お前は勘違いをしていると断言する(1)
すみません遅くなりました
と言っても読んでもらっているかわからないですがw
今後は出来るだけ週1で更新しようと思いますのでよろしくお願いします
友達
それはリア充の象徴の一つで、金を貸したり借りたり、物を借りたりパクったりできる便利な人として有名だ。
それも個体差はあるが、もれなくオプションで群れたり、暇つぶしの相手をしてくれたりできるらしい。
しかし奴らは人を選ぶ。
まあ、それも当然なのだろう。
どうせならハイスペックで、面倒のかからない、むしろ頼れそうな人と友達になりたいと、誰もが思っているはずだ。
しかし、俺に友達が出来ないのはそれ以前の問題があるからだ。
まず第一にどこからが友達かと言うことだ。
俺は今まで友達だと思って人と接してきたことはなかった。
同級生とかには、素っ気ない会話しかしていない。
つまりは、一定の距離間隔はずっと保っていた訳だ。
歴代の同級生全員に聞いても俺が友達だったなんて答える人は絶対にいないと断言してもいい。
俺も友達だと思ったことは無かったから別にいいんだが……
だから俺は、誰々君は友達だ。とか誰々ちゃんはマブダチだ。とか言う奴の気が知れない。
なぜ友達だと言い切れるのか意味が分からない。理解不能だ。
友達契約でもしているのだろうか?友達料金でも払っているのだろうか?基本料金はどれくらいなのだろうか?
それに友達友達がいると良いことが起きる……とは限らないのだ。
俺にとっては友達とはUMAに等しい存在なのだ。
***
紅山ナノハはいわゆる美少女と呼ばれる部類の人間だ。
通常美人類は凡人類と違って、ほとんどがリア充の頂点あたりに君臨している。そしてそのグループの中心人物になっているものだ。
しかし彼女は異例で、一匹狼とまではいかないが、どんな人とも会話はするし、どんな人とも行動はする。
ただ、特定の人物と一緒にいるとかは無かった。
理由は彼女の口の悪さがほとんどだろう。
なんと言っても彼女、紅山ナノハの口の悪さは間違いなくこの学校ではダントツで一番だろう。
だから彼女にも、友達という友達はいなかった。
その点では親近感がわいてくる。
そしてそんな彼女は、そんな彼女だからツンデレラとか呼ばれることがある。
まあ、もっとも誰もデレているところを見たことは無いのだが。
***
彼女の頼みと称した命令の内容はこうだった。
「“五十鈴ヶ丘春”を止めてくれ」
俺はその名前を聞いて顔をしかめる。
五十鈴ヶ丘春
随分な名前である。
そして俺はその人物についてよく知っている。
いや、もちろんこの学校の生徒については知り尽くしているのだが、彼女については知りたくなくても知っているのだ。
彼女はこの学校ではそこそこ有名人。つまりはリア充のエリートなのである。
彼女については良い話も聞くが、悪い話もよく耳にする。
だから紅山ナノハが言った“止めてくれ”と言ったのはそう言った悪い話についてなのだろう。
しかし
「何故俺なんだ?」
そう、紅山ナノハという美少女様が何故ぼっちの俺なんかに頼むのだろうか。
「この私がさっきの出来事に気づいていなかったとでも思っているのかしら。随分と最低なことをやっているようね。」
しくじった!
誰も見ていないことを十分に確認したはずなのに、どうやら紅山が見ていることには気づくことが出来なかったみたいだ。
なんたる不覚……
「バレたのは仕方がないが、俺があんたのお願いとやらを聞く理由は無い。」
確かに美少女からのお願いというのはすごく美味しい展開だ。
だが断る(キリッ
俺はこんなことには期待などしないし、なんと言っても俺が相手されるはずがない。
それに美味しい話には必ず裏があるものだ。
まあ、リア充と関わりたくないだけだけど。
「は?言うことを聞かないと皆に言いふらしたっていいのよ?」
紅山は強気で鋭くにらみつけてくる。
やれやれ、これじゃあお願いから命令を通り越して脅迫ではないか。
「どうやらお前は根本的に勘違いをしているようだな。」
紅山は首を傾げる
「?」
「そう、根本的に間違っている。今この場で優位に立っているのはお前じゃない。俺だ。」
俺は自信満々にそう言った。
そう言い切った。
「何を言っているの?どう考えてもあなたが不利な状況でしょう。追い詰められて焼きが回ってきたのかしら?」
紅山の自信は揺るぐことはなく、余裕の表情を浮かべている。
俺はこの学校の生徒の情報ならだいたいは知っているつもりだ。
自分なりに、あの手この手でかき集めている情報はちゃんとこのスマートフォンのメモアプリにまとめられている。
それはたとえリア充の情報だろうと保存済みだ。
俺は紅山ナノハの耳元で、小さな声で周りに聞こえないように考慮して囁いた。
みるみる紅山の表情に余裕はなくなっていく。
「なっ、なんでそれを?!」
紅山は動揺を隠せず頭を抱え込んでいる。
当然だろう。
一番知られたくないことを、関わりが無かった一生徒が知っていたのだから。
つくづく俺は最低なのだと実感する。
しかし、これでもう関わることは無いだろう。
「待ちなさい!あなたはか弱い女の子の悩み事にさえ協力しない底辺の人間なのかしら?」
その手には乗らない。
「ああ、そうだ。」
紅山は悔しそうにこっちを見ている。
止めてくれ、コミュ障には視線はレーザービームのごとく痛いんだ。
俺は後ろを振り返らずにその場を離れる。
***
それから数日後のことだった………