双子
「なるほどねぇ〜。いや、信じない訳じゃないんだよ?ただ、君達だけの証言じゃね〜。本人は知らないって言ってるし」
「は?どんだけ無能なギルマスなんだよっ!?他にも被害者がいるんだろう?そいつらに聞けばいいんじゃね?」
クールリュさんが横にいるが、もう話し方なんて気にしている場合じゃない。これは我慢できない。
クールリュさんを見ると申し訳なさそうにしている。更に腹が立った。
「もういい。ギルドは動く気がないんだな?」
「そう言うことじゃないんだけどね〜、ちょっと待ってくれるかい?って事なんだよね〜」
「カナメさん、ギルマスは今魔法ギルドから真偽の水晶をお借りしようとされています。ただちょっと・・・」
クールリュさんが何か言いづらそうにしている。ギルマスはクールリュさんの肩に手をかけた。
「クールリュくんのお気に入りの冒険者だし、何とかしたいんだけどね〜。あの水晶借りるも一苦労だしね〜」
「クールリュさんもういいわ、なんかイラってしてきた。王様に直談判するよ」
「何?王様と面識があるのかね〜っ!!」
コイツ、急に態度変えやがったな?
手のひら返しとは正にこの事、揉み手で近寄って来て真偽の水晶を持ってくるまで執務室みたいなとこに案内されて、ソファを勧められた。
俺とクールリュさんが座り、奴隷3人は後ろに立った。
椅子に座っていると雑用係と思われる女が、お菓子とお茶を持ってきた。
アイリス達の座る場所がないと言うと、椅子を持って来てくれた。
だいたい1時間後、水晶を持ちギルマスが部屋に入る。
その後に続く形で、立派な騎士と衛兵2人、生き残った追い剥ぎが入ってきた。
「待たせたねぇ〜。この騎士様は、自由都市ダロンの領主様と同等の権限を持たれる、司法長官アレス殿だ」
ギルマスは立派な騎士を紹介した。
司法長官?よーわからんが、多分裁判官みたいな感じだろ。
「ワシが司法長官のアレスだ。この度は王族と面識がある冒険者が被害にあったということでワシが出向いた次第である」
何か分かんないけど、裁判みたいなことが始まった。いや・・・みたいじゃない、これは裁判だな。
ます、ギルドに報告した内容をギルマスが述べる。
次は、間違いないかと俺たちに聞いた後、追い剥ぎに聞く。
当然、追い剥ぎは間違いだと答えた。
「こうなると、真偽の水晶の出番である。信実なら青く、嘘なら赤くなる。悪意があればあるほど黒く、無いなら白くなる。では冒険者カナメ、手を置いて・・・そう。それでは、お前はクールリュちゃんと付き合っているのか?」
「は?いやいや、何を言ってるんですか?今は違う事を聞いて・・・」
「黙らっしゃい!!絶壁保護委員会会長である、ワシの質問に答えよっ!!それが何より重要である」
ダメだコイツ。頭が湧いてる。
「はぁ〜、わかりました。お付き合いはしていません」
突き合いはしたけどね。 ってイカン、変な方向に思考が・・・、水晶は・・・青。
セ、セーフ。いや、少し黒い。
「ふむ、嘘は言っておらんが・・・。まあ、良しとしようかの?絶壁保護委員会副会長や?」
騎士はギルマスに確認を取っている。
何っ!副会長はお前かぁーっ!!
その後は普通に追い剥ぎの嘘が露見し、衛兵にどこかに連れて行かれていた。騎士に聞くと、死刑は確定している。被害にあった者達に確認したあと、打ち首だと説明があった。
さらに、ギルドの問題解決したので、大金貨3枚(日本円で300万)の報酬が貰えた。
それとランクが上がってDランクになった。中級冒険者の仲間入りだ。
報酬やランクは、司法長官アレスにクールリュさんが進言したみたいだ。即オッケーって言っていた。どんだけなんだよ、絶壁保護委員会会長!
臨時報酬も手に入ったので今日は双子を連れて、外で豪華な食事にしよう。
双子の料理は不味くは無いんだが・・・。
ちょっと偏ってるんだよな〜。
〜双子が初日にご飯を作った日〜
「リリとルルは、家事が得意なんだよな?」
「・・・はい」
「はいですの」
2人には晩御飯を作ってもらうことにした。
冷蔵庫が無いこの世界では、食材は中々長持ちしない。
氷屋という、スキルで作った氷を売っている所から氷を買ってきて、それを置いた箱の中に食材を入れているが長持ちしないし、氷を買い足すのが面倒だ。
だが、ご都合主義よろしくリリが氷魔法を使えた。
とりあえず、今ある食材で料理を頼んだ。
1時間後、料理ができたとルルが呼びに来た。
「おぉー。美味そうな匂いだな」
「・・・おまたせしました。・・・ルル説明を」
「はいですの。まずは〜、前菜のサラダですの〜」
キャベツのサラダか、なるほど味付けはシンプルな感じだな。
「次は〜、キャベツのスープですの〜」
なるほど、塩胡椒で味付けしたお湯にキャベツをブッ込んだ、大胆な料理だな。中々美味しい。
「次は〜、キャベツのステーキですの〜」
茹でたキャベツを細かくし、さらに固めて焼いた感じか、付け合わせはキャベツの千切り。
「肉〜、肉がないッス・・・ウギャーっ!何するんスかっ!」
双子がせっかく頑張って作ったのに文句を言いかけたリッカの足を、テーブルの下で踏んで黙らせる。
「最後は〜、キャベツのシャーベットなの〜」
「・・・奮発して・・・キャベツ・・・3玉も使った」
うん、悪気は無いはずだな。晩御飯を一任した俺が悪い。
「ありがとう、美味かったよ。ただ、俺達は冒険者で身体が資本だ。肉がないと力が出ないからな・・・。次からは肉を使ってくれ」
「肉〜ッス!」
「お肉・・・贅沢・・・殿上人の食事」
「なの〜!」
「贅沢ではない、食うのに困らないくらいには稼いで来るから頼むなっ?」
「・・・わかり、ました」
「わかったですの〜」
という件があった。
あれからリッカが料理を2人に教え込んでいるので、食事事情は改善されて来た。
そして味の見聞を広める為、今日は外食だ。
場所はちょっとした高級料理店。かといって高級過ぎはしない。
店の名前は「クーリスアール」。
・・・なるほどクリスさんとアール商会を合体させた名前だな。ってことは?
「いらっしゃいませ、カナメさん」
「やっぱりクリスさんの店だったんだ」
「そうですよ。・・・そういえばまだ完全ではありませんが、ミネルヴァ様が欲しがっていた情報を手に入れました。お食事の後、また訪ねて来ます。それでは良いお食事を」
ミネルヴァが欲しがった情報?
もしかして、ミネルヴァを裏切った副将の事かっ!めちゃくちゃ気になるが今は食事を楽しむ。
ミネルヴァを見ると少しソワソワしながらもメニューも気になる様で、アレコレと検討していた。
「・・・むむ。・・・こんな高い料理は・・・贅沢」
「でも美味しそうなの〜」
リリもルルも真面目過ぎだから、俺に遠慮している。
「リリ、ルル。美味しそうな物を頼んでくれ。そして料理のバリエーションを増やして、うちで作る料理に活かしてくれ。いわゆる勉強だ」
「・・・なるほど・・・納得」
「はいなの〜」
これで大丈夫だろ。
俺は特にメニューは決めない。アイリスが察して注文してくれた。




