1日目
久々に実家で目を覚ます。朝7時。
――え、なんで実家?
慌ててリビングに下りていくと、母親が朝食の支度をしていた。
「あら、おはよう」
「ああ、おはよう……」
事態が飲み込めないまま食卓につくと、数分後に弟も起きてきた。
「あれ、お兄ちゃん、今日はゆっくりだね?」
弟の声がおかしい。声変わり前の弟だ。
「ほんと、いつもならもう出る時間なのに」
母親も弟に賛同する。
「具合でも悪いの?」
「いや、そんなことないんだけど……」
ふと、弟の後ろの壁のカレンダーに目をやると、2011年7月だった。
「母さん、今日って何日?」
「え? 8日だけど。あんた、テストだよね」
「ああ、うん。そうそう」
窓の外に目をやると、吐き気がするほど晴れていて、目の前にはどうやら中学に入ったばかりの弟。2011年7月のカレンダー。
とりあえず、僕は高校に行かねばならないらしい。朝食を終えると、バタバタと身支度をして、出かけた。
僕の家から高校までは、徒歩と電車でおよそ一時間。いつもなら7時前には家を出ていたのだ。
吐き気がするほど晴れている高校の最寄り駅で、バスケ部の仲間を見つけた。
「健介、おはよ」
声をかけると、原田健介は驚いて僕を見る。
「うっわ、お前、めずらしく遅いじゃん。いつもの彼女と一緒じゃねえの?」
「夜勉強してたら寝坊したんだよ。別にあの子と待ち合わせしてるんでもねえし」
適当に話を合わせて、高校までの8分ほどを健介と歩く。
歩きながら、僕は思い出していた。昨日の僕が何をしていたのか。社会人二年目、2017年7月7日の僕が。




