手前の街
王都手間の街の名前は、パスルパス。人口は1万人ほどらしい。宿に着いた俺とアイリスは街の中心部にある服屋に来ていた。
「なるほど、王都に近いからいい服がたくさんあるな・・・アイリスも好きな服買っていいぞ?」
「私はこの前買って頂いたものが・・・」
「良いから良いから。楽しむのは俺だし、きにするな」
「わかりました・・・」
何度も俺の好みを聞いてこなくていいのに・・・。
アイリスは良さげな服を見つけるたびに、俺に聞いてくる。はっきり言って俺にオサレのセンスはない。オシャレなんて自己顕示の最たる物で他人に媚びてる感じもするからあまり好きではない。だが、アイリスが着るなら別だ。
その媚びや自己顕示が俺のみに向いているからだ。・・・俺のみに向いてるはずだ。多分・・・向いてなかったら引きこもる自身あるぞっ!?
俺の分もアイリスに任せて金貨1枚・・・。日本円で10万円、けっ結構な買い物だな。まあいい、夜の楽しみの為、バックはあるはずだ。
その後、クリスさん達との夕食までまだ少しあったのでアイリスは宿に帰し、俺は1人でふと立ち寄った場所が奴隷商館だったので見学することにした。あくまでも偶然立ち寄ったのだ。
「いらっさ〜いザムァス!!」
「バッ・・・あっ・・・あぁ、見学だけだが問題ないか?」
危ない危ない、危うく化け物と叫びたくなった。奴隷商人?の格好は一言で言うと、カラフルなクジャクの羽を付けたカエル。うんっ、これで間違いない。腰の剣に手が伸びかかった。
「むぉちろん、問題ごザ〜マせん」
「一通り見ることは?」
「かの〜でごザマスよ?」
ということで、見せてもらう。
地下に降りていくと、檻に入れられた奴隷達が並んでいた。
「全員並ぶザマス、お客様にアピールするザマスよっ!」
手前の方にはガタイの良い偉丈夫が一つの檻に1人入れられていた。
はっきり言って男はいらんっ!その奥が期待の・・・獣人の男・・・いらんっ!・・・えっ?終わり?と思ったら下の階があるんかいっ!
お待ちっかねっ♫お待ちっかねっ♫下の階には・・・メスゴリラっ♫・・・メスゴリラかよっ!!いらんわっ!!あっ?でも奥には綺麗なお姉さん・・・。
綺麗なお姉さんは腕を胸の前で組み傲慢な感じだなっ、いらな・・・きっキープだな。だって足がめちゃくちゃ綺麗なんだもん。
他には・・・んっ?全身拘束具?
「あぁ、あれザマスか?あれは最近入荷したばかりでして、なんでも敗軍の指揮官の1人だったとか。教育がなってませんザマスので、あぁやって拘束しているザマス」
「顔を見たいな」
「かしこまりザマス」
ザマスは部下に命じ拘束されている女の顔の拘束具だけ外した。
「ダッ・・・ダークエルフっ!!まじかっ!」
「えぇ、ダークエルフザマス」
そこには褐色の肌に金色の目、髪は灰色で、もちろん耳はエルフ耳の女がいた。
拘束具は完全には外されていないが、それでも美人とわかるぐらいに美しい。胸もアイリスほどではないが、そこそこある。いや、デカイ方だな・・・。欲しいっ!!
「いくらだ?」
「流石お客様。教育はまだ完全ではありませんが、そこそこ行き届いていると自負しておりますザマス。敗軍の将は犯罪者とみなされる為、犯罪奴隷となっており、自動的に性奴隷となっておりますザマス。しかも犯される前に我が商会が獲得致しましたので、まだ処女ザマス。確認済みザマス」
「だからっ!!いくらだと聞いているっ!」
「これだけの奴隷ですと、大金貨7枚はほしゅうございますザマス」
・・・700万っ!!そんな金は流石にないぞっ?クリスさんに相談するか・・・。いや、呪い解呪が上手くいけばあるいは・・・。
「わかった、支払う。だが今は金がない・・・10日、いや5日ほど待って欲しいんだが・・・」
「私どもも商売でして、確実に売れるか分からない約束はできかねますザマス」
「大金貨1枚・・・手付けだっ!5日後にはこれ以外に大金貨7枚払うっ!それでどうだ?」
「んまぁ、そうザマスね〜・・・5日後でございますね?わかりましたザマス」
大金貨1枚を払い奴隷商館を後にした。
俺の所持金は金貨4まいとちょっと。日本円にして40万円程が全財産になってしまった。
夕食は普通に護衛の人達も含めてクリスさんにご馳走になった。大衆食堂よりももっと格式が高そうな場所だ。出て来る料理も豪勢だったが、日本の食事に慣れていた俺には薄味・・・いや、バリエーションが少ないのか。
とにかくその料理を腹いっぱいになるまで食べた。アイリスも遠慮することなく食べれていたので、クリスさん達の気遣いに感謝した。
食事が終わって護衛の人達はこのまま酒を楽しんでいくみたいなので、アイリスは宿に帰し、クリスさんと2人きりにさせてもらった。
「大金貨7枚ですか・・・。えぇ、売れる奴隷でしたらそれぐらいの金額が付きます」
「ぼったくりではないって事ですね?大金貨7枚を解呪での報酬で・・・」
「大丈夫でしょう。寧ろ少ないですね・・・。高名な解呪師はもう試したでしょうし、打つ手なしという状況ですので・・・。なんなら私が個人的に融資いたしましょうか?」
「いやいや、それは・・・解呪出来なかった時のリスクが余りにも高くなるじゃないですか・・・。最悪、アイリスを手放さないといけなくなるし・・・」
「残念ですね〜」
その残念はどんな残念だよっ!!怖いよっ、目が笑ってないからっ!!
「そうですね〜その奴隷を私が買って、解呪成功の暁にはプレゼントするのはどうですか?もちろん料金は頂きません。無理なお願いをしているのは私ですから」
「・・・なんか今後、知らない内に周りを固められていそうで怖いんですが・・・お願い・・・出来ますか?」
「かしこまりました。では私は今から動きますので、明朝またお伺いしますね?」
そう言ってクリスさんは出て行った。
宿に着いてアイリスにはその事を伝えた。反応が普通だったのが気になる。
「新しい奴隷が増えると、ご主人様を独占できなくなってしまいます」
などというセリフは聞こえて来なかったので、ちょっと胸が締め付けられながら、胸に締め付けられて寝た。