2度目の邂逅
獣道は山頂の方へ伸びている。手前の草を掻き分けて足を踏み入れた。
日本では森になんて入ったことがないので知らなかったのだが、涼しくて心が洗われる。
なるべく静かに警戒しながら進んでいくが、会いたいと思うとなかなか会えないゴブリン。
いや、いたっ!!30mぐらい先にゴブリンがいた。
剣を構えるが手汗が凄いことに気づくぐらいには冷静でいる。
どうやるかはもう決めている。
身を隠し、息を殺し、半分這う様にして近づいていく。
残り20m、トーチの限界射程までもう少しというぐらいまで近づいたがまだ早い。もう少し近づいて、ゴブリンを挟んだ向こう側にトーチを出現させたい。
さらに1〜2m近づいた・・・。
「・・・パキッ」
素人がどんなに気をつけても、音を完全に消すのは難しい。小枝を踏んで、乾いた音が少し響いた。
「・・・ギキャ?」
ヤバイっ、ゴブリンが立ち止まって周囲を警戒しだしたっ!
ゴブリンまで推定17〜18m。ゴブリンの向こう側にトーチを出現させて後ろから剣でっていうのが計画だったんだが・・・仕方ない・・・。
俺はとりあえず身を隠し、自身とゴブリンの中間地点にトーチを出現させた。
「ギキャ・・・ガクッゴ・・・?」
ゴブリンがトーチに気付いたみたいだ・・・。
今回のゴブリンは1匹で、手に錆びた剣を持っている。小走りで近づいてきたゴブリンは、その剣でトーチをツンツンしているが、木の棒とは違いトーチの炎が燃え移ることはないだろう。
ゴブリンとの距離が10m前後になったことで、ゴブリンの向こう側、ゴブリンから5mの場所にもう1つのトーチを出現させた。
そして最初のトーチを消すと、ゴブリンは後ろからの光でもう1つのトーチに気づく。
ゴブリンが後ろを振り返った!!
今だっ!!最初はなるべく気配を消しながら、ゴブリンとの距離が5mを切ると全力で近づく!
剣を振りかぶった瞬間、こちらの接近に気づいたゴブリンが振り返った。
目が合ったっ!!かまうなっ!!
「くらっ!!!」
ゴブリンの首に剣の刃が半分ほど入った。
剣の根元に近い部分が当たったので半分ほどで止まったんだろう。
ゴブリンが剣を掴もうとしたので、そのまま押し切る様に剣を薙いだ。
ゴブリンの首から赤黒い液体が飛び散りる。
「ギッ・・・ガァーッ!!!!!・・・ァア・・・」
ゴブリンの悲鳴が、鳴り響いたが直ぐに止んだ。
「ハァ・・・ハァ・・・」
ゴブリン発見から10分ぐらいしか経っていないにもかかわらず物凄い疲労感だ。
達成感が強いせいなのかわからないけど、生き物を殺した嫌悪感はないな・・・。
耳を切るのはちょっと気持ちわるいが・・・。
その後も単独のゴブリンを2匹同じ手順で計3匹殺した。
3匹目を殺した瞬間、ピコンッとなったので討伐証明部位を切り取った後、ステータス画面を開いた。
カナメ・クロサキ
種族:人族
職業:なし
称号:なし
16歳
レベル:3
HP:318(320)
MP:390(450)
攻撃力:440(320+120)
防御力:400(320+80)
素早さ:300(330)
魔力:450(450)
器用さ:350(350)
運:100(100)
<固有能力>
「好転」
<スキル>
トーチ:Lv2(聖火:Lv:1)
回復:Lv2(ヒール:Lv1)
アイテムボックス:Lv2
鑑定:Lv2
翻訳:Lv2
<加護>
女神の加護:Lv10
<獲得可能職業>
剣士:Lv1 幻惑士:Lv1
<獲得可能スキル>
隠匿:Lv1
<獲得称号>
リトルハートゴブリンキラー
スキルポイント250
ステータスは均一に変化する訳ではないみたいだな。
スキル説明は、
トーチ:Lv2(トーチを出現場所から移動させたり、一定の距離を保って移動できる様になる。聖火:Lv1 を覚える
聖火:Lv1 (魔物が嫌がる炎を出現させて1〜3時間の間、一定空間を安全地帯にする。強力な魔物には効かない場合もある)
アイテムボックス:Lv2(Lv1より多くの物を出し入れできる。具体的には3mの正立方体の収納スペースに収納できる。収納した物の時間経過が遅くなる。
鑑定:Lv2と翻訳:Lv2はそれぞれの強化みたいだな・・・。
あとは、<獲得可能職業>か、
剣士:Lv1(剣の扱い・剣での攻撃に補正がかかる)
幻惑士:Lv1(惑わせる戦いにおいて幻惑率に補正がかかる)
んー、よーわからん。
ここは王道の剣士だな・・・。
剣士をタップするとスキルポイントを100消費する様だ。
えいっ!!思い切って剣士を獲得する。
隠匿:Lv1はスキルポイント10必要みたいだが・・・えいっ!・・・とっちゃった。
あとは<獲得称号>?獲得可能ではなくもう獲得しているということか・・・。
リトルハートゴブリンキラー(ゴブリンに対して僅かに攻撃力が上がる)
これは・・・付けないでおこう。命のやり取りの世界で少しでも攻撃力があがるなら絶対つけるだろっ!って言う人もいるだろうが・・・俺は付けない。だって嫌じゃん?プライドの問題ですよ・・・。
・・・さっ、最終的なステータスはこうなる。
カナメ・クロサキ
種族:人族
職業:剣士Lv1
称号:なし
16歳
レベル:3
HP:318(320)
MP:390(450)
攻撃力:440(320+120)
防御力:400(320+80)
素早さ:300(330)
魔力:450(450)
器用さ:350(350)
運:100(100)
<固有能力>
「好転」
<スキル>
トーチ:Lv2(聖火:Lv:1)
回復:Lv2(ヒール:Lv1)
アイテムボックス:Lv2
鑑定:Lv2
翻訳:Lv2
隠匿:Lv1
<加護>
女神の加護:Lv10
<獲得可能職業>
幻惑士:Lv1
<獲得称号>
リトルハートゴブリンキラー
スキルポイント140
ステータスをいじったあとなんとか夕方までにゴブリンを10匹倒した。
少し楽にゴブリンを倒せる様になったし、身を隠して近づくのも気付かれにくくなったのかな?ってくらいの変化はあった。
そこそこ満足して街に帰り討伐証明部位を出して大銀貨1枚を受け取った。
「・・・えっ?魔石?魔物の心臓部にある?」
しらんがな・・・。
「どこの田舎者だ・・・。いや、田舎者でさえ知っとるわぃ。えぇ服きとるからどこかの貴族様の三男ってところか・・・。まぁいいわぃ、次からは魔石も取ってくるんじゃの」
魔石はそこそこの値段になるそうだ。依頼料よりも魔石の方が高額になる場合もあるとのこと。
ちょっと凹みながら宿屋まで戻って来た。
夕食にはギリギリ間に合ったみたいで良かった。
水桶に手縫いを浸し、体を拭いてその日は直ぐに眠ってしまった。