第一話 変わらぬ日 ⑴
朝、目が覚めた。
意識が定かではない状態の中で、今日は、高校の入学式だったという事を思い出す。
だが、入学式は午後からの為、別に特別早く起きることのない事に気がつき、再び眠ろうと思った、、、が
腹部に重みを感じた、それは、自分が知っている重みだった。
俺はその重みの正体を知っているので恐る恐るではななく、いつも通り目を開けた。
すると、オレンジ色の髪をした、サイドテールの少女が俺にまたがっていた。
その状況は、思春期の男子から言わせてみれば、男が一度は憧れるギャルゲーのようなシーンだろう。
だが、興奮しない。
当たり前といえば当たり前だ、俺はまず妹に興奮するような変態ではないし、そんな奴だったら毎日興奮している事になる。
これは結構あるあるなのだが、「妹をもっている奴は、妹萌えしない」という特性があるらしい、これは恐らく慣れや現実を見てしまうからだろう。嘘だと思うなら妹がいる奴に聞いてみるといい、大抵の奴は、「妹萌え何それ美味しの?」状態だと思う。
さて、そろそろこの状況がキツくなってきたので取り敢えずどいて貰おう、、、
「なあ、コヨミそろそろベットから降りてくれないか?」
「あ、お兄ちゃんやっと起きた!」
昨日は入学式の為に早く寝たので長時間の間、夢の中だった。その為、意識はもうろうとしているはずだ、だが、コヨミが、俺の話をシカトされたのを認識するのに1秒といらなかった。
意識がもうろうとしているはずなのに、、、
「というか。そもそも俺の部屋に入って来るなよ。」
「良いじゃん別に〜お兄ちゃんだって嬉しいでしょ!」
「嬉しくないし、早くどいてほしい。」
「もお、お兄ちゃんは、ツンデレなんだから〜www」
ツンデレと言われたことか、俺の話をシカトし続けることか、どちらに、イラついたか分からないが、、、
いや、両方か、、、、、、あ、両方だ、、、、、、なら別にいいか、、、、、、
というわけで、近くにあったエアコンのリモコンを、アホみたいに笑っているコヨミにフルスイングで投げた。
いつもなら、高確率で避けられるのだが、あそこまで笑っていて、この距離だ、当てられる自信があった。
そうすると、リモコンは、吸い寄せられるようにコヨミのデコに当たった。
普通の人なら、気絶レベルなのだがコヨミは、普通の人と体のつくりや運動神経が違いすぎるので、ちょっ
とやそっとの攻撃では、かすり傷もつかない。
といっても、俺もコヨミには及ばないが運動神経は良い方だし、僅か1mの距離でフルスイングで投げたのだ、痛いに決まっている。
「ぐはっっ」
コヨミのデコに当たると同時に、ダメージへの手応えを感じさせる声が上がり、それと共にコヨミが文句を
言ってきた。
「お兄ちゃん!物理はダメだって物理は!」
俺は、渾身の一撃を喰らっても直ぐに体勢を立て直し、文句を言えるコヨミに驚いたが、
確かに感情任せにリモコンを投げてしまったので、リモコンをもう一度買わなければいけないし、リモコ
ンを作っている人に悪いことをしてしまった。
もうやってしまった後なので、結局リモコンを買わなければいけないが、次、判断を間違えないようにする為の意味も込めて、言おう、、、
「ウザいし、気持ち悪いし、もう話しかけないでくれ。」
俺は「言ってやった!」感に溢れた。
「お兄ちゃん!今言ったら、ただの追い打ちだから!自重して!」
なんか、文句を言ってきた。どうやら(物理攻撃+精神攻撃)というのに文句があるらしい。
じゃあ、答えは簡単だ、、、
「あ、じゃあ最初からやり直して、、ウザいし気持ち悪いs」
「悪かった!私が悪かったからこれ以上やめて!」
コヨミが珍しく頭を下げた、、、というか土下座をしてくるので、許すことにした。
「と、とにかく私は毎日起こしにくるから!」
どうやら、拗ねているようだ、、、まあ、俺も少し遊びすぎたのかもしれないがコヨミの自業自得だと思うのが普通だと思ったので、気にしないことにした。
うるさい奴がやっと消え、ようやく再度眠りつこうと、掛け布団をかけようとした時、
再び拗ねた顔のコヨミが、俺の部屋の前に現れた。
何か仕返しをしに来たのかも知れない。
もし、そうならば俺の反射神経では、絶対に防ぎきれないであろう。
そして、コヨミが口を開けたことを理解すると同時に、自分の体を掛け布団で覆った。
「お兄ちゃん、ミウがご飯だって。」
コヨミは、相変わらず拗ねた感じだったが、それを伝えると直様俺の部屋の前から立ち去り、階段を降りて行った。コヨミに攻撃されると思っていたが、それはただの思い過ごしだったみたいだ。
「取り敢えず着替えるか。」