終業式
楽しんでいるうちに一学期の終業式の日が来た。
いつも通りに完全下校の時刻まで図書室で過ごし、帰りは西村さんと一緒だった。
松本もほぼ同じ時間に図書室を出たが、学校を出たところで声もかけずに僕たちを抜かしていった。
完全下校とはいえ、夏の夕方は明るかった。
「通知表どんな感じ?」
歩きながら彼女が聞いた。
「普通。クラスで5位。西村さんはどうせ1位だろう」
僕が言うと、彼女は得意そうに笑った。
「評定平均4.5だから!やっぱり推薦取ろうかなあ」
記憶にない会話だった。
彼女は夏の間、ずっとO大学を目指して勉強していたはずなのに。なぜ今更W大学の話をするのだろうか。
「O大学頑張るって言ってたじゃん」
「そうだけど、もったいなくない?この無駄に良い成績」
僕は、それは確かにと思いながら、今度はK大学に受かろうとしている自分のためにも、西村さんにはO大学に向けて頑張ってもらわないといけないと思っていた。
わがままなのはわかっていたけれど。
駅前の信号待ちで、
「一緒に行こうよ、関西」
と僕が言った。
あのとき、彼女が言った台詞だった。
西村さんは驚いて、右側にいる僕を見上げた。
「どうしたの?」
「いや、西村さんがいれば、僕も頑張れると思って……」
「でもさ、ここから見ればO大学とK大学って近く見えるけど、行ったらそうでもないよ?一緒に関西行くったって、受かってもめったに会えないよ」
「毎週でも会いに行くよ。だから、一緒に頑張ろうよ」
これじゃ告白みたいじゃないかと思いながら言ったとき、信号が変わった。
「……行く」
前を向きながら、西村さんが答えた。
「前川くん、今日、どうかしてるわ」
スタスタと歩いて、僕を置いていこうとした。
「待ってよ」
「早く来なさいよ」
その日、僕が電車を降りるまで、西村さんは照れ隠しのために怒っていた。




