交替
文化祭は土日だったので、2日間の代休があった。
水曜になって学校に行くと、いつもの電車に西村さんがいない。
朝の図書室にも来なかった。
図書室から教室へ向かうとき、3組を覗く。
松本に見つかる。
「え、何? 西村? 来てないみたいだよ」
「あ、そう」
それだけ言って2組へ行く。
2組に行くと清水さんが話しかけてくる。
「今日、遥ちゃん休みだって」
「そうなんだ」
「熱出して代休も寝てたんだって」
「そっか……」
「心配でしょ?」
「そりゃね、あれだけパワフルな人が熱出すなんてね」
平静に、淡々と、僕は答えているつもりだった。どれくらいできていたかわからないが。
放課後も図書室に行って勉強して、帰りは松本と一緒だった。
「文化祭の準備、西村すごかったんだぜ」
「何が?」
「稽古のとき、熱入りすぎて泣いたの。『絶対に
大賞を取りますからついてきてください!』って」
「へえ」
「あんなふうに熱くなれる奴だって知らなかったから、俺驚いた」
松本はただただ感心している様子だった。そして、
「お前、大変だな」
と言った。
「なんで?」
「ずいぶんな女に惚れられたなと思って」
「そうかな」
「狙った獲物は逃がさないって感じ」
松本は、僕を「いじる」モードに入っていたが、僕は「いじられている」気が全くしなかった。
あの頃、ずいぶん西村さんのことでからかわれたが、今の僕にとって西村さんのことは笑いごとではない。
「次は捕まるかもしれない」
僕は表情一つ変えずに、そう言った。
「いいんじゃない、お前にはあれくらい熱い人があってる気がするよ」
松本も、もう「いじる」モードではなくなっていた。
でも、次は僕が追いかけるほうになるのではないか。
そして、捕まえられずに終わるのではないか。そんな不安がよぎった。




