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チート?いいえトーチです  作者: 取手名
35/62

乞食

「よしっ!これくらいでいいだろう。王都にもどるぞっ!」


「はいっ、ご主人様」

「了解だっ」

「疲れたッス〜」


<氷の花>は結構集まったので、昼過ぎに王都に戻ることにする。

転移は使わない。前回ダークレッドオーガ襲撃があったので転移で戻ったが、レンタルしていた馬車は無くなっていて、賠償金として金貨7枚も取られた。痛すぎる出費だったので、今回はちゃんと馬車で帰る。


王都に戻ってギルドに報告すると、ジグル王子に連絡を取ってくれるらしい。


「たしか、屋敷があるのよね?使いを出すから待っててちょうだい。多分2〜3日かかるはずだから」


オーガマに言われるまま、屋敷に戻ろうとすると、食料がないから買い出ししたいとリッカに言われて市場の方に向かった。


「この裏通りを通った方が早いッス」


裏通りに足を踏み入れた時だった。


「オラっ!!」


「イギァッ!!カハッ・・・カハッ」


路地裏で数人の男達に囲まれた2人の子供がいた。どうやら1人の子供が腹を蹴られたようだ。


「何みてんだよっ!!あぁ?」

「そうだ何みてんだ、ゴラァ」


子供は乞食か・・。関わり合いたくはないな・・・。

乞食はボロボロのガリガリでめちゃくちゃ汚れている。放って置けば近いうちには死ぬのにわざわざ痛めつける意味がわからない。


「好きにすれば良い。ただ、こんなボロボロの乞食を痛めつけて何が楽しいのか聞いていいか?」


「うるせーっ!テメェたちには関係ないだろ!!」


「確かに、ただの興味本位だ。邪魔したな・・・」


方向を変えて歩き出す。

不愉快な物を見てしまったが、自分から関わろうとは思わない。アイリス達も黙って俺の行動に続いた。


「た・・・・・・けて・・・・」


何か聞こえた。

足が止まる。

聞くな関わるなという声と、何かが反発する。


「・・・・」


「いもう・・と・・だ・・・でも・・・何でも・・何でもします!!助けて!!ヴグッ!!」


男達の1人が乞食の顔面を踏み抜いた。


「おいおい、何助けを求めてるんだ?あぁ?助けてもらえる訳ないだろ?なぁ!?にいちゃん」


アイリスとミネルヴァに目で合図をする。リッカはニヤニヤした顔をしているので後でイジメよう。


「にいちゃんって俺のことか?」


「テメェ以外にいんのか?それともそこの女達は本当は男だってんなら話は別だが・・・。とにかく関係ないだろ?」


「そいつは俺に助けを求めた。だから話を聞こう。そいつらは何をしたんだ?」


「はぁ??コイツらか?何もしてねぇぜ?ただ・・・存在している。それが気に食わねーから、せめて俺達のストレス発散に殴られてろって感じかな・・・ギャーハッハ」


あっ、屑の方だったか。

もしかしたら、店の人が商品を盗まれたパターンかと思ったが。けど商売やってる人がこんなイカツイ連中な訳ないな。


「そうかそうか、俺からしたらお前たちの存在も気に入らないんだよな」


「喧嘩売ってんのか?おい、いい女連れてるから気に入らなかったんだ。こんな餓鬼殴るより、コイツの女達を犯した方が楽しそうじゃね?」


「イーッヒヒッ、それいいねぇ」

「たまにはいいこと言うじゃん」


「たまにはってのは余計だ、ヒヒっ」


屑の数は3人。

ミネルヴァが剣を抜いて、アイリスは矢をつがえ、リッカはスリングショトを構える。

俺も剣を抜き子供の方に悠然と歩く。


1人が斬りかかってきたが、アイリスのスタンボールをくらい痺れている。ミネルヴァはもう1人を峰打ちで昏倒させた。最後の1人はリッカのくしゃみ痺れ毒丸で痺れていた。


楽勝・・・。俺は何もしてないが・・・。

問題はコイツらをどうするか・・・衛兵に突き出すのもありだが・・・。


「リッカ・・・コイツらはどうするのが一番いいんだ?」


「ウチに聞くッスか?まぁ、衛兵に突き出すのが普通ッスけど、冒険者としては森で処理するのが一番いいッスね。下手に恨みを買って後からハメられるより・・・」


「だな。衛兵に突き出しても大した罪にならなくて、すぐ出てきそうだしな・・・<転移の灯台>」


