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4日目の午後
F駅の前にある百貨店で、彼女はネクタイを1本買った。
2本を手に取り、迷っていた。
「どっちがいいと思う?」
僕にそう聞いた。
1本はストライプ、もう1本は花柄だった。
「こっちかな」
僕はストライプのほうを指した。花柄も捨てがたかったけれど、お父さんの年齢を考えると選べなかった。
「よし、じゃあこれにしよう」
「いいの、本当に。僕の意見で決めちゃって」
「いいんだよ、そのために来てもらったんだし」
西村さんはそう言って、レジに向かった。
支払いが終わって、プレゼント用に包んでもらうと、嬉しそうに僕のところへ戻ってきた。そして、
「よかった、買えた。何か奢るよ」
と言った。それで僕たちは百貨店の2階にあるドーナツ屋に入った。
西村さんはテストの話をしてくれた。おそらくこの分だと僕の負けだと思った。
「国語で負けたら、坊主にする」
と西村さんが言うので、
「もっと早く言ってくれたら、もう少し頑張ったのに」
と返した。
他愛もない、高校生の日常。僕は自分が24歳であることも忘れて、西村さんとの会話を楽しんでいた。




