粗鹵迂遠
さて、初心者ダンジョンに入れないからには、リッカは馬車で進んで貰って、俺たちは中級ダンジョンの浅い層で金を稼ごうという事になった。
で、問題がある。
非常に深刻な問題があるんだ。
レベルが、レベルが・・・
カナメ・クロサキ
種族:人族
職業:先導者:Lv9 剣士:Lv9
称号:トーチ野郎
16歳
レベル:2
HP:210(210)
MP:320(320)
攻撃力:210(400+50)
防御力:210(210+600)
素早さ:213(213)
魔力:320(320)
器用さ:220(220)
運:100(100)
<固有能力>
「好転」
<スキル>
トーチ:Lv9(聖火:Lv:5 篝火:Lv4 転移の灯台:Lv4 照明ボム:Lv6 ウィルオウィプス:レベル2)
回復:Lv4(ヒール:Lv6 異常状態ヒール:Lv1)
アイテムボックス:Lv5
鑑定:Lv5
翻訳:Lv3
気配遮断:Lv5
身体強化:Lv6
状態異常耐性Lv3
レーザーポインター:Lv4
<技スキル>
真・スラッシュ:Lv3
トーチボール:Lv5
パリィ:Lv3
剣気:Lv2
<加護>
女神の加護:Lv10 鬼神の加護:Lv2 水の加護:Lv1
<獲得可能職業>
幻惑士:Lv1 盗賊狩り:Lv1 剣豪:Lv1
<獲得可能スキル>
ウィークアタック
LED懐中電灯
<獲得称号>
盗賊の天敵
性奴隷の主人
人型モンスキラー
スキルポイント 210
俺のメインのレベルがベアと同じ2に下がっている。ベアと同じというところに作為的なものを感じないでもない。
職業レベルとかは下がっていない所が救いかな?ってか、これを使えばスキルいっぱい取れるんじゃないかな?
でも多分、人の生き死にに介入したペナルティーな気がするから悪用はしないようにしよう。
神か何かの意思を感じないでもない、何か気持ち悪いのだ。
でも大丈夫、俺はアイリス・ミネルヴァ・ベアに、文字通りオンブに抱っこで居ればいい。
だって、夜はコッチがオンブに抱っこ、それにシーシーさせる。あと、ワンワンもかな?
とりあえず、中級ダンジョン地下1階層に階段を使い入っていく。
えっ?明るい。
<先導者>の効果によってMP消費がないトーチだけでも出して役に立とうと思っていたが、完全に俺はいらない子だ。
少し歩いて行くと、アイリスが話しかけて来た。
「人が多いので、あまり魔物がいないです、ご主人様」
たしかに・・・さっきから5分おきぐらいに冒険者を見かける。
これはさっさと下に降りて・・・いや、いっそ狩場を森に移すか?
王都のダンジョンって手もある。
「意見を聞きたいんだが・・・」
ダロン中級ダンジョンを下に進むか、森で狩場をするか、それとも王都周辺のダンジョンに行くのか意見を聞いてみた。
「どの様な場所でも大丈夫です、ご主人様」
いや、そんな意見を聞きたいんじゃないんだが、ニコニコしているアイリスを目の前にしては何も言えなくなってしまった。
「きっ、キサマが主人だろっ。キサマが決めるべきではないか?」
ミネルヴァめ!!面倒だから勢いで、突き返してきやがった。や、やりよる・・・。
「森に行ってみませんか?カナメ様」
やっとだよ。
やっとまともに意見してくれる奴がでてきたよ。ベアさん最高〜。
「私は、ダンジョンに潜ってらっしゃるカナメ様しか拝見しておらず、木々に囲まれたカナメ様も私の脳内メモリーに保存せねばなりませんので・・・」
ス、ストーカーよ〜!
俺のお前への高評価返せよっ!
だが、今回はベアの案を採用する。
理由は、ベアを<アンデット?>にしてしまった罪悪感だ。
とりあえず移動することにした。
場所は、王都の森。
あの<氷の花>を採取し、ダークレッドオーガと戦った場所だ。
1度王都の冒険者ギルドを訪れて、依頼を受けることにした。
ギルド内に入ると、分厚い胸筋に太い二の腕のオーガマが受け付けにいた。
アゴが割れているくせに、意外にも冒険者数名がならんでいた。
「アゴは関係ないでっしょっ!!」
5m以上離れているのに反応が返ってきた。アゴが割れているくせに。
「尻アゴ言うなっ!!」
言ってね〜し。
意外にも感度は悪いらしい。アゴがわ・・・。
「もういいでしょっ!話し進まないからっ!で?依頼を受けに来たのかしら?」
「そうなんだ・・・何かいい依頼ある?」
オーガマオススメのオーガ討伐の依頼を受けた。
だが、その時のやり取りは割愛することにする。
なぜって?
