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第1話 願いのために

読んでくださりありがとうございます。(≧▽≦)


初めての一人称書きです

 やっとここまで来た。ここで奴を倒せば願いを叶えられる。


 俺は大剣を背負いながら、神山と呼ばれる山の頂上付近へと来ていた。

 そこには神々しい雲でできた階段がさらに空の彼方へと伸びている。

 その階段に足を踏み入れると一歩ずつ階段を踏みしめて登っていく。


 長かった。ここまで来るのは本当に長かった。

 ありもしないと人々が笑うものを必死こいて探し続けた。

 誰一人として、自分の言葉を信じてくれる者はいなかった。

 だが、別に俺は構いやしなかった。


 俺には叶えたい夢がある。


 その夢のためにここまで来たんだ――――何十年とかけて。

 後には引けない。引く気もない。

 ただそいつ倒せば、願いを叶えてくれるというためにここまで鍛え上げた。

 そいつを除けば、俺に勝てる者はいないというぐらいにまで強くなった。


 さあ、戦いの時だ。


 雲の階段を登りきった先は天界とでも言うかのような厳かで、神々しい空間が広がっていた。

 その全ては雲で出来ていて、そして正面にはそいつがいる。


「まさか我に会いに来る人間がいるとはな。して、何用だ?」


「俺はお前を倒して願いを叶える。それだけで言葉は十分だろ?」


 俺は背負っていた大剣を引き抜くとそいつ――――白く輝く神龍へと大剣の先を向けた。

 そして、濁った黒い瞳でその神龍の目を射抜くように見つめる。


 神龍はその言葉に笑った。


「ほざくな人間。だが、ここまで来たのなら我に勝てれば褒美をやろう。我も神に属するもの。大抵のもののら叶えられる」


「大抵じゃダメだ。叶えろ」


「やってみろ」


 神龍は俺を吸い込むように辺りの空気を口に含めていく。

 そして一気に灼熱の炎と共に吐き出した。

 その炎は辺りを一瞬にして、地獄の釜のような熱せられた空間に変えていく。だが雲は炎で消えることは無かった。

 その熱だけで普通の人なら間違いなくやられているだろう。


 だが......


真水の羽衣ウンディーネプロテクト


 俺は体に水で出来た羽衣を体に纏わせた。

 この羽衣はこの空間を支配する暑さをほぼ100パーセント軽減するだけでなく、もともと着ていた服を濡らさないという優れものだ。

 そしてさらに......


悪辣な雷(イビルボルテッカー)


 右手に持った大剣の刀身へと左手を這わせていく。

 大剣は左手が重なった箇所から雷を纏っていき、その雷は紫電を走らせて激しく音を立てる。


「小癪な」


 神龍は右手の鋭い爪でもって俺に攻撃を仕掛けてくる。

 それを俺はあえて止めに行った。

 その右手に走り込みながら、右手に持った大剣を左手てで支えて衝突させていく。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」


「こんなのは序の口だ」


 俺はその右手に跳び乗るとそのまま腕を登っていく。同時に腕に大剣を突きつけ、引きずりながら。

 腕にあった龍鱗がボロボロと流れていき、その箇所から大量の血が流れていく。

 その痛みに神龍は悲痛な声を上げながらも、左手の爪を立てて俺を攻撃してくる。


「神風」


 思いっきり踏み込むとそのまま駆け上がった。その瞬間、風を纏い辺りが急速に流れていく。

 流れすぎて別次元の空間に来てしまった気分だ。

 だがそれで神龍の攻撃は容易く避けられ、ついでに攻め込みもできる。


「おらあああああ!」


 俺は大剣の柄を両手で持つと神龍の顔面に向かって上から下へと思いっきり振り下ろした。


「舐めるな、人間!」


 すると神龍は俺の攻撃に合わせるように頭を横に振り、口の外へと出ている鋭く太い牙に当てていく。


「折れろおおおおおお!」


 ―――――ガキンッ!


