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チート?いいえトーチです  作者: 取手名
47/62

GOD

6匹のモンスターにウィプスを向かわせる。

松明めいた物を持ってる・・・人型の魔物か?


「ったく!!本当にここにエキドナがいるの?」


「へいっ!噂に名高いフェリペという男が、ここの25階層で間違いなくエキドナをみたそうでやす」


!!!!噂に名高いフェリペさん出たっ!!

ここで話に出てくるかぁ〜。

たしか、初心者ダンジョンの最下層である25階層のダンジョンコアを触って出て来たエキドナから唯一生き残った人だったか・・・。

二度と名前は聞かないと思っていたのになぁ〜。

まさか目の前の人間から聞けるとは・・・あれ?アイリスは人間がいるとは言っていなかった。

って事は人間ではないのか?

横を見るとアイリスとミネルヴァが最上級のピリピリした空気を出している。


なるべく小さな声で聞いてみる。


「アイリス、あれは人間・・・」


アイリスに指で口の動きを止められる。


「ご主人様、あれは魔族です。いわゆる知性ある魔物で、魔族は総じて高い知能と運動神経を持っています」


「あ〜ら、ありがとう。そんなに褒めてくれて!」


!!!


「なっ!!!」


唐突に後ろから声がした。

と思ったらさっきまで、前方に居た魔族がいつのまにか後ろに立っていた。


「えっ?」

「ハーっ!!!」


ベアの疑問と同時にミネルヴァが魔族に斬りつける。

・・・が、魔族は霞のようにユラユラ揺れて消えた。

存在がバレた以上、暗い中では不利だ。

ありったけのトーチを放ち、周りを照らす。

トーチのような優しい光でも、大量にあると流石に少し目がくらむ。

光に目が慣れると、5mほど前方の岩の上に魔族が腰掛けていた。

妖艶な美女・・・だが、頭から羊のようなグルリと巻いたツノが生えていて、コウモリの様な翼と、ほっそりした尻尾まである。


足元には部下と思われる魔族が整列している。


「フフフッ、人間。ちょっと聞きたいのだけれどいいかしら?」


「・・・」


「きさまっ!エウリュアレー様がお声掛けくださっているのに無視かっ!!」


団子虫を擬人化した様な魔人が威嚇してきた。


「黙りなさい、ゴルゴ」


「はっ!!」


ゴゴゴ、ゴルゴっ!!?

団子虫さん、13なの?うっそ、ヤバいちょっとにやけてしまう。


「フフッ、面白いわね・・・私を前にして笑う余裕がある人間がいるとは・・・、それとも気でもふれたか・・・もうよい・・・」


エウリュアレーと呼ばれた女が、長く妖艶な爪をした人差し指を上げると、周りにいたゴルゴ他数名の魔人が飛びかかってきた。


「まじかっ!問答無用かよっ!」


ベアが盾を構え<フォーカスクライ>を発動させる。

ミネルヴァが1匹の雑魚魔人に連撃を与えて屠り、アイリスの合図で俺とミネルヴァはベアの大楯の陰に隠れて耳を塞いだ。

そして、トーチを全て消す。


「スタンフラッシュ!!」


アイリスが<スタンフラッシュ>を放った。


トーチを消して真っ暗になったダンジョンが、アイリスの放った<スタンフラッシュ>によって真っ白になり、同時に物凄い耳鳴りがはしる。


トーチを展開する。

盾の裏で準備していた為にいち早く復活した俺とミネルヴァは、周りにいた魔人にスラッシュの連撃を浴びせる。

ミネルヴァに至っては、<極スラッシュ>の連撃に<ダブルインパクト>の内部に浸透する打撃と斬撃を上乗せしていた。


残っているのはエウリュアレーと、そばにいた魔人ゴルゴ。


「アハッ・・・やるではないか、人間」


アレ?<スタンフラッシュ>効いてないの?

うそだろ?


「次は私のターンだな?」


何故そのネタを知っているっ!!

ゴルゴの下には魔方陣が輝きだした。

瞬間、岩に居たエウリュアレーが接近してきた。

が、ベアが盾で受け止めた・・・いや、弾かれて仰向けに倒れた所にゴルゴの魔法が発動する。


「シャドウアロー!!」


中空に黒い塊が複数出現し、そこからいくつもの黒い矢が飛んでくる。

俺とウィルオーウィプスは、フラッシュボムを連発したが、巻き込んだ黒い矢は僅かだ。

着弾前に、防御の姿勢をとる。


「シールドウォールっ」

「エアシールド」


一度だけ攻撃を防げるミネルヴァの無属性魔法の<シールドウォール>と、空気の膜をつくるアイリスの<エアシールド>が展開されるが、<シールドウォール>は俺の前に展開された。


結果、レベルの低いアイリスの<エアシールド>は数本の<シャドウアロー>しか防げなかったみたいで、皆に数本の<シャドウアロー>が刺さっていた。


だが、皆まだ生きてる。

今のうちに<転移の灯台>で脱出するしかない。

そう思った・・・その瞬間。


「グヂャリッ!!!」


盾を弾かれ、仰向けに倒れたベア・・・その心臓部に、エウリュアレーの腕が肘まで埋まっていた。


「・・・・・あ、あ?ふざけるな」


「良い表情だ、人間。・・・・今殺しても、その絶望が薄れるか・・・、せいぜい苦しんで生きていくがよい」


「よいのですか?エウリュアレー様・・・」


「見ろ、あの目・・・面白いではないか?絶望・困惑・殺意・恐怖・現実とは思えない夢遊感。あぁ、ゾクゾクするぞ・・・」


ヤバい、死を目の前にして、歯がガキガキ鳴っているし、地面が揺れると思ったら足がガタガタと動いていた。


「では、その目だけでも抜き取りますか?」


「それは雅ではないのぉ〜、追ってくるなら殺せば良いだろう。あの綺麗な目はしばらくあのまま・・・アハッ・・・絶望のままにしておきたいのう・・・」


「御意・・・」


そう言うと、2匹の魔族は奥の闇に消えていった。




一瞬呆けそうになったが、ベアに駆け寄る。

ヤバい・・・これは助からない。心臓部がグチャグチャで、地面が見えるほど穴が空いている。


大量のヒールで欠損部位は治せるが、失った血液までは無理だ。


「カナメ様・・・誕生日・・・会・・・ずっと影から・・・・見て・・・た。お慕い・・・して・・・」


ベアの瞳から光が消えて行く・・・。

ダメだダメだ・・・。

無駄なヒールなどやって、MPを消費する訳にはいかない。

やるしかない、俺の「好転」は具体的な物質でも、抽象的な現象でも変える力がある。


ベアに迫る「死」、それを「好転」させるっ!!!


「ベアっ、しぬなっ!!好転っ!!!」


あっ、ヤバい・・・なんだこれ、ヤバいなんてもんじゃない。


「プチュンっ!!」


有名な遊技機のフリーズみたいにブラックアウトした。


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