それはベアがギルドカードをオーガマのアゴの割れ目にシュッと通したからだ。
それはカードリーダーじゃない、そう言おうとしたその時、あのフラットなオーガマの背後に鬼が見えたのだ。
何はともあれ、王都の外に逃げ出した。
森まで馬車で進む。
リッカが居ないので、普通に馬車を頼んだ。
なので、帰りは徒歩だ。
森の入り口に立つ。
フォーメーションは、三角形の上の頂点にベア、底辺の頂点の左にアイリス、右にミネルヴァ。
レベルが低い俺が中央に位置する。
そうそう、ベアが王家から貰った大盾<スギーアスアルクラン>は、俺の<好転>によってベアの一部になったみたいだ。
ベアは意識するだけで、自由に盾を出し入れ出来るようになった。
そのベアを先頭に結構拓けた道を進んで行く。
「ゴブリンです、ご主人様」
アイリスの言葉で警戒をしながら、30m程進む。
・・・出た出たゴブリン5。
ウサギか何かの肉を道端で食べている。
アイリスが弓を引くと同時にミネルヴァが身を引くしながら素早く走り出す。
俺のMPは320で<照明ボム>は消費MP45だが、職業<先導者>の効果でトーチからの派生スキルの消費MPは2/3になるから消費MPは30になる。
MPが減ると気分が悪くなるからな。
緊急回避用の<転移の灯台>分とかを考えると5〜6発しか打てない。
だから今は温存して、討ち漏らしを処理することにする。
・・・・次回からは、そうする。
とっ、とりあえず、レベルは上がったので、良しとしよう。
俺もベアもステータスが上がっただけなので割愛する。
その後もアイリス、ミネルヴァがサーチ&デスしている。
ベアも魔物が出す消化液を盾で弾いたり、攻撃自体を弾いたりしていた・・・。
あっ、俺も活躍した。
デカい蜘蛛の魔物が吐いた糸がミネルヴァの髪に少しかかった際に取ってあげた。
・・・戦闘後だったけど。
そうして、少し奥に進むと・・・いたっ!オーガだ。
2mはあるオーガが2匹で、手には何も持っていない。
ズシッズシッって目的もなさげに歩いている。
木々に身を隠しオーガ達が通り過ぎるのを待つ。
俺たちを通り過ぎたオーガの目の前に<トーチ>を出現させた。
手で触ろうとして、熱量がある事に気づいた見たいで「アグッ!!」って唸った。
いまだっ!!
俺は<照明ボム>を放つ。
オーガの背中がハジける。
驚いたもう1匹のオーガにアイリスの<スタンボール>が当たり痺れさせる。
そのオーガの足をミネルヴァの<スラッシュ>が刈り取る。
振り返りながら倒れそうになったオーガに、ベアの<シールドバッシュ>が当たった。
その瞬間、時間が引き延ばされる。
ミネルヴァの固有能力<共有>によって、パーティ全員がベアの固有能力<ゾーン>を共有して、体感時間がゆっくりになった。
足を切られた2匹目のオーガの眉間にはアイリスの弓が刺さる。
俺とミネルヴァは、2匹目のオーガの首に剣を合わせる。
ダークレッドオーガと戦ったときの合体技、クロスさせる<スラッシュ>だ。
「「スラッシュッ!!」」
オーガの頭部が真上に飛ぶ。
時間がゆっくりに感じる為、綺麗に剣をクロスさせる事ができた。
「ピコンッ」
「ピコンッ」
レベルが上がったみたいだ。
流石レベルが低いだけあって、一気に2も上がったみたいだ。
ただ、頭が痛い。
「ハハッ、ヤバいな。頭がクラクラする・・・ベアの<ゾーン>は強いけど、ここぞって時しか使わないようにしないとな・・・」
「わかりましたわ、カナメ様」
とりあえずオーガの遺体を処理する。
アイテムボックスに入れたが、結構容量を圧迫している。
アイテムボックスはLV5だから5㎥の容量があるはずだが・・・まあ、ベアもアイテムボックスを使えるし今のところ問題はないか。
とりあえずあと1匹で依頼は達成だ。
少し進むとまたアイリスからの警告が来た。
藪に身を隠しながらオーガの様子を観察する。
・・・えっ?何アレ・・・洞窟?
ミネルヴァの方を見ると、顔を横に振られた。
オーガの巣かな?中に他のオーガが居たら面倒だ。
アイリスに<スタンボール>を打ってもらう。
「スタンボール」
「行くぞっ!」
そして、俺とミネルヴァとベアはオーガの元へ駆け出していく。
オーガ元に辿り着き、<スラッシュ>を放とうとしたその時、
「ゴアーーーッ!!!」
オーガが咆哮を放つ!!
どうやら、アイリスの<スタンボール>で痺れてはいなかったようだ。
アイリスの<スタンボール>も100%麻痺させる訳じゃない事を失念し、不用心に近付いた俺のミスだっ!!
ヤバいっ!!洞窟からオーガの仲間が来るっ!!
走りながら盾ごと体当たりしたベアの勢いに押されて仰け反るオーガに<スラッシュ改>を放つ。
ミネルヴァは上下のコンビネーションブローであるホワイトファ・・・違った、<牙顎>を放った。
崩れ落ちたオーガの首をはねる。
「ピコンッ」
レベルが上がったが、そんなのに構ってられない。
オーガの死体をアイテムボックスに仕舞うのも面倒だ。
オーガの死体は放置したまま、急いで藪に隠れた。
バクバクと音が鳴る心臓と、酸素を欲しがる肺を押さえ込む。
・・・時間が何倍にも感じる。
ベアの<ゾーン>とはまた違った感覚だ。
・・・5分は経っただろうか、まだオーガの仲間は出てこない。
・・・・・・・15分たったかな?
「アイリス、<風読み>で他の魔物の事とかわからないか?」
「・・・近くには居ません、ご主人様。更に言うと、洞窟の入り口付近にも居ない様です」
「助かったか・・・」
「それから、洞窟内部は凄い広いです。まるで・・・ダンジョンの様な・・・。そういう作りです、ご主人様」
「ミネルヴァはここにダンジョンがあるのは知らないよな?ベアもかな?」
「あぁ、知らないぞ」
「私も存じ上げません、カナメ様」
やはりそうか・・・。
とりあえず、オーガの死体を収納したあと、洞窟の中を捜査する事にした。