 その牙を叩き折ることに成功した。


「フンっ!」


「ぐはっ!」


 だが神龍との衝突を避けられたわけじゃなく、雲の床へと思いっきり叩きつけられる。

 しかし当たる直前に咄嗟に自分の背中へと風を吹かせて、衝撃を和らげることは出来た。

 だがそれでも、全ての痛みを防げたわけではなく体に駆け巡る激痛とともに血を吐いた。


 痛てぇ......叩きつけられただけでこの威力か。本当に少しの油断が生死を大きく分けるようだ。

 だがそれでいい。俺は最強になって叶えたい夢を叶えるんだ。

 そのための痛みなら屁でもない。


 大剣を支えにして立ち上がる。そして、もう一度体に〈神風〉使って風を纏わせた。


「まさか一撃で我が牙を折るとはな......どうやら少々見くびっていたみたいだ」


「そのまま見くびってくれていた方が俺的にはまだ楽だったんだけどな」


 口に溜まった血を雲の地面へと吐き出す。


「我とてこんな経験は初めてだ。喜べ人間、貴様が最強の人間だ!」


 神龍は目をギラつかせたまま嬉しそうに笑う。


「そんなもんじゃもの足りねぇんだよ。俺にはあるだけもっと力が必要だ。そうすれば、俺はもう失わずに済む。どんな状況であっても助けに行ける」


「貴様が我にどのような願いを叶えて欲しいのか少々興味が湧いてきたぞ。だが、それはそれだ。我はここにて現世の最強として貴様を殺す!」


「なら、世代交代だ。俺がお前の代わりに最強を背負ってやる」


 俺は大剣を右手に構えたまま一気に走り出した。そして、素早く神龍のあご下へとやってくる。

 それに対し、神龍は頭だけを真下に向けると灼熱の炎を思いっきり吐き出した。

 直撃していないのにこの場の空気を全て燃やし尽くすような炎。

 〈真水の羽衣〉がなければ確実に焼け死んでいただろう。


「破断の水刃」


 真上に向かって薙ぎ払うように大剣を振るった。するとその大剣の振りから巨大な水の斬撃が放たれる。

 その斬撃は吐き出される炎に直撃すると一気に蒸発して、自分の周りに深い霧を発生させる。


「薙ぎ払ってくれる――――アアアアア!」


 神龍は右手で思いっきり霧を薙ぎ払い、かき消していく。

 だがその時にはすでに俺は右肩近くの神龍の首元へと現れると雷を纏った大剣を投げ飛ばす。

 その大剣は神龍の首へと突き刺さり、体を一瞬だけ硬直させた。


「戦わなすぎて鈍ってるみたいだな」


 そこに俺は空中に魔法陣の足場を作って蹴る。そして神龍の胸の中心へ近づいていく。


魄動衝波(ソウルインパクト)


 左手を神龍の胸へと触れる。そして、左腕を犠牲にして強烈な浸透魔法の一撃を与えた。

 触れた手を中心に波紋を作っていくように揺れていく。

 その一撃に神龍は血を吐いたのか俺のすぐ近く大量の紅い滝が流れ落ちていく。


「舐めるな!」


 神龍は頭を縦に振るとそのあごで俺を攻撃した。

 それを俺は咄嗟に反応して避ける。


「がはっ!」


 だが連続で続いていた左手の攻撃には対応しきれずに直撃―――――雲の床をボールのようにバウンドさせながら転がっていく。


 意識が朦朧(もうろう)とする。視界が霞み、やたらと熱い息を吐く。

 左腕は自分で破壊してしまったし、そこからも体のあちこちからも血が流れでていく。

 どうやら血を流しすぎたみたいだ。


 不味いな。これはかなり不味い。

 あの攻撃で俺が想定していたよりも数秒早くに復活しやがった。

 おかげでこっちは満身創痍。一方、相手はまだ行ける様子だ。


 俺の力は足りなかったのか? もう少し力をつけて挑みにくるべきだったか?

 いや、そんなことはどうでもいい。もうここまで来たんだ。

 夢を叶えるためにここに立っているんだ。そのことを忘れるな。


 すると神龍は右手で首に刺さった大剣を引き抜くとその剣を俺に向かって投げた。

 その大剣は風切り音を立てながら俺の数メートル手前に刺さる。

 まさかわざわざ武器を返してくれるとは......


「貴様は強い。それ故に武器が無くなったからというしょうもない理由で勝ちたくはない」


「俺がお前に勝つとしてもか?」


「然り。それが()()というならば甘んじて受け入れよう」


「定め......か」


 思わず呟いた。そして、思い出すは変えたい忌まわしき過去の記憶。

 だとしたら、定めを受け入れられない俺はさぞかし甘ちゃんなのだろう。


 だがそれが俺だ!


「いくぞ、神龍!」


 神龍は爪を立て構える。


「こい、人間!」


 俺は剣を右手で担ぐようにして構える。


 そこから―――――五時間の死闘が始まった。


 俺の使えなくなった左腕がちぎれ、血反吐を吐こうとも戦い続けた。

 体はもうとっくに限界を超えていた。だが、それでも立ち上がった。

 譲れないものがあった。どうしても叶えたいことがあった。


 俺は恩人を助けたい。あんな悲劇を起こしてはいけない。

 だからこそ、戦い続ける。


 戦った先にはきっといるだろうから。


 ――――――そしてついに、決着がついた。


「我の負けだ」


 神龍は雲の地面に這いつくばりながら、弱った目で俺を見る。


「俺の勝ちだ。さあ、俺の願いを聞いてもらおう」


 俺は神龍の目の近くに折れた大剣の先を突き立て、そう聞いた。

三話目は20時です。

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