高校2年生、春
高校1年最後の席替えで隣同士になった僕たちだったが、4月のクラス替えですぐに離れ離れになった。
4月のある日のこと、帰りの電車で西村さんを見かけた。F駅で乗り換えるまではバスケ部の仲間がいたから、乗り換えた先で声をかける。
「西村さん」
ホームに上がる階段の途中で追いついた。
「お!わたしの名前、覚えてたんだ」
西村さんはからかうようにそう言った。僕たちは一緒にホームへ上がり、電車を待った。
「さすがに覚えてるよ」
「でも残念だなあ。せっかくいいライバルに会えたと思ったらもうクラスが離れた」
西村さんは心底残念そうにそう言った。
僕たちは1年の最後のテストで点数を競っていたのだ。合計点は10点差で西村さんの勝ち。でも、数学と世界史だけは僕が勝った。
「これからも点数くらい勝負できるよ」
「あ、そっか。メアド、教えてよ」
こうして僕たちはようやく、連絡先を交換した。
でも、ほとんどメールすることはなかった。登下校の電車がいつも一緒だったからだ。
朝の電車が一緒になり始めたのもこの頃だ。空いている電車に乗りたくて、時間をどんどん早めたら、僕は6:40の電車に行きついた。その電車には、ほぼ毎日隣の駅から西村さんが乗ってきていた。
勉強の話ばかりしていた。あんなに飽きずによく話したものだ。
ある夜、珍しく彼女からメールが来た。一緒に帰った月曜日だった。
それは、極めてプライベートな内容だった。
『今度、ピアノの発表会があるんだけど、Mホールだからよかったら来て!5月20日!』
Mホールは、僕の家からも彼女の家からも近いホールで、自転車で行けるところだった。
すぐに予定を確認して返信した。
『え、西村さんピアノなんか弾けるの?面白そうだし、部活休みの日だから行くよ』
翌朝から、彼女はピアノの話をしてくれるようになった。




