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第20話 思わぬ情報提供者

読んでくださりありがとうございます。


謎も増々深まり、そして大きく動き出しています。

「あー」


 俺は手すりを背にして肘を乗せながら天を仰いでいた。

 そして口は半開きに開いてなんともアホ面をかましているような表情だ。


 俺が本性バレかけた件から数日が経った。

 それまでにリーゼルから素性を探るようなアクションは特に見えてこなかった。

 それどころか普通に放課後は歴史通りの魔法訓練まで行ってくれた。

 それは俺にとって嬉しい半面、不安を煽るような行動にも感じた。


 確かに前の俺はリーゼルと関わる機会が少ないと言っても過去の今頃はもう少し仲良く話しているはずだ。

 なのに今はどうしてか若干距離を置かれている気がする。

 廊下で遠くで目を合わせば横道に移動していくし、学食で会えば知らぬ存ぜぬで通り過ぎていくし。


 はあ、俺のメンタルはボロボロだぁ~。もうマジ泣きそう。


 その時、屋上の扉が鈍く金属を擦らせた音を響かせる。

 だが俺は別にその音の方向へと目線を移していくことはなかった。

 なぜなら誰が来たか魔力でわかるからだ。俺が向かないのは単純に向く必要がないから。


 するとその人物は俺に近づくと首元にそっと手を伸ばしていく。


「何する気だ?」


「やっぱバレるのね。出来るだけ音を殺して近づいてイタズラして驚かしてやろうと思ったのに」


「お前に驚かされたら一生の恥だ」


「そこまで言わなくてもいいじゃない!」


 ルミナは激しく声を荒げさせて俺に噛みついてきた。

 俺はまるで空気のように接しながらその噛みつきネコの対処をどうしようか考えていた。

 とはいえ、ルミナが来るのは用がある時だ。

 こいつは自分の立場をわきまえているのでただの会話程度なら俺に話しかけてくることはない。

 それで? こいつは何を聞きたいんだ?


「あんた、リーゼルと何かあったでしょ?」


「ぶふーっ!」


 俺はルミナのあまりに直球の言葉に思わず吹いてしまった。

 こ、こいつ、また何を言い出すかと思えば! そういや、こいつはまだ俺の秘密とやらを聞きたがっていたな。そのいい口実だと思ってきやがったな?


