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第13話 放課後デート#2

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)

「僕はたまたまベンチでいた時に話しかけられただけだよ。その内容は最初のランキング戦のこと」


「ん、嘘はついていない目だね」


 リーゼルは俺に差し向けていたチュロスを口元へ運んでいくとそう告げながら食べた。

 一方、俺はその疑いの目線に精神力がゴリゴリと削られていく。

 ま、まさか、リーゼルに疑われているというだけでこんなにもダメージを負っていくことになろうとは......。

 さすがと言うべきか、俺がおかしいと言うべきか。


 だがやはり下手に嘘をつくのを避けて良かったな。

 俺が単純に嘘が下手というのもあるが、リーゼルの前ではあまり嘘をつきたくないという気持ちになってしまう。

 だから情報量を減らして伝えるというのは間違っていなかったな。嘘はついていない。


「それで―――――ルミナさんが何て言っていたか聞いてもいい?」


「一人称が違うだとか、実力はあんなものじゃないとか、ランキング戦は偽りだとか、体形がだらしないとか」


 おいあの女、体形のことは余計だろ。それに随分と好き勝手に言ってくれてるじゃねぇか。

 俺の禁則の魔法陣にギリギリ触れない遠回しな言い方をしやがって。

 それで相手―――――この場合リーゼルだが―――――が察してそっちから話題を振ったならば俺の禁則の範囲外だ。

 一番大事な過去戻りとリーゼルが死ぬという歴史以外の秘密はあらかた漏れ出てしまう。


 あの女め......俺の魔法陣の微妙な隙を突きやがって。

 禁則を「こんなもんで十分だろ」と甘くした俺も悪いがまさかリーゼル本人に俺の正体を明かすように仕向けるとはな......。

 

 ......ん、待てよ? とすると、あの女は俺がリーゼルに何かする気だと気づいているのか? 一体どこで?

 少なくとも俺はバレないように正史通りに接触を避けてきたはずだ。なのにバレた。

 いや、これは俺の考えすぎか? ただ自分よりも答えやすいだろうリーゼルを俺に差し向けて情報を探らせようとした?

 そこまでして俺の目的が知りたいのか? まさかあの女が友達であるリーゼルを使ってそんなことをするとはな。

 どうにも考えづらいが否定も出来ない話だな。


 現在も絶賛食事中のリーゼルはそういう駒のように使われていることに気付いていないのか?......あの美味そうに食べる感じは気づいてないかもな......。


「ねぇ、リーゼル」


「ん?」


「もしかして、僕とこうして今過ごしているのはルミナさんにそうするように言われたから?」


 俺は唾を飲み込む。

 やけにその音がはっきり聞こえる。それだけリーゼルの言葉に耳に意識を集中させているということなのだろうか。

 そして俺の問いに対し、リーゼルは咀嚼(そしゃく)していたパンを飲み込むと告げた。


「違うよ。ただこうしてみたかっただけ」


 だよな! いやー、やはりリーゼルを疑うのは間違っていたな。うん、自省もんだなこれは。歴史を振り返ればそんなことあるわけなかったし。


「そ、そっか」


 なんかこんなにもハッキリ言われると恥ずかしいな。

 にしても、リーゼルが俺のためにこんなことをしてくれるとは......あれ、どうしてだろう......嬉しいを通り越してなんだか涙が出てくる。


 どうしてだ? どうしてこんなにも目頭が熱く感じてくるんだ?

 .......あ、そうか。思い出が現実になったからだ。


 自分の心が救われる前の、自分が自分の変わっていく心に気付く前のいわば原点。

 そして何より生きていると感じる。

 とはいえ、ここで泣いたら不自然だ。ここは我慢しなければ。


 するとすぐ近くから声や魅惑的な髪の匂いが漂ってくる。

 夕焼けをバックにしたリーゼルは銀紙を一部夕焼け色に染めていた。

 いつもの蒼眼のジト目が今だけは髪と同じようにオレンジ色に染まっていく。

 背中から刺す陽の光によって影が僕の影に被るように縦に伸びていく。


 そう生きているんだ。


 俺がいつも思い出すリーゼルは結局は俺の記憶の中にあって声も匂いもこんなにもしっかりと感じることはなった。

 ずっとずっと求めていたリーゼルがここにいる。生きているリーゼルがここにいる。

 それだけで俺の胸はすでに嬉しさでいっぱいだったのだ。


 今はさながらリーゼルの言葉に嬉しさの感情が溢れ出てしまったという所だろうか。

 全く歳は取りたくないものだ。


「ん? どうしたの?」


「なんでもないよ。このチュロスが美味すぎて」


 俺は誤魔化すようにチュロスを食べていく。

 明らかに雑な誤魔化し方だが、リーゼル的には「食べ物が美味しい」というのはグッドな言葉だったらしく袋からさらにパンをくれようとした。

 だが俺はさすがに受け取らなかった。そこまでしてリーゼルにこれ以上の施しを受けるのは―――――


「食べないんだ......」


「いいえ、食べます! 丁度お腹が減ってきました!」


 そんなシュンとした顔をリーゼルにさせるわけにはいかない! ダイエットの件は今は後回しだ! リーゼルに悲しい思いをさせるな! 食え、食うんだ俺ぇ!


