表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/31

3月10日

卒業式のあと、僕たちは3月10日に、二人で出かけることにした。

あの頃、西村さんが、某有名テーマパークに行きたいと言って、それはあまりにカップルらしすぎると思って僕が断った。

それであの頃、僕たちは結局二人で美術館に行ったのだった。

今回は、僕がテーマパークに誘った。卒業式の帰りだった。

やっぱり彼女は、目を丸くして驚いた。

「いいの? そんな……ほんとのデートみたいなところ!」

「記念だから。はんと……三年間、西村さんにはなんだかんだ、一番お世話になったから」

「嬉しい! でもわたし、ジェットコースターとか乗れないよ」

「いいよ別に」

「それでも楽しめる?」

「楽しめるよ。僕たちずっと、勉強の話だけで楽しんできたんだから」

「それは確かに」

西村さんの頬が上がっている。ニヤニヤを必死でこらえている様子だった。


3月10日、待ち合わせ10分前。M駅前には多くの人がいた。その中から西村さんを見つけられるだろうか、あるいは、彼女は僕を見つけられるだろうか━━と思ったのもつかの間、僕の目に彼女が飛び込んできた。

彼女はまだ気付いていない。改札を出て、ゆっくりと近付く。

ワインレッドのショートパンツからタイツを履いた脚が伸びて、黒のスニーカー。白のニットを着て、その上にはグレーのコートを羽織っている。両手をコートのポケットに入れて、改札の方を眺めている。

人混みを利用して、後ろから近付く。

「お待たせ」

後ろから肩を叩く。

「うわぁ!」

彼女は驚いて振り向いた。

「びっくりしたあ」

「ごめんね。待った?」

「ううん、全然。行こう」

彼女は上機嫌で歩き始める。僕はそれについていく。

「楽しそうだね」

「楽しみにしてたからね」

入場券を買って並ぶ。

開園と同時に多くの人が走り始めたが、僕たちはゆっくり歩いた。

西村さんは何かを見つけては立ち止まり、よく笑った。

お土産ショップの並んでいるところだけで、45分ほど経った。見兼ねた僕は、

「乗りたいものとか、ないの?」

と聞いてしまった。

「乗りたいものかあ……。前川くんと一緒なら何してても楽しいからなあ。だって勉強の話だけで楽しかったもんね」

と言って彼女が笑う。

「記念になるもの買いたいなって思って、だから、さっきから、いろいろ見ててごめんね?」

僕だってアトラクションを楽しみに来たわけではない。

ただただ、西村さんと、高校生の最後にデートがしたかった。

あの頃彼女が望んだことを叶えてあげたかった。

それだけだったから、彼女がお土産を見るのをずっと眺めていて、それで時々彼女が「これどうかな」というのに答えるのも苦にはならなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