雨上がりに君と
今日は2人で放課後デートをしようと約束していた。
君はとても嬉しそうにしていた。
雲行きが怪しくなってきたのは午後のことだった。
授業もつまらなくて、まどろむ僕の耳に雨が地面を穿つ音が届く。
ハッとして顔を上げると窓の外は土砂降りだ。
窓際の席の君は睨むように外を見ていた。
帰り道、急遽遠出は止めにして2人でDVDを見ることにした。
レンタルビデオショップを出てからも君はとぼとぼと歩いている。
拗ねたように傘をさす後ろ姿がなんだか愛しくて、僕は笑みを浮かべた。
「なぁ、これおもしろいと思う?」
そんな風に意味もなく会話を持ちかける。
君はそれでも返事はしてくれるから、余計僕は君が可愛くって仕方ない。
「あ。」
唐突に彼女は空を見上げた。
「ねぇ見て!晴れたね」
彼女は透けるようなビニール傘を投げ出して笑った。
僕はのんびりと彼女へと歩み寄る。
「そうだな。」
彼女は曇りのないまっさらな顔をして笑う。
「雨の日は手を繋げないから好きじゃないんだ。」
君があまりにも晴れ晴れしている。
不意を突かれて僕は真っ赤になってしまった。
「ほらいくぞ。」
なんだか、雨上がりの君が綺麗に見えたなんて言わない。
顔の赤は夕暮れのせいにして。
君と手を繋いで帰ろう。