野営
昨日は疲れていた為、翌日の今日ギルドに報告をすませた。
ゴブリンの討伐達成報酬は相変わらずの大銀貨1枚。素材と魔石の買い取りが大銀貨3枚。合計は日本円で4万円だ。実質半日だったのでまあまあだと思うかもしれないが、3人で4万円はキツイ。俺の剣ももう歯が欠けているので明日買い替えれば赤字になる。
唯一の救いは、
「おめでとうございますっ!これでカナメさんはFランクに昇格です。巨乳も同じく昇格ですよっ」
「クールリュさん・・・巨乳に何か恨みでも「ありませんよ」ある・・・ならいいです。すっすみませんしたーっ!」
目が座ってる!!平気で人を刺せる人のいや、エルフの目やっ!
・・・気を取り直して、ギルドでは自分のランクの上下1ランクの依頼を受けれるので、ランクが上がってEランクまでの依頼を受けれる様になった。なるべく高い依頼を受けないと金が溜まらない。その為に俺の武器を新しくしに武器屋に向かった。
「おまえっ、もう武器をダメにしたのかっ!?ちゃんとスキルは使っとるか?」
武器屋のずんぐりヒゲおやじが俺の歯が欠けた剣を見ながら、呆れたように聞いてきた。
「何を当たり前の事をっ!」
「いや、キサマのスキルの使い所はおかしいぞ?」
「はぁ?ミネルヴァ、見てただろ?俺の戦い方、泥臭い戦い方だが要所要所にスキルを使ってたろ?」
「いや、そうではなくてだな・・・トドメなどガッツリ当てるときにはスキルを使って、そうじゃない時はMPを温存するのが普通だが・・・キサマは・・・」
「・・・逆だな」
「武技スキルを使うと、武器が魔力を帯びますから武器の消耗をかなり抑える事ができるのです。ご主人様」
「えっ?アイリスも知ってたの?」
「はい・・・何か戦いにポリシーを持っておられた場合、失礼なことになるのではと思い、言いだせませんでした・・・申し訳ございません、ご主人様」
「まじかぁ〜、なるほどなっ!おやじっ、壊した剣と同じヤツあるか?」
「この際じゃ、コレなどにしたらどうじゃ?」
そう言ってずんぐりヒゲおやじが出した武器を鑑定すると鋼鉄の剣だった。柄の意匠も少しだけ手が込んでいた。
「値段が高いと買えないんだが・・・」
「この壊れた剣を下取りして金貨5枚でどうじゃ?」
日本円にして50万円、所持金が130万円ぐらいあるはずだから買えるっちゃ買えるが・・・貧乏になってアイリスやミネルヴァを手放す事になるのだけは嫌だ。
でもこのままではジリ貧か・・・。
「・・・買おう」
「鞘はサービスでつけといたるわい」
これで武器も揃った。
もう一度ギルドに戻ってEランクの依頼にチャレンジするか。
ギルドで受ける依頼はオーク討伐依頼だ。これは3匹で大銀貨3枚、つまり1匹1万円なのだ。そして何より肉がそこそこ高く売れる。魔石込みの値段で、1匹1万2千円ぐらいになるのだ。しかも常時達成可能依頼(依頼が出ている限り、いつでも何回達成してもいい)なんだ。
数日かけて狩れるだけオークを狩る。テントなどは買う余裕がなかったので、寝袋と5日分の食料をアイテムボックスに収納して馬車を使わずに歩きでポイントに向かった。
武器を買い、依頼を受け、寝袋や食料品を買い込み徒歩で到着したのはもう夕方だった。
今日は野営の準備をして早めにねる。ちょっと試したいこともあった。
「よしっ、ここなら岩陰になってて大丈夫そうだな。いくぞっ!?聖火っ!!」
MPを限界である75込める。ファーストジョブの先導者によって、トーチからの派生スキルの消費MPは通常の3/4になるので、本来ならMPは100必要だった。先導者はなかなかの職業だな。
聖火の炎はトーチがもっと薄く大きくなった感じだ。その分照らし出す能力も低下していて、薄暗い。
コレで4時間は魔物が寄ってこないはず・・・。以前は最大で3時間だったが、王都までの野営で使ったのでレベルが上がり4時間まで効果時間がのびた。
聖火を使っているとはいえ、怖いから一応交代で見張るか。
「最初はご主人様に見張りをお願いしてもよろしいでしょうか?次が私で、その次をミネルヴァ、お願いしますね?」
「いいぞっ!俺は最初だろうが気にしないから順番はアイリスに任せる」
「ふんっ!キサマはお気楽でいいなっ!アイリス、それで了解した」
「俺がお気楽?そんな事はないぞ?4時間度に起きるのは結構くるものがあるからな」
「えっ?ご主人様っ!?それはいけませんっ!!ご主人様はゆっくりなさって・・・」
「大丈夫だアイリス。気遣ってくれてありがとう。でも4時間毎に聖火はかける。これは決定事項なっ!」
どうやらアイリスは気を使って一番キツイ順番を受け持って、俺にはゆっくり寝てもらう考えだったみたいだ。
だれがキツイとか関係ない。だって今から森で3P運動会だからクタクタになるはず。その代わりに警戒する事の負担を減らす。その為のキツさなどなんでもないっ!!
結局その日はモンスターが襲ってくる事もなく、自分が寝るはずだった時間を使って、慎ましく2回づつ味わってねむった。
翌日は、早めにおきた。
アイテムボックスから水が入った盥を出し顔を洗い、アイリスが用意してくれた朝食を食べる。アイリスが用意した朝食は、ハム・野菜・スクランブルエッグを挟んだパンが1人2つと、野菜のスープ。味が薄い・・・。アイリスが悪い訳ではない。この世界には調味料が少なく、あったとしても高いのだ。贅沢など言えずみんな黙々と食べ、オーク狩に向かった。
「アイリス、オークはどれくらいの距離から発見できるんだ?」
「はい、だいたい100〜200mでしょうか・・・。風の流れにもよりますので、正確な答えが出せず申し訳ありません」
「そんな事で責めないから、一々謝るな」
「はい、ご主人様っ!」
「キサマ達は朝から・・・もう少し緊張感をだな〜」
アイリスとイチャイチャしてたからミネルヴァが嫉妬を?んな訳ないか・・・。
「ご主人様っ!・・・いますっ。左前方・・・距離は100m程です。ですがコレはっ・・・3匹います」
「3匹もか・・・」
「はいっ!それから多分捕まった人間が2人・・・」
「まじかっ!・・・助ける努力はするが、あくまでも最優先は自分達の命だっ!慎重に近づくぞっ!?」
「はいっ」
「わかっているっ」
近づくにつれてだんだんと様子がわかってきた。オーク3匹に捕まった女性が2人、手を縛られて紐で繋がれて歩かされている。
「いつも通りいくぞっ!」
俺たちはオークに戦いを挑んだ。




