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第21話 魔物狩り#1

読んでくださりありがとうございます。


始まりました。魔物狩り

「それじゃあ、今からチームを決める。呼ばれたメンバーがこの演習が終わるまでのチームだ。場合によって複合する予定もあるがそれまた指示する」


 担任で女教師のフェイリスが修練場に呼び集められた一年に向かって大声で話していく。

 あの人はクズの教師が多い中の珍しい平等評価持ち主だ。

 つまりは実技で劣っていても勉学で才能があれば支援を惜しまないということだ。実力でしか見ないのが普通なのに。

 といっても、それすらに該当しない奴には基本的に無関心だ。なのでこの場にいる大半は無関心だろう。

 まあ、関係ない話だが。


「呼ばれた奴から並んでいけ」


 そうして名前が呼ばれ始めた。まず一つ目の問題はここだ。

 俺の今の歴史は過去と違うものになっている。故にここで俺が呼ばれた時のメンバーが違う可能性もある。

 ここで違えばかなり面倒だが予定を変更せざるを得ない。

 さて、どうなる?


「それでは次のチームだ。まずはユリス・クロードフォード、レイノール・フランクリン、リーゼル・フォルティアナ、ロウ・カルメン、ゲイル・ガイロッド」


 呼ばれた。歴史通りのメンバーだ。


「同じチームだね、ユリス、リーゼルちゃん」


「そうだね」


「うん、頑張ろう」


 レイナが俺とリーゼルに気軽に話しかけてくる......他二人を無視して。

 まあ、当然の反応か。一人は街で謎の結界騒動で一時期消えて最近復学した陰キャと悪い噂をまとわりつかせている金髪サルなのだから。

 触らぬ神にたたりなしとでも思っているのだろう。

 もっとも同じチームの時点で手遅れのような気もするが。


「よぉ、チビデブ。良かったな、同じところになれてなぁ?」


 金髪サルは高圧的な口調で俺に絡んでくる。

 こいつは陰キャが戻ってきて以来元の調子に戻ってきたようで非常にめんどくさい。

 つまりはいじめが再開されたということだ。あのやられる演技をまだ続けろと? 落ち着け落ち着け、これも後少しだ。それまでの我慢だ。


「ユリスはデブじゃない」


「あ? 何の用だ? 氷の魔女」


 するとその時、リーゼルがそっと割り込んできて上からメンチを切る金髪サルに対して反発するように睨み返す。

 なんだその下から目線は羨まし.......じゃなくて、いいぞ、リーゼル! そのままボコっちまえ! あと願わくばチビの発言も撤回してくれ!


 俺は内心でリーゼルを応援していると俺の右腕に絡みつくようにレイナが抱きついてくる。

 その顔は金髪サルに怯えているようで右腕からも震えが伝わってくる。

 にしても......なぜこいつは男なのだろうか? どこからどうみても男にしか見えないのだが.......


「ご、ごめんね。少しだけお願い」


 可愛い! くっ、俺がリーゼル以外で可愛いと言ってしまうなんて。こぉんの男殺しがぁ!


 俺はレイナの方を向いてそんなことを思いつつも、俺の方に向かって来る鋭い視線に気づいていた。

 それは当然ロウだ。恐らく俺がリーゼルに擁護されてるのが気に食わないのだろう。


 そんなことより、気になるのはあいつの魔力だ。

 先日街で会った時に感じた魔力と今のこいつから感じる魔力が若干違う。

 なんというか禍々しさがあるような。

 それにあいつの首もとからも魔力を感じない。どういうことだ? あそこがターニングポイントじゃなかったのか?


 わからないな。なら、今はこれからの事に意識を割くべきか。


「―――――以上だ。そして今からお前達は実際に森に入ってもらう。安心しろ、我々が設定した結界内だ。はぐれようともそのペンダントがあれば特定できる」


 俺は首元にぶら下げているペンダントを見た。

 これは呼ばれたと同時に配布されたもので位置を特定する魔法と緊急で周囲に音と光を放つ魔法が付与されている。

 まあ、危険があれば使えということだ。


「ただし、それははぐれても見つけ出せる可能性があるというだけで、結界内にいる魔物に襲われないということではない。そして毎年数名は必ず出るんだよ。調子乗ったバカがな。そんでそいつは大概戻ってこない。つまりは魔物に殺されたということだ」


