蛇蜘蛛
さてさて、昨日はレベルが上がったので結局2階に降りたところで屋敷に帰ってきた。
今日はレベルアップ前とどう違うのか、実験しながら進む。
リッカも移動ばかりで疲れているはずなので、今日はダンジョンについて来させた。
陣形は左に俺、中央にベア、右にミネルヴァ。
後衛左にアイリス、右にリッカという形だ。
地下2階は薄暗い。1階よりも明るい事に違和感を感じる。
オーガ、スライム、コウモリ、オークそしてレッドオーガも1体いた。
だが、戦闘は順調に進んで行き、地下5階層の大広間の手前まで来ていた。
「広間に初見の魔物がいます、ご主人様」
アイリスの警告を受けて、最大射程である50m先にトーチを展開する。
「ビジュギャジュ・・・ジャシュッ!!」
ドラゴン?いや、別の何かだ。
とにかくデカイ。
長い首の蛇頭が数本、胴体は蜘蛛っぽい。
「あれが何かわかるか?」
「わかりません、ご主人様」
「多分、スネークスパイダーだろう。かなりレアな魔物だ」
「聞いた事あるッス。結構ヤバい魔物ッス、ご主人」
「カナメ様なら、簡単な相手ですわ」
最後のヤツ、何を根拠に言ってるんだか・・・。
ってか蛇+蜘蛛で、スネークスパイダーは安直すぎね?
まぁいいんだけど。
「それよりも、こんな魔物がウロウロしてるのか?」
「いえ、あの反応は1体だけみたいです、ご主人様。ですが、近くにオーガがいます」
オーガか、厄介だな・・・。
スネークスパイダーとの戦闘に介入されたら、どんなイレギュラーが起きるかわからない。
ん?トーチに引き寄せられているのか?
そのまま潰し合ってくれないかな・・・、漁夫の利って奴が望ましい。
よしよし、近づけ・・・・・あれ?
どうやら、ダンジョン産の魔物同士は基本的に潰し合わないらしい。
「アホかキサマは」って言われた。
絶対後からミネルヴァをアヘ顔にしてやるっ!
それは後の楽しみに取って置いて、ダンジョン産の魔物同士は基本的に潰し合わないという話だが、基本的にというのは例外がある筈だ。
「例外ッスか?そうッスね〜、冒険者の死体を取り合ったりとかじゃないッスか?」
「カナメ様を取り合うってのはありそうですわ。当然私が勝ちますっ!!」
こらそこっ!!火花をバチバチ言わせないっ!!
そしてベア、冒険者の死体って俺の事かよっ!縁起悪いだろっ!
だが、つかえるか?
アイテムボックスは入れた物の進む時間が遅くなる。
だが、決っして時間が止まるわけではない。
もちろん今のアイテムボックスのレベルではの話で、この先レベルが上がっていった場合はわからない。
そのアイテムボックスから腐りかけの鳥ヘビの肉を取り出して置いてみる。
一度そこから離れてトーチを展開、様子見だ。
こうして見ると、改めてスネークスパイダーが大きい事が分かる。
オーガの身長は1.8m〜2mだ。
それから比較して二倍、約4mくらいスネークスパイダーはある。
それはあくまでも高さの話しだ。
横も倍、奥行きも結構ある。
そして、今わかったが、首の数は4本あった。
あっ、オーガが肉に気付いたみたいだ。
スネークネスパイダーもオーガに続いた。
肉を奪い合っていたが、半分に別れた鳥ヘビの肉を仲良く食べてんじゃんっ!!
もう、いい。
やっちまおう、ちまちまやり過ぎだ。
俺はツエー系主人公になるっ!!
「<小型防御陣地>っ!!」
小心者なので一応3枚の<小型防御陣地>を展開する。
「<レーザーポインター>」
「<ウインドエッジ>」
射程が長い俺の<レーザーポインター>と、アイリスの<ウインドエッジ>がスネークスパイダーに当たる。
大して効いてなさそうだが、距離によって威力は減衰するから仕方ない。
よしっ、近づいて来いっ!!
オーガはミネルヴァが、担当する。
そして俺、アイリス、リッカ、ベアで、スネークスパイダーと戦う。
<小型防御陣地>がある間に、遠距離攻撃を叩き込む。
「<照明ボム>・・・<レーザーポインター>」
「<ウインドエッジ>」
「<ドレインボール>ッス」
「・・・・」
ベアは遠距離攻撃手段を持っていない為攻撃していないが、<小型防御陣地>が壊れた場合の保険として盾を構えさせている。
スネークスパイダーは遠距離攻撃にも構わず<小型防御陣地>に突進して来た。
「ドゴォォーッ!!!・・・ゴワァー!!」
そのあと、蛇頭が火を吐き出して来た。
「ピキッ・・・・ピキッ」
<小型防御陣地>にヒビが入った。
嘘だろ?俺を20回は殺せる威力まで耐えれるはずなのに、体当たりと炎のブレスでもうヒビが入っている。
まぁそうか、あの体格での突進だ。
壊れない方が逆に変かもしれない。
そうしていると、リッカが放った<ドレインボール>が帰ってきて、<小型防御陣地>に吸い込まれ、ヒビが修復された。
「ナイスだっ、リッカ!」
「け、け、計算通りッス」
んなわけない。
リッカの<ドレインボール>は当たった相手からスキルLv×2パーセントのHP・MPを吸い取り、次に当たった相手に与えるという物。
それで、<小型防御陣地>の耐久値が回復するとは思ってもみなかった。
そんな考察はさておき、スネークスパイダーが少し距離を取って、また突進して来た。
その後、尖った前足?の4本で攻撃して来た。
「<レーザーポインター>」
<レーザーポインター>がスネークスパイダーの脚を一本切断した。
「使います、ご主人様」
アイリスが使うと言うのはあのスキルだろう。
「わかった」
「<サンダーボルト>」
アイリスから立ち昇った電撃が、スネークスパイダーの頭上で丸くなる。
そこに周囲から電撃が集まって行き、飽和した瞬間っ!!落ちたっ!!
