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チート?いいえトーチです  作者: 取手名
26/62

招かざる

翌日、冒険者ギルドからの呼び出しがあったので、朝からギルドに来ている。

例によってクールリュさんのところに並ぶ。

早朝ということもあり10分ほどで順番が回ってきた。


「おはようございます。クールリュさん。何か呼び出されたんですが・・・」


クールリュさんと話す際はいつも敬語になってしまう。下手な事を言って、あの般若みたいなオーラを出されたらたまないからな。


「あぁ、カナメさん。わざわざ来て頂いてすみません。今回急に呼び出したのは、前回のオーク村殲滅の依頼達成をうけて、カナメさんは冒険者ランクがアップします」


クールリュさんが言うには、前回のランクアップから間がないのにランクアップはおかしいと言う意見と、オークの村を殲滅出来る冒険者なのだから早くランクアップさせて、それに応じた依頼をこなしてもらうべきだと言う意見が対立していたが、軍配は後者に上がったらしい。


「それでですね、Eランクになるカナメさんには専属ギルド嬢がつくのですが、それは私にしておきました。問題ないですね?」


「えっ?」


「逆にえっ?ですよ!?」


「いやいや、こちらこそ、えっ?ですよ」


「問・題・あ・り・ま・せ・ん・ね?」


「・・・・はい」


正直クールリュさんしかギルド嬢を知らないので、専属ギルド嬢はクールリュさん一択だ。

でも、あの自信満々の感じがなぁ・・・。それにあそこにいる新人っぽい巨乳ちゃんも捨てがたいんだよなぁ・・・。


「ち・な・み・に、私はこのギルドでは1番人気なんですからね?今回はカナメさんが他のギルド嬢とやり取りをした事がないから、仕方なく私が担当するんです」


専属ギルド嬢が付く事にはメリットがあるらしい。その冒険者の望みや、得意な依頼を優先的にキープしてもらえる様になるとか。

それにサポートやアドバイス、情報公開なとを積極的にしてくれるらしい。

そして、ギルド嬢には担当冒険者が依頼を達成するとボーナスが出るらしく、優秀な冒険者を確保することはギルド嬢の重要な仕事らしい。

一応、優秀な冒険者として、クールリュさんのお眼鏡に叶ったってことかな?



ギルドからの帰りに食料品店に立ち寄り、食料品を買い漁った。

リッカがいるので料理に期待が持てる、金貨1枚ほど買って宿に戻る。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


「ギルドの呼び出しは何だったのだ?」


「ウチの事ッスか?」


「違う、ランクアップしたんだ。Eクラスになったそうだ」


「って事は、専属ギルド嬢が付くッスね?」


「あぁ、クールリュさんに決まった」


「ご主人様はあの絶壁エルフがお気に入りでしたからねっ」


珍しくアイリスが棘のある発言をする。ヤキモチかな?


「違う違う、ギルドに行ったら決定してたんだよっ!」


「そうですか、ならいいのですが・・・」


不機嫌なアイリスは怖いので、話題を変えて王都へ行く準備をした。





下に降りるとクリスさんが待っていた。

護衛の人も10人ぐらいいる。何でも、王様から賜る物を受け取りに行く時に万が一があってはならないそうで兵士も通常の倍の数を用意したらしい。


「では出発しますか。カナメさん準備はいいですね?」


クリスさんの言葉に従い、馬車に乗り込む。

今回の馬車は3台だ。真ん中が俺たちとクリスさんで、前後が護衛の馬車みたいだ。

乗り込んだすぐに馬車は出発した。


「いや〜、いい天気ですな〜。今日は隣町まで馬車で行って宿泊です。・・・そういえば、カナメさんは王都に住まわれる予定ですかな?それともダロンに?」


「基本的にはダロンの街を拠点にしますが、王都にもたまには顔を出す感じですね」


「ほぅ・・・王都までの道を何でもない事の様に言われるのですね・・・何か移動手段でも・・・いやいや詮索はしない約束でしたな」


流石クリスさん、感が鋭いな。転移できる事は言うべきか、言わないべきか・・・。


「まぁ、手段はいろいろ・・・。もし一瞬で移動できると言ったらどうします?」


「一瞬で移動できる手段・・・転移の魔道具をお持ちなんでしょうか・・・」


「転移できると言ったら?」


「・・・!!!!!それは・・・もう恐ろしい事になりますな。転移と言えば未だ3人しか使えないほどのレアスキル。もし自由に転移できるのなら、王であろうとどんな要人であろうと暗殺できるので安全では無くなります。つまり、国を挙げて抹殺されるでしょうね・・・」


「・・・」


「なぜ私にその事を?」


「・・・今ちょっと後悔してますよ。制限はありますが、王都とダロンの行き来を有料で受け付けようかと・・・」


「なるほど、それは・・・ありですね」


クリスさんが悪い顔をしている。もちろん秘密を守ることが条件だ。

話し合いの結果、月に一回大金貨1枚で転移させる約束をした。

王都に行く際にかかる、クリスさんの護衛の料金が大金貨1枚ぐらいかかるらしく(往復8日、護衛の人数×5人)、その他の必要経費や、危険性、時間を考えると得だと喜んでいた。


「で、何故私にその事を教えたのですか?まだ答えは貰ってませんが・・・」


「ん〜まず、月に大金貨1枚あればなんとか生活できるっていう事が大きいかな、それからクリスさんには1つ秘密がバレてるからもう1つ増えてもっていうのがある。それから何より、自分の利になる情報を他人に教える事はないって思うんだよね。他の商人にはない大きなアドバンテージだし・・・」


それに何よりクリスさんの商会であるアール商会はデカくなる。何かあった時には後ろ盾になってくれると期待している。




馬車はコトコト進んでいく。

2日目、3日目と無事に進んでいき、4日目には無事レヴィアモスに着いた。

今回は謁見の間には向かわず、直接使者が宿を訪ねて来るそうなので、それを待つ事になった。


「やぁ、カナメ殿はいるかな?」


宿のラウンジに現れたのはアイツだった。




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