 貴族がほとんどのこの学校で躊躇なく"バカ"呼ばわりとは命知らずだな、あの女。

 けどそのサバサバした性格が存外人気らしいというのが噂だ。


「ちなみに、その死に対して我々は一切責任は負わない。それは契約上で入学した時点ですでに同意されていることだからだ。死にたくなければ戦え」


 はは、まるで兵士養成所みたいだ......言うほど間違ってないな、うん。


「お前らの死は家族にも友人にも多大なる影響を与える。精神的ショックでこの学院を去った者も少なくない」


 これは貴族の中でもエリート地位にいる人あるあるだな。

 大概そういう奴ってお世話係と一緒に入学してくる場合が多いし、それにそいつって調子乗った挙句に死んだバカの後追い自殺するケースが多いんだよな。

 まあ、大体は遣えている貴族からの命令で責任取らされて死ぬのがほとんどらしいが。


 だから今の発言は"死ぬ"という言葉をオブラートに包んだ言い方になるな。

 さてそのことに何人が気づいているのやら。

 過去の歴史通りなら少し減るな。


「それじゃあ、今回の目標を指示する。制限時間二時間のうちにホーンラビットを八体討伐して来い。そして討伐証明の角もしっかりと回収してな。ちなみに、今ここに二百名近くの生徒がいるわけだが、全チームがホーンラビットを討伐できるわけじゃない。数は限られているし、制限時間内に間に合わなかったチームはペナルティを受けてもらう。もちろん、クリアできれば褒美もあるぞ」


 最後の言葉に周囲から唾を飲み込む音が聞こえてくる。

 がめつい貴族どもめ。まあ、その褒美が魔道具半額券と知っている俺はあんましやる気が湧かんのだがな。

 だって作った方が早いし。

 ともあれ、人を煽るのが上手い女だ。いや、餌で釣られる周りも周りか。


「ユリス、褒美ってなんだろうね?」


 レイナー! そんなキラキラした瞳で見ないでくれ! 違う、違うから! レイナはがめつい貴族に入ってないから!


「故に早い者勝ちだということだ。わかりやすいだろ?」


 空気が変わった。

 張りつめられ若干の息苦しさを感じていた空気がさらに密度を増していく。

 周囲は驚くほどに静まり返り、周囲から少し息を切らした音だけが耳に入り込んでくる。

 全員が今か今かとある言葉を待ち望んでいる。その姿はまるで犬みたいだ。

 そしてフェイリスは告げた。


「制限時間二時間―――――討伐開始!」


「「「「「うおおおおお!」」」」」


 その教師の声は静かで冷えた空間を劇的に騒がしく熱い空間へと変えていく。

 油に引火した火の如くその勢いは秒数を立つごとにうるさくなっていき、誰もかれもが気合の入った雄叫びを上げていく。


 俺が傭兵時代の時もこんな戦いあったな。

 どいつもこいつも戦闘狂で戦で死ぬなら本望みたいなやつだったな。

 そんな奴らの目の前で敵軍隊一つ消し飛ばして唖然とさせたのは今でも面白い思い出だ。


「クソがぁ! ぜってぇ負けねぇ!」


 その激流にものの見事に乗っていく金髪サルを筆頭に俺達も移動を開始した。

 周囲からは押し合い、罵り合う声が響いて来るし、一斉に移動したせいで砂埃が激しく舞っていき視界不良になる。

 だがそこはレイナの風魔法によって消し飛ばされているので俺達チームには関係ない。


「邪魔だ!」


「そっちこそ!」


 少し遠くを見れば戦闘が始まっている。

 もう始まっているのかと思わずため息が漏れるが、これは許されていることなので誰も止めようとしない。

 というよりも、「討伐して来い」と言われただけなのでそういうこともありなのだ。

 ただ今やるのはただの時間ロスじゃね?


 まあ、そんなことはどうでもいいか。それよりも今は歴史をなぞること。

 やはり俺が変に行動してあの時のあの場面以外で歴史が変わるのは困る。

 それにその方が確実に助けられるし。

 そう思って俺は土魔法<隆起>を使った。これは過去の俺がコッソリと練習していた魔法だ。

 それはただ地面を少し盛り上げるだけ。ただし、大群の移動には効果抜群。


「「「「「うわあああああ!」」」」」」


 数人の生徒達が躓いて転び、目の前の人を押し倒していく。

 それが連鎖的に繋がっていき大勢の生徒が地面に寝ころんだ。


「よっしゃあ! なんかわかんねぇが全員コケた! 足引っ張んじゃねぞ、お前ら! 特にチビデブ!」


 俺のおかげなんだけどね。

 ともかく、俺はこのチームを勝たせつつ見極めようか。

 陰キャの違和感をな。


 その時俺は気づかなかった。

 リーゼルが俺の背中を訝しげに見ていたことを。

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