結果
3組は大賞を取った。
あの頃とは結果が変わった。
結果が発表されたとき、3組の列を見た。
西村さんが、クラスメイトと抱き合っているのが見えた。
クラスの打ち上げはあったけれど、行かないことにしていた。
教室を出ると、西村さんに会った。
「あ、お疲れ様ー!」
出会った頃に比べると、明るすぎる彼女。
「おめでとう、演出家さん」
「ありがと、見に来てくれて嬉しかった」
彼女はそして通り過ぎた。そのあとも3組の面々が続々と教室から出てきて、打ち上げに行くものと見えた。
僕はその後ろ姿を見送ってから、国語科準備室へ向かった。
国語科準備室では、福本先生がコーヒーを飲んでいた。
「先生」
「お、前川か。どうした」
「前の相談、覚えてる?」
「君が24歳って話か。まあ、座りなさい」
幸い、ほかの先生は一人もいなくて、気兼ねなく話すことができた。
「昔と違うんだ、結果が」
「前はどうだった」
「前は、3組は、学年賞だったのに、今回は大賞をとった」
この結果に、僕は違和感を覚えていたのだ。
いや、結果というより、文化祭の準備期間全体に。
「たった一人、別の宇宙の人間が紛れ込んだだけで、こんなに変わるもの?」
「そりゃあ、前川が周りに与える影響が変われば、いろんな結果は変わっていくだろ」
「それだけ? 何か知っていること、ないですか?」
「そうだな、前川が西村のことを気にしていることは気付いたぞ」
先生は笑って言う。
「僕はそのために戻ってきたのに、西村さんが遠くに行ってしまいそうで怖い」
「それは前川、わがままだよ。西村には西村の人生があって。きっかけはわからんが、未来から来た君の言葉一つで、勉強より文化祭を頑張ろうって思ったのかもしれない。その結果、彼女がもっと別の未来を選ぼうと、君にはそれを止める権利はないよ」
「……そう。わかってる、それは」
でも、僕が戻ってきた意味が失われるのは、怖い。
「一つだけ、言えることはな――」
「はい?」
「どんな人生にも、意味はある。前川が戻ってきた目的とずれたとしてもだ」
心を見透かしたように先生が言う。
「前川、打ち上げには行かないのか。清水が迎えに来ているようだぞ」
少しだけ開いた扉の隙間から、清水さんが覗いていた。
「先生、よくわたしだってわかったね!……前川くん、行かない?」
扉を開け、彼女が半分だけ入室する。
「……行かないって、言わなかったっけ」
「でもさ、行かないの前川くんだけなんだよね、なんか寂しいなって」
あの頃も、欠席したのは僕だけだと聞いている。だが、当時はこうして誘いに来てくれる人なんていなかった。
「いろいろ、意味はあるんじゃない?」
先生がそう言って、僕は立ち上がった。
「先生、ありがとうございました。行くことにする」
清水さんは笑って、
「みんなもう行ったから急ごう」
と言った。
清水さんに3組の舞台の感想を話しながら、会場に急いだ。




