合格と卒業
「返事遅くなってごめんね!お母さんとホテルなう!頑張ろうね」というメール。
ああ、よかった。
彼女は試験を受けに行っている。
安堵して、僕はよく眠った。
そして翌日、自分でも驚くほどスムーズにテスト問題を解いた。
僕たちの合格発表は、卒業式の日だった。
先生に頼んで、朝からパソコンルームを開けてもらった。
合格発表は9:00からだった。
サイトを開き、自分の番号を探す。━━あった! ああ、戻ってきてよかった。
教室に戻ると、何人かは自分の新しいスマホで合格発表を見ていた。
僕は隣のクラスを覗きに行く。
西村さんを探していると、松本が先に気付いてやって来る。
「よっ! 合格したか」
「ああ、うん」
「それで、西村大先生にご報告か」
「そうそう。来てる?」
「来てるに決まってるだろ。卒業式なんだから。おーい、西村ー!」
松本が教室の中に叫ぶ。
「あ、おい、やめろ」
「なあにー?」
と教室の中から西村さんの声。
「ボーイフレンドが」
「ああ、はいはい」
はにかみながら、彼女が出てきた。
「じゃ、俺はこれで!」
「おい、余計なことしやがって」
ニヤついて松本は教室の中の方に戻っていく。
「どうしたの? もう忘れ物はないでしょう?」
クスクス笑いながら、西村さんが言う。
「合格したから、一番に言おうと思って……。あ、いや、今、先に松本に聞かれたから、正確には二番なんだけど……」
僕の目の前で、西村さんは目を丸くしている。
「え、そんなに驚く?」
「いや、あの……おめでとう!」
「ありがとう。西村さんは?」
「うん! ばっちりよ!」
「よかった。じゃあやっぱり、最後じゃないね。これからも、何度でも会える」
僕がそう言うと、彼女は恥ずかしそうに笑った。
卒業式はまるでおもしろくなかった。
でも、退場のとき、西村さんは泣いていた。あの頃は泣いていなかったはずなのに。




