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チート?いいえトーチです  作者: 取手名
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新話

エウリュアレーが言ったこの世界が地獄だという言葉・・・それが頭の中でリフレインする。

俺にとっては自由に生きて、そこそこの冒険と綺麗な女が居るこの世界は天国と呼んでいい。

それが、エウリュアレーには地獄に見えるのだ。


ATHENAの箱庭・・・ 造られた英雄を地球と隣接する世界で管理する場所。

よくわからない、アテナって確か勝利の女神的なやつだったかな?あまり詳しくはないが、確かゼウスの娘で英雄を手助けして戦争を勝利に導いたはずだ。

そのアテナの箱庭なのか?


反芻するうちにどうやら王都アモスの冒険者ギルドに着いたみたいだ。

無言のままオーガマの所に行く。

幸い夜と呼べる時間帯なので、それほど多くの冒険者はいない。

おかげでスムーズにオーガマと対面できた。


「どうしたの?難しい顔しちゃって〜」


「アゴは割れてないけどな・・・」


「関係ある?ねぇ?難しい顔ってアゴ関係あるのっ?」


「すまないが、部屋を借りたいんだが」


「いいわよ。二階の<水の間>を使いなさい。話しは通しておくわ」


相変わらずフラットなオーガマさんだ。


さて、ギルドには依頼人と交渉したり、公に出来ない情報を報告したり、はたまた大規模な作戦の戦略を練る為の部屋がいくつかある。


部屋が空いていれば無料で貸してくれたりするのだ。

今回はその内の一つ、<水の間>に全員で入る。

全員といっても双子は屋敷に帰した。


「・・・で?」


「そんなに身構えないでいいわよ?」


「・・・・・」


「はいはい、わかったわよ。お前を殺さない理由よね?それはね、お前の能力が目当てよ」


「!!?俺の能力だと・・・」


なんだ?俺の能力?エウリュアレーは、ダロン初級ダンジョンの最下層にいるエキドナの封印を解こうとしていた。

誰も解けない封印・・・解けるとしたら俺の固有能力<好転>。

だけど、どこでその事を知ったんだ?アイリス達が漏らすとは考えにくい。


「どこで知ったんだ・・・・そう言いたそうな顔ね?女神から聞いたのよ」


「女神?」


「はぁ、いいわ。最初から説明してあげるわ」


エウリュアレーは億劫そうに話し始めた。


まず、女神とはあの女神だ。

転移した最初の白い空間にいて、俺にスキルを与えたあの女神。

名前が無い女神だそうで、ただの女神らしい。


「アテナの箱庭の意味は説明したわよね?」


エウリュアレー曰く、アテナの箱庭とは、英雄製造管理システム。

俺はあの日、召喚転移したらしい。

だが、転移直前にトラックに轢かれ死にかけた。

それにより、アテナの箱庭は英雄足り得ないと判断し、俺をロストした。

それを女神が助けて今に至ると・・・。


女神の目的は名前を取り戻す事。

その為にエウリュアレーに協力しているという。

取り戻したい名前は<パラス>。

そして、エウリュアレーと女神の目的達成の為にはエキドナが必要。

つまりは俺の<好転>が必要。

だから俺は殺されていないと・・・。


うん、よくわからないがまぁいいだろう。

協力してもいい、だが・・・。


「その女神に会えないか?お前が言っていることが本当かどうか確認したい」


「ん・・・どうかしら・・・そこの女達を1匹づつ殺していく方が手っ取り早いかも・・・」


「なにっ!!」


(その必要はありません)


