謁見
明朝目覚めるとアイリスの胸の中だった。
「おはようございます、ご主人様っ。昨日は・・・その・・・激しかったです。もしかして私では満足出来ずに溜まっておいででしたか?そのせいで新しい奴隷を・・・」
「ち、違うっ!アイリスに不満なんて・・・は、激しかったのはアレだっ!その・・・なんだっ、新しい奴隷を買うと言ったのにだな、アッ・・・アイリスの反応が普通だったのが・・・」
顔を挟む胸の圧力がギュッと高まった。
「ふふふっ、ちゃんとヤキモチ妬きましたよ?でも、私のこと蔑ろにしないって言って頂きましたのでっ・・・」
「ずいぶん楽しそうだな?」
「楽しいではありません、嬉しいんですっ」
「アイリスのことは蔑ろには絶対しないが、奴隷は今後も増やすつもりだからなっ!!」
「はいっ!」
こうした一幕があり、準備をして王都に向かった。
王都レヴィアモス、女系の王と男系の王がそれぞれいて、二つの国がヒョウタンの様になって出来ている国。
それぞれの王の系譜は元を辿れば1つに集約されるらしい。2つの国とは言ったが、2人の王がいる1つの国と言った方がしっくりくるとクリスさんは言っていた。
門の前の行列ではなく別の入り口に馬車は着き、なにやら封筒を渡していた。
「これからしばらく待ちますので・・・さて、この国の説明はどこまでしましたかな?」
この国が栄えた理由は大きな湖。ヒョウタンの括れた場所にそれはある。
この湖には神が作った雌雄2匹の龍がいて、1匹殺されてしまう。それが雄だったのか、雌だったのか定かではないが、残された龍の悲しみを癒すために建てられた祠周辺に人が集まりだし町が出来た。そこの祠の巫女の子孫が今の王様達らしい。
そしてその湖に流れ込む川、その脇に広がる平野。少し内陸に行くと小さな山脈がある。
水産資源と広大な土地から取れる農作物。川による物流の拠点にもなっているらしい。
ただ、内陸の山脈のせいで雨季には氾濫も多いらしい。
「なるほど。面白い話をありがとうございますクリスさん。今回解呪する王子でしたか?そうすると男系の?」
「その通りです。こちらの門からレヴィアモスのアモス、男系の王が治める地域、グルリと回りますとレヴィアモスのレヴィ、女系の王が治める地域へと入ることができる様になっております」
30分ほど待たされたかな?変な白装束を着た人が迎えに来たみたいだ。クリスさんが対応して、馬車の中を確認したみたいだがしばらく経って進みだす。
城門の前でまた数十分待たされ、ちょっとイライラしだした頃、城門脇にある扉から中に招き入れられた。
「ようこそいらっしゃいましたクリス様。そちらが例の?」
「えぇ、早速謁見をしたいのですが・・・」
「そう急がれる事はありますまい」
「そうは思いません。ジグル様も、一刻も早い解呪をお望みでしょうし、それを邪魔したい輩の妨害もないうちに・・・」
「そうでございますか・・・では早速・・・」
またしても数十分ほど待たされて、今度は謁見の間に行くらしい。いや、わかってるけれども何か釈然としない。もっとスムーズに出来んもんかね?
「クリス様及び解呪師他入りますっ!!」
ドアを守る兵士は告げると、謁見の間の扉がゆっくりと開く。と言っても人1人が通れる程で扉は止まった。
目線を伏せて歩いていくのが礼儀らしい。そのまま進み、止まれと言われて止まり跪く。
「顔を上げよっ」
言われて顔を上げるとそこには、外巻きにカールした白い髪の痩せた爺さんがいた。
「ワシはアモスの王!ユリシス三世であるっ!呪いを解ける者を連れて来たと聞いたが?」
「はい、王様。アール商会のダロン支部長のクリスでございます。解呪できる可能性がある人物は、この冒険者カナメ殿にございますっ」
多分名乗るべきなんだろうがタイミングわからんっ!
