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夢
最後に西村さんに会ったのは、大学4年生の夏だった。
たまたま帰省のタイミングが合って、F駅でご飯を食べた。二人ともお金がないからファミレスだった。
「来年の居所決まったの?」
彼女が言う。
「決まったよ、東京で銀行員」
「あー、ぽいわ。じゃあ来年には奢ってもらおう」
「え、西村さんは?」
パスタを食べる手を止める。頬張っていた一口を飲み込むと、西村さんは答えた。
「内定、ないねん」
4年弱関西にいる西村さんは、時々関西弁のようなものを話す。
「あー、そうなんだ」
僕はかける言葉もなくて、それだけ言った。
悩んでいたり、苦しんでいたりするものだと思ったけれど、次の瞬間には彼女は笑顔だった。
「でもね、一つうまくいってるところがあるんよ」
聞けば、ある劇場の企画スタッフの選考の最終まで行ったという。
「舞台が好きだからさ、舞台の近くにいたいんだよね」
「へえ、それはすごい」
「あ、でも、初任給めっちゃ安いの。だから来年奢ってもらうのは確定ね」
このとき、彼女ならうまくいくと思っていた僕がいた。
一ヶ月後、一言だけ連絡が来て、その翌月には、京都で働くと連絡があった。
翌年に僕が食事を奢ることは、なかった。




