第15話 魔法特訓
読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)
ユリス君は大体感動してますね
「どうかな! 僕の新たな姿は!」
「おー」
俺はベンチに座っているリーゼルの調子乗って形容詞がたいポーズを決めている。
そんな明らかに今までと不自然な俺に触れることなくリーゼルはパチパチパチと感嘆な声をあげながら拍手してくれた。
なんという心優しき御仁!! やはり俺の目には狂いはなかった!
とはいえ、リーゼルの表情の変化はやはり乏しい。相変わらず蒼のジト目である。
だがその雰囲気からはなんとなく「良かったね」と言う感じが伝わってくる感じである。
まあ、俺だからかもしれないが。
するとリーゼルは少しだけ哀愁を見せるようなシュンとした感じで顔をうつむかせる。
こういう感情は他に比べればハッキリしている。少しだけ八の字眉になっているのがその証だ。
とはいえ、どうしてそんな顔をするのだろうか......と気づかないほど俺もバカじゃない。
原因は俺の体形だ。
「あのプニプニはもうないんだね......」
「.......なんかごめん」
リーゼルは自身の横に置いてあった袋からパンを一つ取り出すと両手で掴んで感触を確かめるように少しだけ揉んだ。
だがやはり違うようでただゆっくりと顔を横に振っていく。
そんな顔をしないでくれ。これも全てリーゼルのためなんだ。
「少し触るね」
確かに今の俺はダイエットに成功してスリムボディだ。もっと言えば腹筋は少し割れ目が出ている。
だからリーゼルのお気に入りだったあの脂肪の感触はもう味わうことは出来ない。
けどやっぱし男たるもの体は筋肉美であるものだと思うし―――――ってちょちょ、リーゼルさん!?
「な、何を!?」
「触るって言った」
俺が気が付いた時にはリーゼルが俺の制服をめくってさわさわしている。
なんとかシャツ一枚越しからの触りだが、それでも指先に少し尖った感覚が妙に意識して感じてしまう。
まずい、他に神経を集中させなければ―――――ってそうじゃない! 早くやめさせないと!
俺は左手で掴んでいる俺の制服をリーゼルから引き離すとわずかに距離を取る。
一方で、リーゼルはキョトンとした顔をしているが本当にわかっていないのだろうか?
俺でさえ触られて心臓が爆散するんじゃないかという気持ちに襲われているのに他の男子だったらどうなるのか!?
リーゼルはわかっていない。他の男の縄程度で押さえつけている本能というやつを。
あんなの俺のような鉄の意志じゃなければどうなっているか(※ユリスがそう思っているだけ)。
きっと嫌がるリーゼルをあの手この手で襲いかかるだろう......理性の皮を被ったケダモノ達め! 傷一つでもつけてみろ! 死よりも恐ろしい目に合わせてやる!(※ユリスがそう思っているだけ)
俺が心中だけでそんなことを思っているとリーゼルはパンを一口食べてから話し始めた。
「(ゴクン)......ユリス、今日は伝えたいことがあったの」
「伝えたいこと?」
俺は身なりを整えるとその言葉に頭を傾ける。
リーゼルの伝えたいこととは何だろうか。そもそも呼び出した理由すらはっきりしない。
俺はリーゼルから呼び出されてここに来たのだ。
だがそれは逆に言えば、これまで全然かかわっていなかったということになる。
なぜなら俺は正史通りに動くためには、動かすためには俺自身からリーゼルに話しかけるという行為自体してはいけないのだ。
だからまあ、これは過去にはなかったことなのでどんなことが起こるのか全く分からない。
まあ"好きな人が出来たぐらいなら血涙と血を吐くぐらいで我慢できるけど、ただその相手については性格、能力はもちろん、家柄、将来性、趣味や体のほくろの数に至るまで調べたうえでゴーサインを出すか決めるが。
「ユリス、魔法苦手だよね? 私が教えてあげよっか?」
「え?」
俺は突然の発言に思わず驚いた。
この言葉は俺のもう一つの心の転換期とも言える言葉であったからだ。
聞いた言葉が心の中で反芻されてその心地い余韻に浸っていく。
胸が熱くなる。体が火照ってくる。
だがずっとその気持ちに浸っているわけにはいかない。
