お前は勘違いをしていると断言する(2)
俺は楽をしたい。
つまり、面倒事を引き受けるわけでもなく、重い相談を受けるわけでもなく、誰かにたよられるわけでもなく……唯唯、楽をしたいのである。
楽しく楽を出来たら尚良しだ。
『楽有れば苦有り』とは言うが、それは真っ赤な嘘である。
そう、嘘。
この世には楽しかしていない人間が存在していることを忘れてはいけない。
そして苦しみしか知らない人間がいることを忘れてはいけない。
そして俺は出来るだけ楽が出来る人生を送りたい。
それには苦というものを回避する必要がある。
そして、思いのままにする必要がある。
俺は偉大な人になるくらいなら、最低な人間になる方がましだ。
だって、その方が楽だから───
***
窓の外には二羽の雀が木にとまってこちらの様子を窺っていた。
見ていると、随分人間馴れをしているように見える。この学校の生徒が、パンなどを与えているからだろう。
つまりは、この雀は楽をする術を得たのだ。
「おい、そこ代われよ……」
寄り添いあう雀に向かって、俺は無気力に呟いた。
「あら、鳥に話しかけるなんて、本格的に頭がいっちゃっているのかしら。気持ち悪い」
自分しかいないと思っていた教室に、他者の声が響く。
というか気持ち悪いだけはやめてくれ。嫌いとかウザいとかならまだましだが、気持ち悪いとかキモイとか精神的に来るから……
彼女は紅山ナノハ。
リア充の最たる人物の一人でありながら、特定のグループには居続けないというイレギュラーの存在。
数日前から俺に協力を求めにくるようになった。
「数日前もですけど、気配を消して俺に近付かないでくれないでしょうか?」
「あら、とうとう仮想の人物にまで話しかけるなんて……一度病院で見てもらった方がいいのではないかしら?」
ふざ・けん・な!
何を言ってやがるコイツは。
お前が見てもらった方がいいんじゃないか?
とは言えず。
せめてもの反抗に、「じゃあ、俺帰るわ」と言って席を立つ。
まあ、もとよりそのつもりだったのだが。
「ちょっと!待ちなさいよ。あなたは悩めるか弱い女の子にを見捨てて帰ってしまうというの?失望したわ」
何を言っているんだコイツは……
どこにか弱い女の子がいるんだ。この世の女の八割以上は強くて怖いと断言できるぞ。
それに勝手に期待して失望するな。
というか、失望はもうしてるだろうが。
「おいおい、大体にしてそれが人に物を頼む態度なのかよ?」
俺は教室の出入り口前で足を止め、振り返らずに言ってやった。
「あら、心外ね。こういった調子の方が、あなたは話しやすいんじゃないかと思ったのだけど。」
確かにそれは事実だ。
幼少期を考えなければ、過去今までこれほどに女子と話したことは無い。
紅山ナノハはどこのグループにも属さない。故に、どんな環境でも順応できるのだろう。
「お前は勘違いをしているようだが、どちらにせよ俺はお前を助る気も無ければ、力を貸す気もない。俺は面倒事は嫌いなんだ。」
「じゃあ、せめて助言だけでもしてくれないかしら?」
どうやら彼女も相当必死なのだろう。
女子の中でも、嫌われている人ベスト3には挙げられるような俺に話しかける時点で、相当な覚悟だ。
だから俺はその覚悟に応えて、ベストな助言をしてやることにした。
「 五十鈴ヶ丘春を更生することは難しい。悪いことは 言わない諦めろ」
と………
***
それは私がまだこの学校に入学したばかりのことである。
私は世間一般で言うと可愛いと言われる方で、友達もいっぱいいる。イケメンの彼氏もいる。
いわゆるリア充だと自負していた。
でも、私は目立ちすぎた。
目立った私を先輩達はよく思わなく、いわゆるイジメを受け始めたのだった。
来る日も来る日も先輩達にイジメられたけど、私はいつも通りで有り続けようとした。
でも、友達は日に日に離れていった。あんなに愛し合っていた彼氏とも別れた。
日に日にイジメはエスカレートしていき、私の笑顔も日に日になくなっていく。
ある日、そんな私に転機が訪れた。
唯一そばに居続けてくれていた親友を虐めることに参加すれば、私をもういじめないというのだ。
私は迷わなかった。
そのイジメに参加したのである。
快感だった。
私がイジメられていないという安心感。そしてイジメているという優越感。
笑みを隠せないほどに最高だった。
やがて最上級生だった先輩達は卒業したが、私はイジメを止めなかった。
かつて親友だったクソ女は不登校になったので、今は他の奴を虐めている。
私、五十鈴ヶ丘春は今『現実』が『充実』している。
リア充だと自負している。
そして明日もあいてに汚水をかけるのだ。
ちょとはやめに投稿しときました。
善は急げと言いますし、遅れるよりはいいかと思いました。
せいては事を仕損じるともいいますが、私は気にしないことにします。
未だに感想もレビューもないので、独り言のようなもので、自己満足のようなものなのでしょうが、もし読まれている方がいらっしゃられるなら万々歳でございます。
さてここから先、物語がどういう方向へ進展するかは、私全然考えておりません。
読者さんがどういうお話しを望んでいるかわからないので模索中でございます。
この文章をよんでいるということは本編も読んでくださっているということなのでしょうから、あなたには感謝感激雨霰でございます。
これからもどうぞよろしくお願いします。