レベルアップ
首を絞め殺したゴブリンの方に戻って、そのゴブリンにも棍棒を3回ほど打ち付けた辺りで頭に「ピコンッ」という音がした。
「はぁ?」
もしかしてレベルアップかな?
小心者だと思われるかもしれないが、俺はとりあえず岩陰に隠れた。
だってしかたないじゃん、異世界来て直ぐにゴブリンとの戦闘だよ?何があるかわかったもんじゃない。
とりあえず大きな傷をヒールで治してステータス画面を開いた。
カナメ・クロサキ
種族:人族
職業:なし
称号:なし
16歳
レベル:2
HP:80(210)
MP:120(320)
攻撃力:220(210+10)
防御力:210(210)
素早さ:213(213)
魔力:320(320)
器用さ:220(220)
運:100(100)
<固有能力>
「好転」
<スキル>
トーチ:Lv1
回復:Lv2(ヒール:Lv1)
アイテムボックス:Lv1
鑑定:Lv1
翻訳:Lv1
<加護>
女神の加護:Lv10
スキルポイント120
よくわからないけど、強くなったのかな?
運以外の数値が上がっていた。
カッコの中の数値がステータスでカッコの外は現状のステータスみたいだ。
HPとMPは戦闘と回復スキルで減っている。
攻撃力のプラス10は木の棒の分なんだろうな。
とりあえずスキルポイントってこれで新しいスキルを取れそうだ。
っとその前にステータスの変化だけど、1割と100増えてるな。
って事は多分1割は普通のレベルアップで上がる数値で女神の加護で上がったのが100っぽいな。
スキルは回復が上がっただけかな?
回復Lv2をタップして詳細を見てみる。
回復Lv2:レベル2になる事で、回復力が増加。新しくヒールを覚える。
なるほど、ヒールを覚えたのか・・・説明はと、
ヒールLv1:部位回復、他者の回復も可能
おーっ、回復チートが可能になるのかもなぁ〜。
順調順調!あとは、スキルポイントの割り振りだな。
・・・?何も新しく覚えられるスキルがないんだが・・・。
あぁ、既存のスキルはレベル上げれるみたいだな。
どうするか・・・
鑑定でも上げて・・・いや、まだ何が起こるかわかったもんじゃないから取って置くに越したことはない。
つくづく臆病な性格だと苦笑した。
しばらく休憩していたが、喉の渇きと空腹がシャレにならないくらいに迫って来た。
とりあえず警戒しながら川を探すことにする。
緩やかな斜面に沿って歩いてると、道らしきものを発見した。
道に沿っていけばどこかには着くはずだ、空腹を紛らわせる為に、歩きながらトーチの検証を行った。
トーチの有効範囲は15mの範囲に任意で出現させることが出来そうだ。
熱量は分からなかったが温まることが出来るくらいに熱い。
大きさは20cmが最大で、形状も火の玉から変化しそうになかった。
使うMPは5〜10だと推測される。
最大2個までトーチを出現させることができ、込めるMP量によって持続時間が変化する。
出現させたトーチは自分から15mの範囲で自由に動かせたり、一定の距離を保たせることは出来ないみたいだ。
MPが心許無くなってきたのでこれ以上の検証は止める事にした。
しばらく歩くと川のせせらぎの音が聞こえて来たのでそっちにむかう。
でも川の水を飲むのかぁ、すぐ腹を壊してしまいそうなんだよなぁ〜。
そう思いながらも水辺に着くと、もう限界が・・・。
駆け寄って顔から水に浸けて一口飲んだ。
「んっ、まいっ!!」
もう腹痛なんて知った事じゃないっ!!
もう飲めないくらいにゴクゴク飲んだ。
顔を洗って一息着くと、100mほど先に煙が上がるのが見えた。
人がいるかもしれない、急いで顔を拭いて走った。
煙の元に着き、警戒しながら覗き込むと行商人らしき人が2人と、その護衛の人が3人、馬車が2台馬が4頭いた。
ガサガサ・・・
「誰だっ!!!」
護衛は警戒し、行商人らしき人の前に出て警戒している。
「あっ、怪しい物じゃないです。道に迷ってしまって・・・」
怪しい物じゃないって言ってもめちゃくちゃ怪しいよな?
知らない世界で知らない土地、知らない人に話しかけるなんて難易度高過ぎだろっ!
「怪しい奴は怪しい奴ですなんて言わんっ!!なぜ手を上に上げている?何か魔法でも放つつもりかっ!?」
「いやっ、ちっ違うんです」
ホールドアップしていた手を慌てて下ろした。
やばすぎる、異世界!!
すると、行商人が声をかけて来た。
「どうなさいました?いやー、変わった服ですなぁ。東方からの旅人ですかな?」
優しそうな笑みだが、警戒している雰囲気が漏れ出ているなっ。
ヤバイ人達に声をかけてしまった感が拭えないんだが・・・。
「そうなんですよ!東方から旅をしてまして、ゴブリンの群れに襲われて荷物も奪われて遭難ですよ」
ウィットに富んだジャパニーズオヤジギャグをかましてみたが反応はイマイチだ。
「それで、よかったら近くの街まで乗せて行ってもらえたらなぁー、なんて・・・ハハッ」
護衛が3人近づいて来て体を弄る。
ダメよーっダメダメ!!
「武器は持ってないみたいですし、ゴブリンに引っ掻かれた様な服の破れ方をしています・・・」
「そーですかっ!私達はここから2時間ほど行った自由都市ダロンに向かっていたところです。これも何かの縁でしょう」
そう言って馬車に案内された。
馬車の中は奥に俺、護衛3人、出口側に商人となっていた。
もうね、護衛の圧力ハンパない。
お互い自己紹介をした。
商人の名前はクリスさん。小太りだが動きに無駄がないので、護衛だけでなく自分でも戦えるのだろう。
いろいろ聞かれたので、襲われた際に頭を打ち記憶があまりないと伝えた。
自由都市ダロンに連れて行ってくれるお礼として、ヒールが使えるので怪我人が居れば治しますよと伝えると、
「ヒールを使える人は貴重ですから、人攫いに会って奴隷にされないように、あまり人には話さない方がよろしいですよ?」
と言われた。
ちゃんと忠告してくれる辺り、いい人なんだろう。
でも、護衛の1人が足を捻挫しているので良かったら治して欲しいと言われたので、ヒールを使うことにした。
(捻挫でも治るのか不安だな・・・)
結論から言うと捻挫は治った。
ただ、行商人クリスさんの目がキラリと光ったので、売らないで下さいと懇願した。
「いやだなぁ〜、売ったりしませんよ〜」
ですよね〜?でも笑顔が微妙に怖かった。
しばらくすると自由都市ダロンが見えてきて、行き交う馬車もチラホラと増えてきた。
自由都市ダロン・・・もうね、めちゃくちゃでかい。
10mはある壁がズラーッて・・・
大きな門があり、堀があってそれを越えるための橋その上に他の馬車同様に並んだ。