 俺はリーゼルからパンを受け取ると躊躇いもなく噛り付いていく。

 その勢いが良かったのかリーゼルはキラキラした瞳をしながら「もっと食べる?」と袋からさらにパンを差し出してきた。


 しかも俺がベンチでリーゼルと出会ってから全て違うパンだ。一体いくつ買っているのだろうか。

 それに今こうして俺がパンを食いながらさらにパンを与えられている状況はなんとも餌付けされているみたいだ。

 まあ、リーゼルに餌付けされるのならば快く快諾するのだが。

 にしても.......


 俺はリーゼルの体をチラッと見る。

 リーゼルの体は一言で言えば華奢だ。だが、全体的なバランスが整っていて胸も大きすぎることも、小さすぎることもない。

 それに時折通り過ぎる人達を魅了していたスラッと伸びた白くきめ細やかな肌の脚。

 からの黒い膝までのソックスと短いスカートによって出来上がる太ももが強調される絶対領域。


 別にエロい目で見ているわけではないが―――――むしろ尊過ぎて見れないが―――――客観的に見ても細身であることには変わりない。

 なので前から疑問なのだがリーゼルは一体どれほどの食欲魔人なのだろうか。

 先ほどから明らかにたくさん食っているのにお腹が全然減っていない。


 もしかして、俺みたいな太り予防の魔法とかを知っているのだろうか? いや、あれは俺が痩せやすくするために作りだしたオリジナル魔法だし......


  すると俺は考え事もあってか随分とリーゼルの体へと目線を向けていたらしく不意にリーゼルからの視線を感じた。

 俺はその視線に恐る恐る合わせていくと身をよじらせたリーゼルが俺に告げてきた。


「えっち」


「~~~~~っ!」


 がはっ! な、なんという恐ろしく卑怯な言葉なんだ!

 リーゼルはほとんど照れている様子もなく―――――少しは頬を赤らめているが―――――相変わらずのジト目なのだがそれでもその顔でその言葉は卑怯だ!

 恐ろしく卑怯で可愛いじゃないか!


 く、クソ......リーゼルから聞けるとも思ってなかった言葉に思わず尊死しそうになったぜ。言葉だけのでこの威力!! なんて恐ろしい子なんだ(※そう思っているのはユリスだけ)。


「ふふっ、まだ時間はあるよね?」


 そう言うとリーゼルは軽快に歩き出す。

 そんな後ろ姿を見て俺は思わず優しい笑みを浮かべながらついていった。


 ******************************************************************


「クソ、クソクソクソ!」


 僕は思わず地団駄を踏んだ。

 通りでたまたま見かけただけだが、今は路地裏から隠れて僕の愛しの人と醜きブタを眺めている。

 どうして! どうしてあいつばっかりが彼女の近くにいるんだ! おかしいおかしいおかしい!

 気が狂いそうだ。何もできない最底辺の弱者でゴミブタ野郎のくせに! どうして僕のリーゼルにお前のようなうじ虫がいるんだ。


 僕は思わず髪を掻きむしるように頭をかいていく。

 せっかく弱者を抜け出せたと思ったのに! 媚びへつらってまで気に食わない金髪野郎につき従っているのに! どうして僕にリーゼルが振り向いてくれないんだ! どうしてあおのゴミブタ野郎ばかりに行くんだ!


 他の実力者ならよくわかる。僕だって底辺の人間だ。身の程ぐらいわかっている。


 なのに!


 どうしてわかってないあいつばかりに僕の愛しのリーゼルと話しているんだ! 気に食わない! とても気に食わない!


「なら、どうにかする方法があるけどどうするのかしら?」


「だ、誰だ!?」


 不意に僕の後ろから女性の声がした。その妖艶な声から恐らく僕より年上だろう。

 ただ顔は深くフードを被っていて見えないし、全身も長いロングコートで覆っているためよくわからない。


「誰と言われると困るわね......ただ今の状況から言えばさながら恋のキューピッドと言う感じかしら?」


「僕に何する気?」


「何もしないわよ。ただあなたがあの邪魔者を排除したい、もっと力を示したというのならいい話があるのだけど聞く?」


「な、なんだ?」


 僕は怪しい話だとは思った。だがそれ以上にあのゴミブタ野郎をどうにかできるならそれが良いとも思った。

 だから聞いた。これが吉と出るか凶と出るかはこの際どうでもいい。


 邪魔者を排除できるなら、聞く価値はある。


「なら、少しお時間いただくわよ?」


 そう言って僅かに見える口元は僅かに歪んだ。

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