クリスマス前
二学期の終業式、僕たちはやはり一緒に帰っていた。
記憶が正しければ、あの頃は、ホームで電車を待っているときに、西村さんが僕に「クリスマス、予定、空いてる?」と聞いたのだ。
あの頃、僕はその誘いを断った。
あの頃の僕は、西村さんを拒み続けた。
彼女の隣にいる自分が嫌で。
そのくせ、登下校を共にするのはやめなかった。
卑怯な男だった。
今回は男らしく行こう。
「西村さん、クリスマス、空いてる?」
高校の最寄り駅のホーム、左側に立つ西村さんのほうを見ずに、僕は言う。
「何? デートの誘い?」
冗談っぽく笑って彼女が応じる。
「うん」
僕は真面目に答えた。
「本気で言ってる?」
彼女がこちらを向いたのがわかった。だから僕も、西村さんのほうを向く。
「本気」
「どうしたの? 最近」
「何が?」
「一緒に関西に行こうって、あなたが言った。模試のときも、前川くんからご飯に誘ってくれた。クリスマスも誘ってくれるし……。何かあった?」
「それは━━」
僕は僕の事情を話せずに黙ってしまう。
24歳の僕の事情なんて、18歳の彼女には関係ない。
「……あんまりそういうことすると、わたし、諦めないからね」
彼女はまた、前を向いていた。
そうだ、18歳の僕はすでに、彼女を一回振ったのだ。
「諦めようとしてたの?」
「してたよ。友達に戻ったつもりだったよ。それなのに、思わせぶりな態度を取るから」
西村さんの横顔が、妙に大人びて見えて、僕は目を逸らす。
「ごめん」
「結局謝る?」
彼女は笑っていた。そして、
「クリスマス、空いてるよ」
と言った。
「あ、ほんと」
「うん」
「ご飯行こうか」
「うん、行こう」
電車が来た。
僕たちはそれから、何でもないふうに、それぞれのクラスであったことを話した。