脳内に言葉が響く。

気がつくと、周りは一面の白。


「お久しぶりですね、カナメさん」


あの女神だ。


「あぁ、久しぶり」


「カナメさんをこちらに留めておくのも時間制限があるんです。色々とお話しがあるとは思いますが、まずは少し昔話をさせて下さい」


「・・・・わかった」


女神は目を軽く閉じ、息を吸い込み瞼を開いた。

数巡後、話し始める。



〜女神〜


農耕の神クロノス、彼は自分の父の性器を鎌で切り取り追放する。

呪いはここから始まった。

クロノスは地母神ガイアに予言された。


「お前もまた、自分の子にその地位をうばわれるだろう」


クロノスは自分の子を次々と飲み込む。

だが、そのクロノスから唯一逃れたのがゼウス。

ゼウスは予言通りクロノスを追放した。

だが、ゼウスもまた予言を受ける。

それは、最初に母に似て智慧と勇気を持つ娘が生まれ、次には傲慢な息子が生まれる。そしてゼウスの王権は再度、彼らによって簒奪されるだろうというものである。

ゼウスはこれを恐れ母もろとも子供を飲み込む。

しばらくして、ゼウスは頭痛を感じてヘファイストスに頭を切開させる。

そうしてゼウスの頭から生まれたのがアテナだった。

いや、アテナ・システムだったのだ。


アテナが誕生した瞬間、宇宙は大きくよろめき、大地と大海は轟音を発しながら揺れ動き、太陽は軌道上で停止した。

それはそうだ、アテナ・システムという平行世界の誕生は多次元的な広がりを持つ。

ある意味、別宇宙の誕生に等しかった。


傲慢な息子ではなく女の子だった為、予言は外れたとされた。

だが、アテナこそがゼウスの傲慢な子であり、ゼウスの地位を剥奪した者だった。



「だいたいアテナの誕生はわかっていただけましたか?これはあくまでもエピローグ、これからが本番ですよ?」


「・・・・」


〜女神〜


アテナ・システムの目的は一つ。

神には殺されないという能力を持つギガース族を殺せる人間を作り出す事。

その為にアテナは、アテナの箱庭に英雄となり得る存在を召喚する。

そしてレベルアップさせるのだ。


半神半人のヘラクレースをステュムパーリデスの鳥退治させる際には、ヘーパイストスの作った真鍮の銅鑼を与えレベルアップさせ、ヒュドラの毒を付けた矢で敵を屠らせた。


半神半人のペルセウスのメドゥーサ退治の際には表面が鏡のように磨かれた盾を貸し与えた。

そして、そのメドゥーサの顔を盾に貼り付けて見た者を石に変える最強の盾にした。


また、ベレロポーンにペガサスを調教できる黄金のくつわを与えたり、オデュッセウスに助言をして妻に会わせたりしている。


だがこれは神のアテナ側からの一方的な理屈でしかない。

本当のアテナは自由奔放で非常に気が強く、プライドが高い。

傲慢そのものだ。


自分の神殿でポセイドンとメドゥーサがヤッたからといってメドゥーサを化け物に変えた。

それに抗議したメドゥーサの姉と妹もまた、化け物にした。

終いにはペルセウスに打ち取らせて顔を盾に貼り付け、極め付けはメドゥーサの子供であるペガサスをベレロポーンに洗脳させたのだ。

死んだ時の血まで利用される始末。

メドゥーサは踏んだり蹴ったりだ。


アラクネーはアテナと織物の腕を競った。

その際ゼウスの浮気癖を指摘した真実のタペストリーを作ったらしい。

それに激怒したのか、はたまた競争に負けた腹いせなのか、アラクネーにトリカブトの毒をかけて化け物にした。


これらには理由がある。

アテナ・システムの経験値にする為だった。

アテナによって化け物にされた彼女達はアテナの箱庭の中で、英雄に殺されてはリスポーンさせられ、また殺されるを繰り返しているという。

まさに地獄だ。



私はこのアテナの悪辣さに気づいてゼウスに進言しようとした。

だが察知されアテナに殺されて、あまつさえ名前まで奪われた。

名前とは神々にとってはアイデンティティであり、存在意義でチカラそのもの。


アテナは<パラス・アテナ>と名乗り、パラスの能力を吸収しました。

こうして力を得て、その後英雄という名前の兵士を養成したアテナは、地母神ガイアの予言通りにゼウスを殺して覇権を握ります。


エキドナもまたアテナの被害者の1人です。

エキドナの夫テュポーンはゼウスとの闘いの際、アテナの卑劣な罠にかかってしまう。

それによりゼウスに封印されてしまうのです。


今回なぜカナメさんの<好転>でエキドナの封印をといて欲しいかというと、エキドナの力によって反アテナ軍を作る為です。


エキドナは固有能力<同胞(はらから)>を持つ。

<同胞>は化け物と呼ばれる存在を生み出すことができる。

エウリュアレーはその力で姉メドゥーサを蘇らそうとしている。




「正直・・・情報過多だ。飲み込み理解するまで時間が欲しい」


「わかりました。脳内で呼びかけて頂ければ、簡単なやり取りぐらいは出来るようにしておきます。ではまた・・・」


「あぁ」



意識が戻ると、ギルドの<水の間>いた。

知らない神話だ・・・。

単純にそう思った。





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