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3日目

3日目の朝は小雨が降っていた。

僕が電車に乗ると、西村さんはロングシートの端っこに座って、生物の暗記をしているところだった。

「おはよう」

声をかけながら前に立つ。僕が座るスペースはなさそうだ。

「あ、おはよう!」

「追い詰められてんの?」

「最後の確認だよ」

西村さんは少しむっとして答えた。それから、参考書を鞄に片付けてしまった。

「あれ、確認はいいの」

「だって前川くん来たし」

「僕に気を遣わなくていいよ」

「別に気を遣ってとかじゃない。この電車に乗ったら前川くんに会うってわかってるんだからさ。一人で勉強したければ時間ずらすよ」

西村さんが僕を見上げて、そう言った。

なんとなく覚えている会話だった。当時の僕はこの言葉の奥底の本当の意味なんか考えてはいなかったけれど。

結局、その日はそのまま乗り換えまでは座れなかった。

乗り換えた先では2人とも座って、なんとなく話をしていた。

「あ、そうだ。明日テスト終わってから暇?」

ふいに西川さんが尋ねる。明日はテスト最終日だ。

「ああ、うん。もう部活もないし」

「買い物付き合ってよ」

「いいけど、何買うの?」

「お父さんの誕生日プレゼント!」

そういえば、そんなこともあったなあと思いながら、僕は「なるほど。了解」と気のない返事をした。

「じゃあ、明日テスト終わったら駅で待ってるね」

西村さんがそう提案してきた。

「え、学校でいいじゃん。廊下で会えるだろ」

「本当にそれでいいの?」

西村さんが不思議そうに尋ねた。

「逆になんでダメなの?」

質問に質問で返すのは僕のポリシーには反するが、聞いた。

「だってさ、変な噂がたってるよ。学校から一緒に出たら、また何か言われるよ?前川くん、何も言われたことないの?」

僕はすぐには返事をしなかった。

西村さんと付き合ってるのか、と聞かれたことは、何度もあった。

あの頃の僕は、「仲がいいだけだよ」と答えていたはずだ。

僕は何も思っていなかったけれど、片想いをしている西村さんは、この質問を受けて、僕とは全然違う感情を抱いたはずだ。

「……そんなこと、今更気にするかよ。こそこそ待ち合わせる方がよっぽど噂になるよ」

「あ、ごめん……。やっぱり言われてるんだ……。わたしのせいだね、ごめんね」

僕の言い方がきつくなってしまったせいで、彼女は心底申し訳なさそうに、何度も謝った。

「いや、だから、僕そんなこと、気にしてないからね。明日学校から一緒に帰ろう」

今度は僕からちゃんと伝えた。

西村さんは頷いた。

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