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3話 お風呂は万国共通で気持ちい

12時に更新していこうと思います。

「ね~。ね~ってば!足疲れた!もう少しゆっくり歩いてよ」


森を歩いて何分経つか分からないが、平坦な道ではなく岩や段差、木の根っこを登りながら進むのは体力を使う。現代社会で生きる物には自然は安らぎでもあるが、登山となると話は別だ。小猿だった頃はこんな山木と木を飛び越えて遊んでいたものだが・・・。


「お前本当体力ないのな」

立ち止まって後ろの方で座り込んでいるソラに言った。


「だって、普段バイトと大学以外、外あんまり出ないし…。ていうか、いつまで歩くの?」

「ばいと?だいがく?なんだそれ。まぁ~いいわ。あと少しだ。この道まっすぐ行くとある」

「それ、さっきも聞いた」


実を言うと、空の足は靴擦れして、足裏と足先がじんじん痛い。そんな事をこの男に言ってもまた嫌味を言われるに違いないと黙っているが凄く痛い。山登りはスニーカーでするものじゃないと思う。


この男に支えられるのは女としてのプライドが許さない。女性社会進出万歳を推進する。疲れた体に鞭を打ってケンについて行く。

森を入って最初の時は割と平坦な道が続いていたが途中、上りが増えてきた。ケンの言った通り暫くこの道をまっすぐ行くと、開けた野原が見えた。


「あ~疲れた…」と息を吐いて空は、その野原をぐるっと一通り見渡す。


「山の山頂に平野があるなんて不自然だね。ここ人が近寄ってこないんでしょ?」

「俺が生まれる前に新しい街建設計画があったらしいんだが、人がこの山に入り込むと事故が多発してここは呪われてるって噂が広まったんだよ。誰かのせいでな」

「誰か?」


それ以上ケンは話さなかった。

野原の途中から石畳が敷かれていて、その向こうに建物が一軒あった。


「これあんたの家?大きいね。もしかして金持ち?」

「んなわけねーだろ。これは、建設の労働者宿舎だったんだよ。誰もいねーし使ってるだけだ」


街建設は視察団の宿舎を一軒建てる事から始まった。計画は、ケンの「誰か」という人のせいで計画自体がなくなり、宿舎だけがポツンとこの野原に残っている。山の山頂部分付近を切り取り平地を作って宿舎を建設したのは、ここを中心とし下に街を建設しようとしていたようだった。


「帰ったぞ~じじぃ」

何の迷いもなくケンは建物のドアを開けた。すると、中から酒瓶が飛んできた。


「じじぃとはなんじゃ!!師匠と呼べと言っておろうが!!!!」

「あぶねーよ!毎回酒瓶投げてくんのやめろ!」


ケンは酒瓶を難なく右手でキャッチした。


「うん?なんじゃ?お主の後ろに隠れてるのは誰じゃ?」

「あっ…えっと。こんばんは」


ケンの後ろに隠れていたソラは自分の事を聞かれてたのでケンに続いて家に入って挨拶した。


「ほ~若い娘さんじゃないか。かわいいの~」

「えっと…ははは。ありがとうございます。」


白髪のおじいさんは長い髪を後ろで縛っている。ソラを見ながら目を細めて言ったので反応に困ったソラは苦笑いが漏れた。


「ケンのこれか?えぇ?」

小指を出して、ケンの顏を見ながらにやにやするおじいさん。


「は?勘弁してくれ、こんな奴が恋人とかありえねー」

「なっ。こ、こっちこそ願い下げ!」


「ほっほっほっ。それで、娘さんとはどこで?」おじいさんがケンとソラのやり取りをみて笑った後、ソラの事を聞いてきた。


「街だよ。この髪で分かるだろ。そういうこった」

「なるほどの~」


ケンの内容の薄い言葉でおじいさんは全て理解したようで、注いであったお酒をクイッと飲み干した。


「あの。おじいさん。私しばらくここに置いてもらえないでしょうか。行く場所がないんです」


ソラはおじいさんの向かいに立って、頭を下げた。しばらく、無言が続くとおじいさんはこう言った。


「ここで暮らすのは大変だろうさ。頑張って覚えるといい。ケン後は頼んだぞ~わしは寝る!」


うひょひょひょと笑いながらほろ酔いのおじいさんは左のドアを開け廊下の向こうの自分の部屋に入って行った。


「あ~腹減った。お前もなんか食うか?」

そう言って、ケンは台所に立つ。


「平気。それよりお風呂に入りたい」

「お前結構遠慮ねーな」

「あんたに今更遠慮とかいらないでしょ。散々人に言ってきたくせに」


「むかつく女」

ケンはソラに近づいて両側の頬をひぱった。

するとソラも背の高いケンの両頬に手を伸ばしてこう言った。


「むかつく男」



ケンについて行くと木でできたお風呂があった。


「結構ちゃんとしてるお風呂だね」

「まぁーな。裏の雨水の貯水池からろ過させて引いてる水だからな。この、蛇口ひねれば水が出る」


一応水道はるみたいね。蛇口もあるし…。どこまで科学が進歩しているのか分からない世界だ。


「俺は、火くべてくるから湯船に水溜めとけ」

「なんで火?もしかして、火くべないとお湯にならないの?」

「当たり前だろ!お湯は街に住んでないと出ねーよ。田舎者」


あんたの方が田舎でしょうがと言いたいが現代の科学技術と比べるべきではないので黙っていることにした。


ケンが出て行ったのを見計らい、蛇口を捻りお風呂に水を溜めていく。溜めている間、色々物色する。ガラス窓から覗かれないか少し心配だけど流石にそこまで常識外れな奴とは思えない。窓を開けてみると、森の暗さが広がってほとんど何も見えない。見えるのは、星空と近くにある木々の輪郭くらいだ。


「あ」

「間抜け面だなお前」

下を向くと薪を火にくべ始めているケンがいた。


「こうやって沸かすんだね。なんか新鮮」

「お前が住んでたところは違ったのかよ」

「ボタン押せば好きなお湯加減にしてくれてたし」

「便利だな」

「そうだね~便利なとことだよ。でも、寂しいって思う事も多いな」


「そろそろ、水温まっただろ」


ぽつぽつと会話をしていたらお風呂の水から湯気が上がっていた。


「覗いたりしないでよね!」

「は?誰がお前みたいな貧相な体覗くかよ!!」

「貧相って何!?私だって脱げば大き――――」

「アァーーーはいはい。黙って風呂に入れ」


脱衣所で服を脱いで、畳んで籠に入れようとすると新しい服が入っていた。意外と気が利くじゃんあいつ。


温まったお風呂の水を汲んで体にかけるお風呂場にあった石鹸を泡立てて体に塗るとヨモギの香りがした。

全身この石鹸で洗うのだそうだ。掛けてある布で体を擦り、また水をかけて洗い流した。


石鹸のヨモギの匂いでリラックス効果が上がった気がする。


「お風呂最高」

包んでくれる暖かいお風呂にソラは疲れをいやした。そいて、思考は現実に戻ってくる。お酒の酔いも完全に抜けているし、そろそろ自分はどうするべきか考えなければならない。物語の世界じゃない、転べば痛いしたくさん歩けば靴ズレもする。きっとあいつも悪いようにはしないだろう。





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