実感
翌日の早朝、トーチで暖を取りながらリッカのリフレッシュシャワーで汚れを落とす。
昨晩浴びたお互いのフレッシュシャワーはもうフレッシュではなくなり、こびり付いていたがこれで落ちてスッキリした。
目的地の湖までは獣道を歩いて2時間ぐらいなので昼前に着く予定だ。
「さぁ、出発するぞっ!!武器や防具が新しくなってるから慣らしながら行くからなっ」
「はいっ!ご主人様」
「わかっている」
「わかったッス」
獣道の勾配は緩やかだ。途中オークを3匹見つけたが、あっという間に倒してしまった。
あと、ヘビが出た。
ヘビといっても、そのサイズは4〜5m程ある。
咬まれる事はなかったが、巻きつかれた時は肝を冷やした。アイリスのスタンボールでヘビの力が抜けた所に、ミネルヴァが鎌首を上げたヘビの首を切り離した。
その間リッカは、「ヘビは苦手なんスよ〜」と言ってアイリスの後ろに隠れていた。
だが、次に襲ってきた1m程の鳥は、リッカのスリングショトを翼に受け、落ちて来た所にミネルヴァがとどめを刺した。
リッカは活躍してるのか、してないのか良く分からないが、少なくとも俺よりは活躍してる気がする。
「ご主人様が活躍するということは、私達が不甲斐ない証です。ですからお気になさらないで下さい」
アイリスのフォローがはいる。
その通りだ。主人が活躍しないのは当然なのである。
と、一人で強がってみたりしながら湖に着いた。
湖は学校のグランドぐらいの広さ。
その水辺には確かに透き通るような儚さの花が咲いていた。花どころか、茎や葉も半透明だ。というか光を乱反射していなければ、あると気付くのは困難なほどだ。
「気をつけるッスよ、ご主人。触ったり振動を与えるとすぐに枯れてしまうッス」
「たしか、匂いがなくならない様に、瓶に詰めて回収するんだよな?」
「そうッス。でもご主人のアイテムボックスは接触しなくても回収できるッスよね?振動も与えないからそれで回収していくのがいいッス。そうすれば何日も持つはずッス」
たしかにそうだ。
3束ほど回収して、次の<氷の花>を探す。
「ご主人様っ!!!」
アイリスが叫んだ。
危機感を感じ全員武器を身構える。
「どうしたっ!?」
「オーガです、ご主人様っ!来ますっ」
「グォーーー!!!」
来たっ!!黒い肌に5cm程の角が2本飛び出た180cmぐらいの鬼、オーガだ。
これがオーガか・・・。ダークレッドオーガよりは迫力が無さ過ぎる。
だが、この油断がいけない。
左に俺、右がミネルヴァ、俺の後ろにアイリス、ミネルヴァの後ろにリッカ。
フォーメーションを整えてオーガに近づいていく。
オーガが棍棒を振り下ろす。
身体が過剰反応したのか、オーガの攻撃を大きく避け過ぎてしまった。これでは反撃でき・・・できた。
スラッシュも使わないただの斬撃で、オーガの胸を裂く。
オーガは後ろに2、3歩よろけ棍棒を振り上げる。
振り上げた先にはミネルヴァが飛んでいて、振り上げられた腕に斬りつけた。
オーガの腕と棍棒は舞い、アイリスの強射がオーガの脳天を貫く。
まだ、油断はできない。オーガには驚異的な回復力があるのだ。後ろに倒れたオーガを頭と身体に切り分けた。
あまりにあっけない戦闘だった。それは、あのダークレッドオーガがいかに強力な魔物だったかを物語っていた。ただのオーガくらいなら簡単に倒せるぐらいに実力がついて来たみたいだ。
戦闘も終わり、<氷の花>を探す。
みんな、オーガとのあっけない戦闘に緊張もほぐれたみたいで、笑顔が増えた。
結果的に言うと、<氷の花>は25本取れた。