なんか王の横の爺さんが、「これっ!名乗らぬかっ!」って言っていた。
「あーっと、納得出来ない事があるんだがいいかな?第1に解呪して欲しかったらそっちから伺うべきじゃないかな?そしてさんざん待たされた挙句、目線を伏せてかしこまりながら名乗れだと?先ずは苦労して来たということに対する礼から始まるべきじゃないの?」
言った!!言ってやった!クリスさんには悪いが、ここまで下手にでたくない。
「ふぉっ、ふぉっ、言う通りじゃな。人として礼が先じゃったな。すまぬっ!そしてわざわざ来てくれて感謝する」
「・・・!!!あ、あぁ・・・えっと、カナメ、カナメ・クロサキです。こちらこそ無礼な態度で申し訳ありませんでした」
王様のくせになんですぐ謝るんだよ〜!?まじか!この展開は予想してなかった・・・。ヤバイっ、あの王の後ろから後光が見える気がする。
「ふぉっ、ふぉっ、それで解呪はいつ頃になるのかのぉ〜?」
「いつでもいいですよね?ねっ、カナメさん・・・カナメさんっ!!」
「あ、あぁ!いつでもいい・・・です。すみませんね。粋がって噛み付いた王様が、とんでもなく素晴らしい人格者で驚いてしまって・・・」
「人格者ではないよ、ふぉっ、ふぉっ。愛する我が子が助かるなら、どんなことでもできるのじゃよ。親と言う奴はの〜」
まじでいい王様っぽい。俺の言動に焦ったクリスさんも面白かったが、この王様も別の意味で面白い。
解呪はこのままジグル王子が到着次第に、この謁見の間で行なう事となった。
「ジグルが来るまでに少しあるで・・・話でもせぬか?若い冒険者よ」
「カナメです。いいですよ」
「もし解呪が成功したら何を望むのじゃ?ワシはこの呪いを解いた者には、望みの物を渡すとしているのじゃよ」
「カナメ殿は特に要求はされておりまっ「ワシはカナメ殿に聞いておるんじゃ」・・・はい」
「クリスさんの言う通りですよ?あっでも・・・」
(まだ死にたくはありませんっ!どうか神様っカナメさんが姫奴隷が欲しいとか言い出しませんように・・・)
クリスさんに向かって「ニッ!!」っと笑いかけた。
(あぁ〜、終わった〜)
「そうですね〜、大金貨10枚!それでいいです」
「はぁ?安っ!いや、庶民からしたら大金なのだろうが・・・。いや、我々にとっても大金に違いないが、もっと無理難題を言い出しかねんと思っておったからビックリしたわい!!」
「冒険者なんてそんなもんです」
「はっきり言っておくぞぃ?隣国から高名な解呪師を1人貸してもらうだけでもそれ以上したぞぃ。しかも解呪出来なかった。この話を聞いてもさっきのが望みか?」
「何を期待しているかわかりませんが、俺は冒険者です。愛する者と帰る場所さえあればそれが幸せなんですよ」
「なるほどのぉ・・・「ジグル王子、入られます」」
「ジグルですっ、父上」
「おうっ、ジグル・・・。カナメ殿、面白い話を聞かせてくれて礼を言う」
王様はそう言ってジグル王子の方に向き直った。今度はジグル王子と少し話している。
ジグル王子だが、いわゆる好青年。すらっとしていて長い手足、わずかにウェイブした金髪と長いまつ毛・・・イケメンだなっおいっ!!そりゃ呪いかけられるわっ!!
鑑定、ステータス確認、呪いは・・・、
EDの呪い:Lv5・・・EDになる
蠱毒の呪い:Lv7・・・衰弱・虚弱になり、呪いにかかったあと3年で死に至る(残り1年と17日)死に至った場合はその周囲にいる人間にも蠱毒が感染する。解呪した者もまたこの呪いにかかる。
いや〜、詰んでるよこれっ!どうすんの?俺もこの呪いにかかるじゃん。それを<好転>させればいいのか?これはリスク高いなっ。死んだ時に近くにいたら感染るから誰も近寄らない、孤独と蠱毒をかけてあるのか・・・。それにEDはキツイって、王族で子供産めないのはキツイでしょ!いや待て、イケメンの遺伝子が減れば相対的に俺がってアイリスがいるからいいか。よしっ、泣く泣く解呪しますか・・・。
「お前が解呪師か?」
高圧的だなっ!呪いにかかったイケメンだからって、みんながみんな優しくしてくれると思うなよ?
「そうですが・・・どの様な呪いなんですか?」
「蠱毒の呪いだ。あと1年と少ししか生きられない。ちなみにこれは他言すれば死罪だっ!いいなっ?」
「ジグルっ、カナメ殿に失礼な物言いをするでない」
「しかし父上っ!・・・わかりました。解呪できるか?」
お前、王様の話を聞いてたか?そっちがその気なら・・・
「それで全てですか?正直に言って貰わないと失敗してしまいますよ?」
「あと1つ、EDの呪いだっ」
「EDの呪い?はて?どの様な呪いなのですか?」
「・・・い・・・のだ・・・」
「はい?」
「たっ、勃たないのだっ!!いいから早く解呪してみろっ!」
「はぁ・・・あのですね。いくら王子といえど、解呪したら感染ってしまう死の呪いを解いてもらうんです。もう少しましな言い方が・・・」
「すまんのぅ、カナメ殿。ジグルには後で言い聞かせるから・・・」
「・・・?お前、何故蠱毒を解呪したら感染ることを?父上か?」
「違いますよっ、鑑定したから分かるんですよっ」
「なに〜っ?じゃあEDの呪いの詳細も分かっていて言わせたのかっ!」
ジグル王子が物凄い形相で迫ってきたが、文官や兵士によって止められていた。王は「すまぬ」と目で伝えて来たので、少し気が済んだ。
「冗談は置いといて、解呪に移るので動かないで貰えますか?あっ、それから多分気絶するのでその場合は・・・」
「私が受け止めます、ご主人様」
「よしっ!」
さすがアイリス分かってるなぁ〜、さてやるかっ!!
<好転>!!