青白い雷撃がスネークスパイダーを上から貫いた。
痙攣しているが、まだ微かに動いている。
オーガを倒したミネルヴァがスネークスパイダーに斬りかかり、首を一本落とした。
ドス黒い体液を撒き散らしながら頭を失ったクビが暴れ回っている。
全身プスプス言いながらも、スネークスパイダーはまた動き出す。
3つの頭が右のミネルヴァの方を向いた。
1匹の蛇頭が少し後ろに動いて溜めの態勢にはいる。
ブレスだっ!!
「なんのっ!!」
ミネルヴァはかろうじて避けた。
が、切り離されていた蛇頭が最後の力を振り絞ったのか、ウネウネ動いてミネルヴァの足に噛み付いた。
「ガアァッ!!」
ヤバい、どうするっ!!!
「<フォーカスクライ>ですわっ」
ベアが敵の注意を引くスキル<フォーカスクライ>を発動した。
そして、スネークスパイダーに向けてダッシュする。
「<シールドバッシュ>ですわっ」
「ドッゴンッ!!!!」
良し、俺も<小型防御陣地>から出る。
ミネルヴァだけ前線で戦わせるのは何か嫌だ。
奴隷と主人という関係性上、本来なら正しいのかも知れない。そんなことは知るかっ!!
「<剣気>!!・・・<ダッシュラッシュ>、<回転斬り>!!!」
<ダッシュラッシュ>でミネルヴァの方に斬り抜ける。
しかし、硬いっ!!
<ダッシュラッシュ>は刃が殆ど入らず表面を撫でた。
だが、<回転斬り>は結構抉ってくれた。
ミネルヴァが足を引きずりながら立ち上がる。
「<ヒール>、<ヒール>・・・<ヒー」
最後の<ヒール>はミネルヴァに手で制された。
「大丈夫だ。キサマはMPを温存しろっ!」
必死な俺に、ミネルヴァが少し嬉しそうに言った。
「<サンダーボルト>っ!!!」
アイリスたん?ヤキモチですか?
まぁ、それはないか。
アイリスの特大<サンダーボルト>がスネークスパイダーを打ち据える。
3つ残っていた首の1つが<サンダーボルト>の直撃を受け、黒こげになり垂れ下がる。
残った2つの首が、炎や糸を撒き散らし始めた。
糸に炎が引火して、火の海状態だ。
<小型防御陣地>も、耐久限界なのかタイムリミットなのかわからないが、砕け散った。
「リッカっ!!全員に<リフレッシュシャワー>だっ!」
「り、了解ッス!」
リッカの<リフレッシュシャワー>は、ミストが身体に纏わり付き汚れを落とす。
ミストのおかげで少しは熱を下げれるかと思って言ってみたが、ズバリ正解だった。
それと同時に周りの動きがスローになる。
ベアの固有能力「ゾーン」が発動し、それをミネルヴァの固有能力「共有」によって全員が共有している。
「<トリプルインパクト>付きの<牙・顎・爪>っ!!!」
ミネルヴァの<トリプルインパクト>は斬撃と打撃と魔力を内部に打ち込む技だ。
その力を上乗せした<牙顎爪>を打ち込んだ。
2つ残っていた首の1つが弾き飛ぶ。
残り1つ!!!
「<剣気>っ!!!・・・・<真・スラッシュ>っ!!!」
スキル発動の瞬間、スネークスパイダーに残った最後の蛇首の根元が微かに光る。
多分<サーチライト>により弱点が光っているのだろう。そこを切るっ!!
やはり硬いっ!
構うなっ!!弱点な筈だっ!振り切れっ!!
「うらぁーっ!!」
オノマトペは「ギョギンッ!!」だろうか?
そんな音と共に最後の首が千切れ飛んだ。
スネークスパイダーは崩れ落ち、動きを止めた。
まだ気は抜けない。
ベアと2人でアイテムボックスに、スネークスパイダーの胴体と首を収納した。
アイテムボックスには生きている者は入らない。
収納できたということは、スネークスパイダーとの戦闘は終了したということだ。
各々疲弊しきっている。
地下5階層の大広間、ミネルヴァやリッカが言うには、ボス部屋でスネークスパイダーは階層主の可能性が高いそうだ。
ダンジョンは5階層ごとに階層主が居るかと言うとそうでもなく、ダンジョンによって色々あるとの事だった。
「階層主の部屋には宝が隠されている場合があるッス」
何?宝?
ワクワクして来た、先程の疲れも宝があれば報われる。
大広間をあちこちみていると・・・あった。
違和感を感じる。
その場所だけ歪んで見える。
これが、パッシブスキル<サーチライト>の効果なんだろう。
その歪みの場所は壁になっているが、他の場所とは違い、石積みになっている。
アイリスが周辺の警戒をし、リッカは罠がないか確認し、ミネルヴァとベアが慎重に石を取り除いていく。
そこには確かに、宝・・・宝箱っぽい箱が2つあった。




