4日目
4日目、テストが終わると、僕は3組の廊下の前で、西村さんを待った。
3年生のフロアには、部活に向かう生徒はごく一部で、それ以外は皆、図書室に行くか、帰るかだった。
西村さんは教壇のところで先生と話している。
彼女より先に、先生が僕に気付いて、それから西村さんがこちらをむいた。
そして、西村さんが出てくるより前に、松本が出てきた。
「あれ、前川じゃん。どうしたの?」
「西村さん待ってる」
「え、待ってんの? ついにお前らくっついたの?」
「そういうんじゃないけど、今日は用があって」
とにかく松本や部活の仲間はこの手の話が大好きで、当時からよくからかわれたものだ。
僕が気にしなさすぎたのかもしれない。
「あんまり浮かれてんなよなー」
松本はそれだけ言うと、先に帰っていった。
やがて、福本先生と西村さんが一緒に出てきた。
「お待たせ!帰ろ!」
「気をつけて帰れよー」
と、福本先生が僕たちを見送った。
昇降口に向かう間、何人かにちらちらと見られたのは知っている。
「で、何買うの?今日は」
「うーん、ネクタイかなあ。お父さん、わたしがあげたネクタイしかしないんだけど、最近プレゼントサボってたから、全部ボロボロになってきちゃって」
西村さんはそう言って、肩をすくめた。
「それ、僕いる?」
「男性の意見が欲しいから」
ここで、当時の僕は、中・高と制服が学ランでネクタイをしたことがなかったことを理由に、「僕は使い物にならないよ」と言った。
しかし24歳の僕は、ネクタイをしたことがある。それで、
「まあ、僕でよければ」
という返事をした。
今になればわかる。すべて、僕と一緒にいるための口実だったのだ。
彼女の告白に2回「ごめん」と言い、それでもなお彼女と友達でいることを選んで6年経った今なら。