「その反応、図星のようね」


「.......」


「いい加減顔を向けてもいいんじゃないの!」


「へいへい」


 俺はダルそうに顔をルミナの方に向けていく。

 するとそいつは腕を組みながらツインテールの赤髪を風にたなびかせて仁王立ちしていた。

 今どきここまで腕組みの仁王立ちが似合う女子はいないだろう。

 勇者パーティの像に混ざってもたぶんバレないぞ。


「それを聞いてくるってことはリーゼルと何か話したんだな?」


「いいえ、特にあんたの話題は出ていないわ。ただ私はリーゼルと行動を共にすることが多いから。ほら、あんたともよく会ってたじゃない」


 んー? あーあー、確かによくよく思い出せばリーゼルの隣に赤髪の奴がいたな。いたいた、うん、いた。

 リーゼル以外完全に眼中になかったし、それにリーゼルの行動で度々メンタルブレイクしてたから視野も狭くなってたんだな。


 すると俺の様子を不審に思ったルミナが聞いてくる。


「ねぇ、もしかして、私のこと覚えてなかったの?」


俺は油を刺し忘れたロボットのようにぎこちなく頭を横に向けてルミナから視線を逸らす。


「......オボエテルヨ」


「嘘よ! その反応は絶対嘘! 魔道具使わなくたってわかるわよ! もう少し私だって見てくれてもいいんじゃない!?」


「なんだ? そんな見て欲しいのか?」


 そう言うとルミナへと視線を向けてつま先から頭の天辺まで視線を移動させていく。

 まあ、美少女と言われる類だろうな。リーゼルには敵わねぇけど。

 でもそのスラッとした長い脚に膝上ニーソによって出来る絶対領域は評価できるな。


 そんなことを思ってるとルミナは顔を真っ赤にしながら身をよじらせる。

 ちなみに、当然ながら俺はリーゼル以外動じないメンタルをしてるので見た罪悪感も羞恥心もなにもない。


「何ジロジロ見てんのよ!? 変態!!」


「おいおい、酷い言われようだな。『見てくれ』って言ったのはそっちだろ?」


「そう言う意味じゃないわよ!」


 ルミナは大声で俺に抗議する。

 待て待て、そんな声量をすぐ近くで出すんじゃねぇ。うるさいうるさい。


 ルミナは何やら疲れ半分怒り半分といった顔をしている。

 まあ、そりゃああれだけ声を出せば疲れるだろうな。少しは落ち着け。そしてリーゼルを見習え。

 それから数分後リーゼルが落ち着きを取り戻すと俺は聞いた。


「本当に何もなかったのか?」


「会話に関しては本当に何もないわよ。それにここで私が嘘をついて何のメリットがあるのよ?」


「俺とリーゼルの仲を引き裂く」


「あんた、私を何だと思ってるの」


 ルミナは俺の言葉にため息を吐くと俺に続けて言葉を告げた。


「でも私が時折あんたの話題を出すと途端に困った表情をするのよ。あの子があれだけ顔に出るのは珍しいわね」


 何それ見てみたい。

 つーか、こいつもこいつでリーゼルから俺のことを探ろうとしてやがるな。


「その様子はどう接したらいいかわからないって感じだったわね。だって私に『慎重にってどうすればいい?』って聞いてくるぐらいだもの。あの子が人間関係でこじらすことはまずないから、相手とすればあんたぐらいだと思って」


「そういうことか」


 まさかリーゼルがそこまで校舎裏でのことを引きづっているとは思わなかったな。

 なんせあの時のリーゼルは俺を励ましてくれたんだから。

 まあ、あんな状況の後じゃ確かに接しずらくなると思うがあのリーゼルがな......。

 いや、こればっかりは俺が勝手に憧れと尊敬で過大評価していたみたいだな。

 しっかりとリーゼルを見てあげてなかった。


 だとすれば、ここは俺からリーゼルを捕まえて話しかけるということになるが......

 そんなことが俺に出来るのか!?

 俺はあくまで今はまだ雑魚キャラユリス君だ。歴史通りに動くには少なくともあの時までこの姿の自分を演じなければいけない。


 それに俺は黒服だ。その俺が俺のことを友達だと言ってくれるリーゼルに話しかけに行くとすれば思わぬ風評被害を招くかもしれない。

 すでにリーゼルが俺を助けたという時点で―――――カーストトップのルミナが近くにいるからいいのだが―――――あらぬ噂は聞いたことがある。


 それにそう言う側面も確かにあるがそれ以上に俺の心臓がもたない!

 だってあのリーゼルだぞ!? 大天使様だぞ!? リーゼルから話しかけてもらうなら未だしも俺から話しかけるなんて!!

 俺まだ一度も話しかけたことなんだぞ!


「何突然悶えてんのよ、気持ち悪い」


 うっせ、黙っとけ。


 すると突然、ルミナは不意に何かを思い出したような顔をする。

 そしてその内容を伝えてきた。


「あ、そうそう。そういえば、あんたはもう既に噂になっているけど知っているかしら?」


「何を?」


「魔物狩り演習よ。実際に近くの森に入って魔物を狩る訓練をするそうよ。まあ、ここで大体の貴族たちは急に大人しくなるでしょうね。もちろん、調子乗って行動し続けて痛い目見るって意味でね」


「魔物狩りか......」


 もうそんな時期まで進んでいたか。ということは、あの時までの時間はそうなさそうだな。

 それとこれはハッキリさせなけばならない。


「なあ、その演習の三回目の演習会場って霧の森だよな?」


「ええ、そうよ。あんたも知ってるじゃない」


 やはりそうか。なら、それまでにいろいろと準備を進めとかなければいけないな。


 俺はもう計画を練り始め一人でにブツブツと呟いていく。

 その反応にルミナは思わず尋ねてくる。


「ねぇ、何一人でずっと呟いてるの? 怖いんだけど」


「あ? ああ。まだいたのか。もう帰っていいぞ」


「ねぇ、私の態度酷くない!?」

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