この言葉は同時に俺にとってチャンスであるからだ。
ここまでの流れは全く違う。だがこの言葉は確かに過去にもあった出来事だ。
そして俺はこの言葉に従ってリーゼルから魔法を教えてもらった。
つまりはまだ流れを戻す余地があるということだ。
「ほんとにいいの?」
「ん、ユリスは才能があると思うの。だからそのままにしておくのはもったいなかって」
「......そっか、ありがとう」
俺は込み上げる嬉しさを抑え、出来るだけ平静を装って答えた。
するとリーゼルはベンチからピョンっと勢いよく立ち上がると不意に俺を蒼眼でジッと見た。
え、え!? 俺、何かしたか!? もしかして今ので何かバレ――――――
「ユリスって意外と小さいね。私とほぼ同じか、少し私の方が高い?」
「.......」
リーゼルは俺の正面に立と手で俺と自身の背を比べ始めた。そして愛らしい顔で尋ねてくる。
だがな、リーゼル。それは言っちゃダメだ。そんなことをリーゼルに言われると心折れる。
「ぼ、僕はまだ発展途上だから......触れないで」
「いこっか。ついてきて」
「無視!?」
リーゼルは袋をヒョイっと持ち上げると軽快に歩き始める。
その後ろ姿を僕は心臓のある左胸に両手を当てながら見つめていた。
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「まずユリスは使える魔法を弱めの威力で出して」
「こうかな?」
俺は左手で右手を支えるよう掴むと上に向けた手のひらからつむじ風の最弱程度の風を出現させる。
まあ簡単に言えば木の葉一枚か二枚ぐらいを巻き上がらせる程度だ。
その風を見たリーゼルが俺に新たな指令を出してくる。
「その大きさで出力だけ大きくして」
出力......要するに現在瓶サイズのつむじ風を大きさをそのままに威力だけを竜巻に変えろと言っているようなものだ。
もちろん今のは極端な例だが、過去の俺からすればこの表現はきっとずっと正しかったように感じる。
俺はリーゼルの指示通りにその風に魔力を込めていく。
だがそれは今はまだ成功してはいけない。なのでわざと膨張させる。
すると俺の瓶サイズのつむじ風は威力をそのままに大きさだけ椅子ほど大きさまで変化していく。
それ見たリーゼルはズバッと告げる。
「違う。それを圧縮するように意識して」
「は、はい!」
俺は手のひらで風をコントロールする一方で、余力で額に汗をかいたようにバレない程度に空気中の水分をかき集め顔に付着させる。
そして俺はだんだんと疲れてきたような表情をさせて右手の上にある風の力を散らしていく。
それからペタンと落ちるように尻もちをついた。
「ご、ごめん、何も出来なかった」
「問題ない。もともと魔力練度を知らなったようだから。次からはそっちを教える」
よっしゃあ! 確約ゲット! とまあ知ってたけどね? こういうのってやっぱり嬉しいものじゃん?
それはともかく、思えば俺が魔力練度という言葉を知ったのはリーゼルからなんだよな。
そう考えるとリーゼルに教えた方もいるわけで......そもそも魔力練度自体マイナーな考えだから知っている人自体少ないんだよな。
大体どいつもこいつも強い魔法は上級魔法、特級魔法ばかりだと思ってそればっかりを求めやがる。
まあ実際間違ってるわけじゃないから強くは言えないが、そういう魔法って大概は攻撃範囲が広いもんだ。
いわば殲滅魔法とも言い換えられるそれは近距離戦だと非常に弱い。
すると手数で勝負したくなるが、相手が魔力練度高めの魔法を撃ったら一発で蹴散らされ最悪一撃で死ぬ。
けどそれが広まってないのが今の現状なのだが......リーゼルは知ってるんだな。やっぱり意外に感じる。
俺は立ち上がるとリーゼルに告げる。
「今日は教えてくれてありがとう。またよろしく」
「ん、よろしく」
僕はリーゼルに握手を求めるとリーゼルはそれに答えてくれた。
よし、これで設置完了。
「それじゃあ、僕は少し用があるから先帰るね」
そういって俺は走り出し少し後ろを振り向きながらリーゼルに手を振っていく。
そして見えなくなると俺はスッと緩んだ頬を元に戻し、感情のない瞳へと切り替えた。




