2、私は(貴方は)いったい誰?
私が立っていたのは、なぜだったかしら。交差点の中央に立ち、せわしなく動く世界を緩慢な動きでずっと見ている。しかし、いつになっても私の交差点を通るものは現れない。
いつから、ここにいるのだろう。いつまで、ここにいなくてはならないのだろう。私の問いかけに応じてくれる人影も、今ではもう見えなくなってしまったのに。私だけが、この世界から切り離されてしまっているのに。じりじりと照り付ける太陽の下で私は永遠に待ち続ける。
誰を?(私を)誰を?(貴方を)
私が誰だかわからない。せめて、この顔を映す水面でもあればよかったのに。私だけが取り残されてしまった世界では、どんな願いもかなわないの、ええ、絶対に。
あたしは誰を待っているの?(きっとあの人を待っているのです)俺は誰を待っているんだ(もう一人の自分、とでもいえばいいのでしょう)僕は、どうすればいい?(貴方は待ち続けるだけでいい)
口を開くことも無い。体を動かす必要もない。きっと私は死んでいるのだろう。
もうすべてをあきらめなくてはならないのに、すべてをあきらめられなくてまだここにいる。
自分だって知っていたはずだ、自分がこの世界には必要のなくなってしまった存在だということを。
今の自分の心のよりどころは、自問自答の返答だけだから。
「私は(貴方は)いったい誰?私は(貴方は)私なの?貴方は(私は)いったい誰?貴方は(私は)……」
私は(貴方は)貴方(私)、貴方は(僕は)僕(貴方)。あたしは(貴方は)私で(私で)俺でもある。
「その通りです」
最後の声を発したのは、私だっただろうか。それとも……