4話 猪なんて豚と一緒
誤字脱字ありましたろお知らせください。
今日、2回目の更新です。感想等ありましたらお願いします。
お風呂から上がったソラは、気を利かせケンが置いて行った服に手を伸ばした。
ケンとおじいさんの格好を見てわかるが、街で見た服装と少々違う。大通りにいた人たちは、それなりに質のいいものを着ていたが、私たちを追っていた赤髪の人達はとても生活に満足しているような服装ではなかった。ここも貧富の差が激しいのかもしれない。
ケンが女性物の下着を持っていたのについては深く追求するのはやめよう。清潔な下着と服があるだけで感謝だ。パンツは同じ形をしていてこの世界でもレースが付いてるのは女性に人気なんだろうか?こういういかにもレース付きの女性用パンツは履いたことない・・・。ブラジャーは胸部コルセットで一周して前の方で縦に並んで開けられた穴に螺旋状に紐を通して引き締めるようだ。
「こういうの見ると世界違うなーって実感だな」
つぶやくソラだが、汗に濡れた下着をもう一度着るのは嫌なのでありがたく着ることにした。
綿で作った寝間着だろうか。人の生活様式からみてまだ化学繊維の服は出回ってないだろうし、あるとしたら、植物から取れる綿で主に服を作るだろうと考えた。丈の長い寝間を上から被る。
寝て起きたら、お腹のあたりまで裾が上がっていそうだ。空は普段ジャージで寝るのでこういうスカートタイプの寝間着は生まれて初めてだ。
脱衣所を出れば、ご飯を食べ終わったケンがくつろいでいた。
「お風呂ありがとう」
ソラがそういうと椅子に寄りかかっていた体制のまま頭を後ろに下げた。ケンはさかさまの空を見て満足そうにしている。
「目が厭らしい」
「お前なんかに欲情しねえよ。それより飯食うか?」
「ううん。大丈夫」
大きなソファーに座ると眠気が襲ってきた。このソファー、あいつが寝転んでも余裕で余りそうだ…。疲れたな。今日は色んなことあったな。明日起きたら家だったりして、それもそれで少し寂しい。あいつにお礼言えばよかったかも・・・。
横になったソラはいつの間にか眠りについたのだった。
どこかから、朝を知らせる鳥の声が聞こえた。窓ガラスから差す光は眩しい。
薄目を開けていると人が立っているようだった。太陽の光でよく見えない。シルエットで体の大きな人だと回らない頭で考えた。
あいつかな。
目がしっかりしてくると立っている人物が分かった。
「おじいさん!?」
「ほぉっほぉっほぉっ。朝じゃぞお嬢ちゃん」
がばっと起きておじいさんにおはようございますと挨拶をした。
すると、毛布がかかっているのが分かった。
「おじいさんが掛けてくださったんですか?」
「いいや~わしじゃないぞ~」
「そうですか」
あいつだ。また、気を利かせてしまったのが悔しい。恩ばかり増えていくのが悔しい。返せる物なんてないのに。目が覚めたら全て夢だと思えたら良かったのに。
顏洗ってきますと一言言って、脱衣所に向かった。
顏を洗って、手櫛で背中まである黒髪を整え昨日渡された服を着る。清潔な白いシャツにケンのズボンだろうか、大きなズボンをはいてベルトで腰を締める。ズボンを織り込んで長さを調節したらこの世界に馴染んで行くのを感じた。
脱衣所を出るとケンが玄関のドアを開けて家に入ってきた。
「おはよう」
「寝すぎなんだよお前」
「今、日登ったばっかでしょ」
「ふつうは日の出と一緒に起きるんだよ。ば~か」
「ばかって何!?バカって言った方がばかだし!!どこの時代よ!日の入りで寝て日の出で起きるなんて江戸時代の人間かお前は!」
ソラが顏を怒りで真っ赤にして言い返すと、右手でソラの頭を鷲掴みにして下にぐいぐい押してきた。
「ちょっと、痛い!やめろ!熊!バカ!阿呆!巨木!」
「ほれほれ、手、どけてみろよ」
煽ってきたケンに腹が立って右腕を掴んで頭から離そうとするがビクともしない。
「もう!馬鹿力!痛いってば!」
何とかしようとするがビクともしない腕を諦め、脇腹を手刀でブスッと刺した。すると、びくっと体がはねてソラの頭から手が離れた。
「乙女に手をあげるなんて最低!」
「お前が乙女?そんなでかい乙女ここらじゃみねーな」
ぷぷぷと笑ったケンにもう一度脇腹チョップを食らわした。この国の女性はそこまで身長が高くないんだそうだ。
「食べた物身長に行っちゃったんだからしょうがないでしょ!巨木にいわれたくない」
ソラの家族は皆身長が高かった。母の話によると祖父もとても身長が高く祖母も母より高かった。そんな高身長家族のDNAをソラは受け継いだ。172センチもする身長は高校3年生まで伸びて、食べたものは身長に全部持って行かれた。
そんなソラの顔1つ分上にケンの顔はある。
朝から元気じゃとおじいさんからの仲裁が入り、この話は終わった。
朝ごはんはケンが狩ってきたイノシシだ。前日に仕掛けた罠を朝確認したらかかっていたという。猪の肉なんて食べたことがない。缶詰で売っているのを面白半分で買って食べていた男子はいたけど。
「猪なんてはじめて」
「旨いぞ。豚より少し獣臭いが、獲りたてはそうでもない。」
「そうだよね。猪って豚と一緒だもんね」
そのイノシシを家の中庭で処理する。おじいさんが昨日言っていた「たいへんだろうけど」の意味が分かった。