簡単に払拭できなかった。


 レイナめ、何を急に言い出すかと思えば、本当に何を言い出してんだ!? く、クソ、屈辱だ。俺がリーゼル以外にこんなに心をかき乱されるなんて。

 というか、その恥ずかしそうに赤らめた顔はやめろ。こっちまで恥ずかしくなってくるだろうが。


 .......はっ! まさかこいつ、ついに俺を標的に!? 記念すべき第三十一人目はお前だという宣戦布告だったりするのか!?

 ふんっ、なめるなよ? 俺はそう簡単に攻略させないし、そもそもされることすらない。

 ただまあ.......なぜ男なんだ!!!


 俺は気持ちと雰囲気の切り替えのために一つ咳払いをした。

 そして少し落ち着いてきたことを確認するとレイナへとあることを聞いていく。


「なあ、先日の魔物狩りで何か気になったことなかったか?」


「気になったこと?」


 レイナは頭を傾げながら俺の質問をオウム返しに聞き返す。

 この質問の本質は当然リーゼルの行動理由だ。

 だがそれを直で聞くのはレイナに要らぬ誤解を生みかねないので一先ず避けた。


 レイナは顎に手を当てながら考えた。そして思いついたことを告げていく。


「やっぱり、同じチームの男子二人だよ。どうして協調性というものを持たないんだろうね。それもそうだけど、特にユリスを何だと思っているのか」


「悪い、レイナ。その他にあるか?」


「その他?」


 レイナも随分と不満が溜まっている様子だ。

 だがいいぞ。それでいい。あいつらは許すな。もっと嫌え。そして関り持たないように無視しとけ。

 まあ、最後のやつに関しては完全に俺が巻き込んでいることなので何も言ってやれることはないけどな。


 するとレイナは何かを思い出したように「あっ!」と声に出すと俺に伝えてくる。


「そういえば、リーゼルちゃんが魔物に対して抵抗を持っているような気がしたよ」


「魔物に抵抗?」


 俺はその言葉に難しい顔をする。

 あのリーゼルが魔物に抵抗とはどういうことだろうか。

 もしかして今回が魔物との初戦闘だったのか? いや、それはリーゼルがすでに魔物に襲われているという時点で違うか。

 なら、どうしてだ? これは俺でも思わなかったことだ。ナイスだ、レイナ。


「そう。生け捕りにした場面はあったでしょ? そこで『どうしてそうしたの?』って聞いたら、仕留めるのは他の男子の役割だって言ってたんだ。でも正直、その言葉に対してはあまりに自分の感情を押さえつけているような気がして」


「そのどこに抵抗を感じたんだ?」


「目からだよ。感情を押し殺したような目。僕の推測だけどそれって魔物の恐怖に対しての感情を押し殺していたように見えたんだ。逆にそれ以外で推測しようとなると僕には出来ないけど、少なくとも僕にはそう感じた」


「魔物の恐怖......」


 確かに俺では思いつかないことだな。まさかリーゼルが魔物を攻撃できないなんて知らなかった。


 まあ、自衛ぐらいはできるだろうし、そもそもそうであるという根拠もないが.......ともかく、俺は相変わらずリーゼルを完璧超人か何かだと思っているみたいだな。

 はあ、その考えは前に止めようと信じたのにな。


 ともあれ、これは良い情報だ。まさかこんな重要そうな話が聞けるとは。

 でもこの話を聞けたのは、俺が単独行動せずにリーゼルと行動を共にしたからなんだよな~。

 歴史が変わったことで聞けたこと。逆に言うと俺が正史通りに行動したならば聞けなかったこと。

 全く、悩ましいことだ。それに喜ぶに喜べない。


 ともかく、今は同じあの時の歴史に着地すると信じて行動し続けるしかないか。

 もう時間もない。明日には二回目の魔物狩り。そしてその数日後には.......あの時だ。

 もう準備は出来てる。後は先に設置しておくだけだ。

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