ディペンド
3日後、太陽が真上に上がった頃、リリとルルを呼び出した。
「リリ、ルル・・・お前達の姉の事は・・・その・・・残念・・・だった」
2人共に俯いたまんまだ。
「お前達は今日まで良く働いてくれた。そこで提案なんだが、奴隷から解放しようと思う。それからコレだ、大金貨10枚ある好きな場所で自由に生きていい」
テーブルの上に大金貨10枚を置いた。
今持っている現金のほぼ全額だ。
「ご・・・主人様・・・は・・・」
「ルル達は必要ないなの?」
「違う違う、お前達は自由になれるってことだ。好きに生きていいっていう事だ」
そうか、そういう風に捉えるのだな・・・。
んー、どうするか・・・。
「必要無い訳はない。むしろ必要だっ・・・。んー・・・そうだっ!お前達さえ良ければ俺の養子にならないか?」
「ご・・・主人・・・様の・・・」
「おとこわりなの〜」
ルル、それを言うなら[お断り]な?なんか、股間がヒュンってなった。
「なぜだ?俺と家族になるのは嫌か・・・」
「違うの〜!ご主人様の子供になったらご主人様の子供を産めなくなるの〜」
「ご・・・主人様・・・の・・・子供が・・・欲しい・・・です」
「いやいやいや、ちょっと待て!自由になった方がいいだろ?」
って言うか、まだ12歳のガキが何を言ってるんだか・・・。
「自由・・・は、嫌・・・です」
「ルル達も奴隷としてアイリスちゃん達みたいにして欲しいなの〜」
お金もいらないと言い張るリリとルル。
正直別に構わない、上は年齢の倍、下は半分まで・・・つまり、32歳〜8歳まで行ける。
いるよね?なんかわからん正義感出して、若いからダメだとか、大人になったらとか、異性として見てない感じの勇者様。
アホなんだろうか?俺は違う。
が、何か引っかかる。多分日本、いや地球と言う星の価値観が未だに抜けてないのだ。
若い年齢だと正しい判断が出来ない?それがいけない事なのか?歳を取っても正しい判断が出来ず騙される人間などザラにいる。
親の保護下にある?リリもルルも親も頼るべき者もいない。なら問題ないのか?
そう言う問題でもない。
児ポ法だの何だの言っているが、昔の権力者達はそういうのがザラだった。
有名なところで言えば前田利家とおまつ、利家は30代だったかな?おまつは数え歳で12歳だったか、満年齢で13歳だ。それで結婚・出産までしている。
それから、張飛の嫁も確か13歳ぐらいだったはず。
ガンジーも13歳の嫁、ガンジーってあのガンジーじゃくて、インド独立の父の方のガンジーね?まーガンジーも13歳だったからセーフなのか?
それに中東では、現在でも強制的に若くして結婚させられることが横行している。年間1000万人越えだ。
あーだこーだと言って見たが、価値観なんてそれぞれなんだ。
食べ物がそこにあれば食べるだろう?眠くなるから眠るだろう。もっと本能的に生きることこそ、生物として正しい事だ。
理性や知識があるから人間なんだと言う奴もいる。
が、蛇にそそのかされて知識の実を食べたイブや、そのイブにそそのかされて実を食べたアダムがいる限り、人間は生まれながらにして罪を背負っている。
人は清廉潔白ではない。
強制された訳でもなく口にした知識の実の味は、それはそれは甘美なものだっただろう。
そうして得た知識や理性が正しいとも、ましてや正義だとは思わない。
ただ引っかかるのは、リリとルルが完全に依存している事だ。
まぁ、俺もアイリス達と共依存だから人の事を言えないが、それでも依存は視野を狭める。考える事を放棄させる。
それこそが嫌なのだ。
人としての本質を捨てる行為、それをさせてはならない。
「わかった、いいだろう。ただし、俺の気が向いた時だ」
「わかり・・・ました」
「はいなの〜」
「ただ1つ条件がある。常に考えて行動しろっ。自分達にとって何が1番幸せなのか、どうすれば幸せになれるのか。それを考え続けることが条件だ」