オーガ襲撃の際、帰る為に作った転移ポイントに転移する。

屋敷に1つ、自由都市ダロンの宿屋に1つ、路地裏に1つ、そして今転移してきた転移ポイントがある。

<転移の灯台>は、出せるトーチと同じ数だけ転移ポイントを設けることが出来る。今は最大4つトーチを出せるので転移ポイントは4つだ。

限りがあるので、後からステータスウインドを開いてスキルの欄から、路地裏とオーガ襲撃があった場所の転移ポイントは消さないとな。


ともあれ、乞食の2人と捕まえた男達を連れて来た。<転移の灯台>の性能だが、3m四方の地面に居る者は何人でもOKみたいだ。ただ、人数に比例してMP消費が多くなる。


「おいっ!!俺達をどうする気だっ!!」


男が叫ぶ。

正直うるさい。今はスキルの考察をしたいのに!

男の顔面を踏み抜いた。


「アガッー!!ギグァーーーッ!!!」


「うるせーなっ!乞食の子の方がまだ静かに耐えていたぞっ」


とりあえず乞食にヒールを行い、リッカにリフレッシュシャワーをさせる。


(うっわ!なんて汚い色の水だっ!)


泥水になったリフレッシュシャワーを捨てて、新しくリフレッシュシャワーをリッカがかけているみたいだ。

水の色はまだ茶色だ。


「お前達をどうするかだったな?この子達に決めて貰うってのはどうだ?」


「たっ、助けてくれっ!まっ街に戻ったら金を払う!頼むっ」


「話を聞いていたか?この子達に決めて貰うのはどうか聞いたんだが・・・決めれないならそうするか・・・」


後ろを振り返ると相変わらずガリガリだが、綺麗になった・・・・女の子達がいた。

年齢は12歳ぐらい。片方は緑の、もう片方は青のショートの髪だ。ってもまだまだ汚い感じで磨けば光りそうである。

んっ?オッドアイ・・・なのか?それぞれ緑の子は右眼が青、左眼が茶色。青の子は右眼が茶色で左眼が緑。

なんかごちゃごちゃしている。


「名前は?」


「リリ・・・です」

「ルルですのっ」


「そうか、コイツらをどうしたい?」


姉妹が言うにはもう手を出さないなら解放してもいいらしい。


「コイツらは置いて帰る。それが罰だ。生きて帰れたら見逃すでいいな?」


リリは頷いて、ルルはオロオロしている。

男達の監視をアイリスとミネルヴァに任せて、一度姉妹を屋敷に転移させて俺だけまた森に戻って来た。リッカには姉妹の監視を任せて来た。


「アイリス、ミネルヴァ、異常はないか?」


「ありません、ご主人様」

「ないなっ」


さて姉妹には置いて帰ると言ったが、そっちの方が後々面倒だ。万が一、生き残って復讐でもされたらたまらない。

どうするか・・・。

結論は1つしかなかった。


3人それぞれの首に縄をかけて木から吊るす。足元には落ちてた木でちょっとした足場を作ってやった。手は後ろ手に組ませてぐるぐる巻きにしている。

あとは<氷の花>を手に入れる際に殺したボロボロの犬の死体の血を振り掛けて完成だ。


「んーっ!!んーっんーっ!!」


最後の言葉なんて聞いてやる義理はない。

離れた位置に<聖火>を発動して、様子を見守る。


しばらくすると、来た来た。

ウインドウルフとオーガだ。

1人は暴れて足場の木が崩れてしまい、首に掛かった縄のせいでもがいて動かなくなった。

後の2人は動かないように必死になっている。

何故ならウインドウルフとオーガが獲物を取り合い戦っているからだ。


戦いに巻き込まれて足場が崩れ、また1人動かなくなった。

もう1人は必死に「んーっ!!んーーーっ!!」

って、<翻訳>スキルを持っている俺にも何語かわからない言葉を発している。


勝利したのはオーガだ。

最後に残った男の足を掴み、持ち上げる。

縄に気がついたのか、引っ張って縄から離そうとしている。


「ブチッ!」


何かが千切れる音がして、男の身体は縄から外れたみたいだ。

よかったね、オーガくん。

千切れ飛んだ頭部をウインドウルフが掻っ攫って行った。

もうこれ以上、ここにいる意味はない。

<氷の花>を1本取り出し、すり潰してその香りを3人で纏い、屋敷に帰った。


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