厳冬のドングリ
誤字報告して頂き、厚く御礼申し上げます。
お手を煩わせ、本当にありがとうございました。
藤乃 澄乃様から素敵なイラストいただきました。後書きに掲載してますので、温かいふれ合いのシーンをどうぞ。2020.2.22
リスのアリスは冬眠ができませんでした。
みんながドングリを集めている間にアリスはずっと遊んでいました。
仲間たちは冬眠して傍にいない。木に空いてる穴でアリスは寒さに震えています。
来年からはちゃんとドングリを集めようとアリスは思いました。
でもこのままではアリスに来年はやってきません。
お外は白銀の世界、時々木の枝に積もった雪がこぼれ落ちきます。
穴の縁に頭を乗せて、お腹が減ったアリスはぼーっとしています。
お外にはもうドングリがありません。ほかに食べられそうな物も見つかりません。
アリスは遊んでいた自分を叱りたかった。
でも食べ物がいっぱいの秋はもう過ぎ去りました。
ぼんやりとする意識の中、雪の中を歩く女の子を見かけました。
仲間たちがドングリを集めているときに森で見かけた女の子です。
ドングリを取っていく泥棒と仲間たちが怒っていました。
それなら食べたほうが勝ちとアリスは思っていました。
その女の子がぼんやりと眺めているアリスの前にやってきました。
なにかしゃべっているようだけどアリスにはわからなかったのです。
アリスは女の子に捕まえられて、食べられてもしかたないと思いました。
アリスには逃げる気持ちも力も残っていません。
懐かしい匂いが漂ってきます。ドングリの匂いが鼻の先にあります。
アリスは女の子が差し出したドングリをいそいそと食べ出しました。
来年の秋になったら真面目にドングリを集めます。
来年の冬になったらちゃんとみんなと一緒に冬眠します。
アリスがそんなことを思いながら、ドングリを食べていることを女の子は知りません。
引き出しいっぱいのドングリを森に捨ててきてとおかあさんに言われました。
女の子はドングリを捨てに森へ来ただけでした。
袋いっぱいのドングリを木の下に置くと女の子は家へ帰りました。
アリスは袋にあるドングリを頬袋いっぱい咥えて、木にある穴へ入れていきました。
これだけのドングリがあればアリスは冬が越せそうです。
お腹いっぱいになったのは久しぶりです。
眠たくなったのも久しぶりです。
うつらうつらと眠たい目を閉じて、リスのアリスは夢を見ようと思いました。
春になったらお花畑に咲くお花を女の子に贈ろうと夢を見ましょう。
夏になったら虫をたくさん捕まえて女の子に贈ろうと夢を見ましょう。
秋になったらドングリをいっぱい集めて女の子に贈ろうと夢を見ましょう。
遊び好きなアリスには来年の夢ができました。
今はもらったドングリで厳しい冬を生き抜くんだとアリスは眠っています。