「難しいなの〜・・・」
「・・・わかり・・・まし・・・た」
これで、いい。
依存が軽くなる様に誘導していくしかない。
俺達は冒険者だ。
いつ死んでしまうかわからないからな。もちろん簡単に死ぬつもりなどないが・・・。
リリ・ルル問題が解決したので、王都の冒険者ギルドに向かい素材の買い取りを頼んだ。
レアな魔物であるスネークスパイダー討伐依頼などはなかったし、オーガ関係のも無かったので、素材の買い取りだけになる。
スネークスパイダーの鱗や牙は固く武器や防具に使えそうだったのでそれ以外を売った。
魔石以外で1番高かったのがスネークスパイダーの糸とそれを吐き出す器官、全部で大金貨1枚になった。
日本円にして100万円・・・2kgぐらいで100万円、最近金の価値が曖昧になって来た。
後は魔石が200万円ちょっと、スネークスパイダー以外の素材が50万円。
これで手持ちの金が1500万円、確実に金銭感覚が麻痺する金額だ。
そして、アーティファクトのコテージ。
お値段・・・付きまへんでした。
何かオークションがあってそれに出さないかと言われた。
価値が高すぎて、ギルドでは計りかねてる見たいだ。
7日後のオークションに参加することになった。
ってか参加する事にした。
めちゃくちゃ美しく珍しい奴隷とかも扱っているらしいので・・・ついでだ、ついで。
コテージを売るついでにちょっと、さっ先っちょだけだから。
それまでは難易度が高いオーガマの洞窟ではなく、自由都市ダロンの初級ダンジョンに潜る事にする。
ちなみに初級ダンジョンだが、やはりあのエウリュアレーという魔人に殺された冒険者が数人いた見たいだったが、最下層までB級冒険者が確認した所、もうエウリュアレーは居なくなっていた様だ。
リッカはまた馬車で向かって貰っている。
「初級ダンジョンはまた10階からだな、大丈夫らしいが、万が一エウリュアレーが居たら即撤退だからな?」
「心得ました、ご主人様」
「あぁ、そのつもりだ」
「わかりましたわ」
順調に進んでいく。
途中コウモリの魔物<バッドバット>の集団に会ったが、もう簡単に殲滅出来るだけの経験とステータスはある。
10匹程の<バッドバット>の攻撃を3回くらう程度で全部倒した。
俺が攻撃を一身に受けた為、他のメンバーは攻撃が直撃しなかった、筈だ。
最後はベアの固有能力<ゾーン>が発動。
遅くなる視界の中で、俺にダメージを与えた<バッドバット>の羽根に<レーザーポインター>を当てると、これでもかと剣を突き立てた。
・・・正直ムカついてたからしょうがない。
そんなこんなで20階に来ていた。
「イビルアイです、ご主人様」
あれがイビルアイか・・・魔人エウリュアレーの所為で依頼未達成になった奴だ。
デカイ目玉のコウモリ。
<スタンフラッシュ>で目を眩ませ、墜落した所をミネルヴァが斬る。
やはり、この奇襲パーティは強い。
アイリスの固有能力<風読み>で近くの敵を察知し、俺の<トーチ>に注目させ奇襲する。
最早鉄板となりつつある戦術だが、奇襲ではない普通の狩をやっていくべきだ。
そうしないといろいろな事に対応出来ないパーティになってしまう。
「今から奇襲はやめる。いろいろな状況で戦えないと、脆いパーティになってしまうからな」
「はい、ご主人様」
「私は賛成だっ、キサマにしては考えたな・・・」
「私もいいですわ」
そうと決まれば色々なフォーメーションを試して降りていく。
それは23回層に降りた時だった。
ミネルヴァが叫んだ。
「くそっ!!」
あらら、武器が折れてる。
そりゃそうだ、みんなスネークスパイダーとの戦闘など、結構な激戦を戦ってきている。
そろそろ装備を整えなければいけない。
急いで王都にある冒険者ギルド近くの武器屋に向かった。