ジグルが何本欲しているか分からないので、ここで1泊して、明日また<氷の花>を探してから帰ろうと思う。
日がかげり始めたので、野営の準備をした。
リッカが作った料理は、麦を使ったオートミルみたいな奴と、じっくりと焼いた鹿肉。
鹿はアイリスが矢で貫いて取ってきた。
リッカの料理は意外に繊細な味付けだ。香辛料は大量に買い込んだので、焼いただけや煮込んだだけなんて料理は出てこない。
この料理の旨さが、スキルのせいなのかは謎だ。
例のごとく、寝袋に入る。
今回は上にリッカ、左にミネルヴァ、右にアイリスだ。<聖火>スキルを発動しているから4時間は大丈夫なはずだ。
俺は指以外一切動かず、リッカの身体の動きをアイリスとミネルヴァがアシストしながら、腕を胸に挟み指の動きを堪能している。
蒸し暑い寝袋の中はもうごちゃごちゃで、どの部位が誰のかもわからないほどハッスルした。
翌朝は恒例になりつつある、リッカのリフレッシュシャワーだ。少し強めのミストが口元以外に纏わり付きグルグル循環して、汚れを落とした後は身体からミストが離れていく。
物凄くさっぱりするが、やはり3人の裸をじっくりと堪能できるお風呂には敵わない。
いや、・・・・いやいや、やってみる価値はあるぞ?
「リッカ、もう一度リフレッシュシャワーをやってみてくれっ!」
「もう一回ッスか?わかったッス」
アイリスの手を取り引き寄せる。
深めのキスをしながら、いろんな場所を触ってから交わる。
タイミングを見計らってリッカがリフレッシュシャワーを発動する。
・・・・これは凄いっ!!全身をワサワサと触られながら下はアイリスが刺激を与えてくれる。
ただ、やはり目でアイリスが見えないので、お風呂には敵わない事が分かった。
実験を終えた後は、朝食だ。
様々な具材をパンに入れて食べるスタイル。
手巻き寿司のパンバージョンだ。
具材は、野菜・鶏肉・牛肉・チーズ・キノコで、ソースも辛いソース・甘辛いソース・ヨーグルトソース・酸っぱいソースがあり、細かくきざまれた好みの具材と好みのソースをかけて食べる。
全てのパターンを試したかったので、全員に違うソースをかけてもらい、4当分して全員で分けた。
「リッカ、めちゃくちゃ美味い。帰ってからまたこの酸っぱいソースを使った料理を作ってくれ」
「まかせるッス。前までは、こんな雑用しか出来なくてパーティーメンバーに申し訳無かったッスけど、今は雑用でも役に立てれるからやりがいがあるッス」
「そうですよね、リッカさん。ご主人様の役に立てるのは世界一の幸せ者です。私も、もっともっと役に立って恩返しを致します、ご主人様」
「アイリスは恩返しとか考えなくても・・・」
「そうはいきません。ご主人様は私を救って下さいました」
「そうか・・・。恩とかより、一緒に居たいから一緒に居るって方が俺としては・・・」
「イチャイチャしているところ悪いが、客みたいだぞ?」
ミネルヴァが顎で示した場所を見ると、ボロボロな感じの犬が、数十匹近づいて来ていた。
全員武器を構えて走り出す。
リッカが撃った<酒丸>(蒸留酒入りのスリングショト弾)をアイリスが矢で撃つ。
酒が犬にかかり、ミネルヴァがボムを放って着火した。
ボロボロの毛はよく燃えるみたいで、あっと言う前に炎が広がり何匹かは湖に飛び込み助かったようだ。
追撃で俺とミネルヴァが斬り伏せた。
確実に強くなっている事が実感できた。
さあ、今日もまた<氷の花>探しだ。
大量に持ち込んで、ジグル王子から金を大量にぶんどってやる。
そう決意して、クエストを再開するのだった。




