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もふもふ異世界料理人 しあわせご飯物語  作者: りょうと かえ
貝殻の国、料理対決

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題材と思惑

 対決の場は、ライブ会場みたいなつくりだ。

 私たちのいる場が少し高くなっており、観客は立ちながら見物している。


 イシュム大公は魔法陣の中央に立っていた。

 同じ高さの審査員席が右手側にあり、見知った顔もいた。


 アリサは当然、真ん中に陣取っていた。

 だらんと腕を出し、とろんとした瞳でこちらを見ている。


 アリサの右隣の席には、王様が愛想よく手を振りながら座っていた。

 その後ろには、鎧を脱いだベルツさんが控えている。


 左隣は空席だった。恐らくイシュム大公自身の席だろう。


 他の二人は、見覚えのない人だった。

 でも、見当はつく。


 一人は三十くらいのお兄さんで、羽飾りを帽子に着けていた。

 大広間の時に見た、天山の国の衣装に近い。

 きっとグリフォンで飛び越した、天山の同盟国から来たんだろう。


 もう一人は、二十を過ぎたくらいのお兄さんだ。

 深い青をかっこよく着こなしている。

 彼は貝殻の国に近い人だ。


 つまり天山の国が二人、貝殻の国が二人ということだ。

 アリサは、まず中立だろう。

 イシュム大公は宣言通り、審査も公正中立にしたわけだった。


 大公はマイクを使っているかの大声で、会場中に呼び掛ける。

 きっと、これも魔法の一つだ。


「さぁついにやってきた、料理対決! まずは栄えある神祖に仕える料理人、彼方!!」


 会場に向かって、私は礼をする。

 数千人くらいはいるだろうか、来るまでも思ったけどかなりの熱気だ。

 それに近くの観客の顔は、はっきり見える。


 観客には獣人族が混じっていた。

 うさぎやきつねの姿だと、目立つのだ。


 暑い日なので、人々は片手にコップみたいなのを持っている。

 木皿に食べ物を持つ人も多い。まさに、一大イベントといってよかった。


「もう一人対するは貝殻の国の料理人、トモエ!」


 巴姉さんは優雅に服の裾をつまみ、礼をする。

 そのあたり、本職の外交官なだけはあった。


「対決の題材、これがなければ始まらない! お二人とも、調理場に移動してください!」


 高鳴る胸を抑えながら、キッチンへと移動した。

 見たところ、コンロとオーブン、水場にまな板が揃っている。

 アルミ製じゃなくレンガみたいな造りだけれど、現代日本のキッチンは再現されている。


 台の上には、様々な食材が乗っている。

 パンや野菜、肉、魚介類も一通り揃っていた。


 他に台の上には、抱えられるくらいの黒塗りの箱が置いてある。

 この中にお題の食材が入っているのだろう。


 冷蔵技術のないレムガルドでは、生ものは不安がある。

 加熱することが前提の食材が、箱には入っているはずだった。


「さて、制限時間は一刻。題材は――じゃがいもだ!!」


 黒塗りの箱を、私はさっと開ける。

 確かに小ぶりのじゃがいもが、いつくも入っていた。


 形は揃っておらず、日本産よりもかなり小さい。

 レムガルド産なのは、間違いないだろう。


 それにしても、じゃがいもとは運命を感じさせる食材だった。

 一番最初にニナとアリサに作ったのが、じゃがいもの入ったスープなのだ。


 もちろん、イシュム大公が知って選んだわけはなかった。

 彼には彼の考えがあるはずだ。


 じゃがいもの一つを手に取り、回しながら眺める。

 すでに土と芽はきれいに落としてあった。


 制限時間の一刻は、地球時間で約二時間だ。

 時計やキッチンタイマーは持ってきている。


 問題はやはり、何を作るかだった。

 じゃがいもを使う料理は、かなりの数に上る。

 煮ると焼くの両方で使える食材なのだ。


 ああ――なるほど、じゃがいもを選んだ理由がわかった。

 観客の木皿には、皮付きのジャガイモが乗っている。

 中には皿を掲げながらアピールする人もいる。


 横を見ると、巴姉さんも会場に目をやっていた。

 同じことに気付いたようだ。


 じゃがいもの販促なのだ、全てが。

 生産性に優れるじゃがいもだけど、地球でも普及には時間がかかってる。

 南米大陸から来て百年以上、食卓にあがることは稀だったのだ。


 今からは想像もできないが、かつてアイルランドそのものを左右した作物だ。

 北ヨーロッパ、アメリカもじゃがいもの生産性の利益を大きく受けた。


 大航海以後に広がった地球でも、それほどに影響力があるのだ。

 中世のレムガルドで広がれば、影響は計り知れないだろう。


 見た目がきれいじゃないということで、最初はじゃがいもは嫌われていた。

 レムガルドでも同じだろうが、神祖や王様が率先して食べれば印象は違う。


 さらに、私たちの料理法を盗むつもりだろう。

 神祖や各国の有力者も食べた料理法! と銘打てば宣伝効果も大きい。


 う~ん、商売人だなぁ……。

 私と巴姉さんの勝敗に関わりなく、じゃがいもは売れるだろう。

 それがそもそもの狙いなのだ。

 うまく使われた感は否めない。


 巴姉さんも肩をすくめて笑った。

 一本取られた、とでも言いたげな表情だ。


 でも思惑はどうあれ、対決は対決だ。

 作る料理をすぐに決めて――取り掛からなければならないのだった。

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